カスタマージャーニーマップとは?目的や作り方、作成例を詳しく解説

本記事は、2022年3月25日に公開された記事を再編集し、2025年10月26日にin-Pocket編集部により情報を追記しております。

カスタマージャーニーマップは、顧客がサービスや商品と出会い、購入・利用するまでの一連の体験を時系列で見える化するフレームワークです。

ただ顧客の行動を追うだけでなく、各段階での思考や感情の変化まで明らかにすることで、顧客視点でのサービス改善点を発見できるツールとして、多くの企業で活用されています。

ですが実際に作成しようとすると、「どこから手をつければいいか分からない」「ペルソナ設定との違いが曖昧」「作っても活用方法が見えない…」といった課題に直面することも少なくありません。

特に初めて作成する場合は、適切なフォーマットや記載すべき要素が分からず、結果的に表面的な分析に留まってしまうこともあるでしょう。

そこで本記事では、カスタマージャーニーマップの基本概念から具体的な作成手順、効果的な活用方法まで、実例を交えながら詳しく解説します。

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カスタマージャーニーマップとは?活用すべき理由とメリット

顧客の行動や感情を時系列で可視化するカスタマージャーニーマップは、現代のマーケティングに欠かせないツールです。単なる分析手法を超えて、組織全体で顧客理解を深める強力な武器となります。

ここでは、カスタマージャーニーマップの基本概念から活用する目的、得られるメリットまで詳しく解説します。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、カスタマー=「顧客」が、サービスや商品と関わっていく過程でどういった行動を取り、どう考え、どんな感情を抱きながらゴールまで辿り着くのか、ユーザーの行動・感情を時系列で可視化するフレームワークのことを指します。

そのため、ユーザーの行動を軸に、環境的要因や心理的な反応を時系列で表現することが可能です。特に複数のタッチポイントをまたぐ体験の連続性に着目し、その過程で起こる様々な出来事について、行動・認識・思考・感情などユーザー体験の理解に密接に関わるコンテンツの詳細を明らかにすることが期待できます。

また一枚の図に書くことで、チームメンバー間の認識齟齬を防ぎ共通認識を持つことにも有効的です。

カスタマージャーニーマップの目的

通常、プロジェクト初期にペルソナを作成し、ユーザーの理解を進めることが多いかと思います。しかし、ペルソナでユーザーに対する理解を深めたとしても、そのペルソナが実際にどのような行動をとり、どのような感情を抱いてゴールにたどり着くかまでは整理することは困難と言えます。時間軸に沿ってユーザーの感情及び体験を整理したいと考えますよね。

そこでカスタマージャーニーマップを使用しましょう。カスタマージャーニーマップでは、時間軸に沿って体験前後のユーザーの感情の変化を整理・分析することができます。

注意点としては、前述の通りカスタマージャーニーマップはユーザー行動・感情に主軸を置いているツールのため、カスタマージャーニーマップの記載で完了としてしまうとサービスの理想論で終わってしまう可能性もあります。

そのため、カスタマージャーニーマップ記入後にはサービスブループリントを使用し、機能面からもサービスを考えていくことで、ユーザーに寄り添いつつもより現実的なサービスを検討することが期待できます。

サービスブループリントとは? 基本からメリット、作り方まで徹底解説

活用することで得られるメリット

カスタマージャーニーマップを活用することで以下のメリットが考えられます。

ユーザーの体験価値の向上

カスタマージャーニーマップを活用することでユーザー体験の全体像を示すことができます。それによりサービスの改善点を検討しやすくなるとともに、サービスが目指すユーザー体験を再度検討する手助けになるでしょう。

カスタマージャーニーマップは、ユーザーをより深く理解するためにペルソナ設定では足りない要素を補完してくれるフレームワークです。顧客の行動分析をもとに感情・思考・不満などを細かく可視化できるため、具体的な課題とその解決策の発見に繋がります。

結果として、ユーザーへの理解や知識も深まり、より質の高いサービスや製品を提供でき、ひいてはユーザーの体験の向上につながるでしょう。

チーム内で共通理解を促進

一連のユーザー体験の全体像をプロセスだけでなく、ユーザーの行動や感情を含め視覚化することで、時間軸の観点からユーザー体験を整理し、チーム内で共有し認識を合わせることができます。

作成の際、ひとつの部門のメンバーに限らず複数部門のメンバーで議論することで、偏りなく様々な観点で検討することができ、また認識齟齬を防ぐことにも効果的と言えるでしょう。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップの作成は、実は思っているほど難しくありません。基本的な6つのステップを押さえれば、誰でも効果的なマップを作れるようになります。

ゴール設定から始まり、ペルソナの作成、タッチポイントの整理、そして最終的な課題抽出まで、各ステップで何をすべきか具体的に解説します。

ステップ1:ゴールの設定

まず、マップを作成する目的とゴールを明確に設定します。ユーザーに最終的に到達してほしい状態や、企業として達成したい行動を定義しましょう。

例えば「売上30%アップ」「資料請求件数の増加」「SNSでのシェア獲得」といった具体的な目標を設定します。

また、数値目標を設定することで後の効果測定が容易になります。チーム内での認識を統一すれば共通の方向性を持って取り組むことができるため、プロジェクト全体の推進力も高まるでしょう。

ステップ2:ペルソナの設定

次に、マップの対象となる具体的なペルソナを設定します。ペルソナは、商品の想定顧客を分析し、架空の一人の人物像として作り込んだものです。

年齢・性別などの基本属性から性格、趣味嗜好まで詳細に設定します。抱えている課題やニーズまで、できる限り具体的に設定するとよいでしょう。

ペルソナの精度がカスタマージャーニーマップ全体の質を左右します。そのため、裏付けとなるデータや現実のユーザー調査結果をもとに練り上げることが大切です。

可能であれば、想像だけでなく実際の顧客インサイトも反映させましょう。

ペルソナを設定するときのポイント

ペルソナ作成時は、シンプルでわかりやすいゴールを設定してあげましょう。ここでいうゴールは、サービスによってユーザーがどんな着地点に終着するかを検討します。

最初に複雑なゴール設定をしてしまうと、カスタマージャーニーマップの作成に時間がかかり、その後の工程がスムーズに進まなくなる可能性があります。シンプルに設定することで作成進行がスムーズになると同時に、チーム内で認識を合わせやすくなります。

イメージが持ちにくい場合は、現状のユーザーからアンケートなどの調査を行ってから書き起こすとより具体化しやすいでしょう。

ステップ3:顧客体験のフェーズ定義

次に、ユーザーがゴールに至るまでに経る主なプロセスの段階(フェーズ)を時系列に沿って定義しましょう。

一般的な購買行動では「認知・興味関心」「情報収集・理解」「比較検討」「購入」「継続利用」などのフェーズに分かれます。

ただし、目的や事業内容、顧客層(BtoBとBtoCか)など、状況に応じて購買プロセスは大きく変わります。自社のビジネスやユーザー行動に合わせて、それぞれのフェーズ名と順序を整理し、全体の流れの枠組みを明らかにしていきましょう。

各フェーズの境界線を明確にしておくことで、後の分析をスムーズに進められます。

ステップ4:タッチポイントと顧客行動の洗い出し

次に、各フェーズごとにユーザーが取る具体的な行動と企業とのタッチポイントをすべて洗い出していきます。

Webサイト閲覧、SNSへの投稿、店舗来訪、資料請求、カスタマーサポートへの問い合わせなど、ユーザーと企業が接触しうるあらゆる行動とチャネルを書き出しましょう。同時に、その接点における社内の対応策(施策)も整理していきます。

どの段階でユーザーとどう関わるかを明確にすることで、ユーザーの行動フローと企業側の対応策を結びつける土台ができます。

また、接点に直接関与しない周辺のユーザー行動も見落とさないようにしましょう。例えば「Webサイト閲覧」の前の「Googleでの検索」や、「商品購入」の前の「家族に相談」なども含めて考えることで、より実態に即したマップを作成できます。

ステップ5:顧客の思考・感情の可視化

続いて、各タッチポイントや行動においてユーザーが何を考え、どんな感情を抱いているかを洗い出していきます。

マップ上に可視化することで、顧客視点で体験の質を評価できるようになります。ユーザーの期待、不安、満足、疑問など心理面の変化を時系列で追いながら記載していきましょう。

感情とは、嬉しい・悲しい・不安・安心といった行動に伴う心の動きを、思考は「信頼する」「迷う」「疑問に思う」など顧客が考えていることを指します。ここで注意したいのは、「こうあってほしい」という提供側の理想を混ぜないことです。

感情や思考は、ポジティブなものもネガティブなものもどちらも欠かさず出すことが重要です。各段階でユーザーが抱える課題や疑問もメモしておき、体験のポジティブ・ネガティブ両面を明らかにしていきましょう。

ステップ6:課題の抽出と改善策の検討

最後に、ここまで整理した情報をもとにユーザー体験上のボトルネックや改善機会をフェーズごとに抽出していきます。各タッチポイントでユーザーが抱える不満やつまずきを洗い出し、企業側の提供価値が不足している箇所を特定しましょう。

そこから、課題を解決するための施策を検討していきます。例えば情報不足が課題ならコンテンツの充実を図る、手続きの煩雑さが課題ならUI改善を行うなど、具体的な打ち手を導き出します。

そして、改善策・追加施策を一覧にまとめ、それを実際のマーケティング施策につなげていきましょう。優先順位をつけて効果的な改善を進めることで、カスタマージャーニーマップを最大限活用できます。

いざやってみても、納得のいくカスタマージャーニーマップを作れない…ということもありますよね。適切なフォーマットや記載すべき要素が分からないと、結果的に表面的な分析に留まってしまうケースもあります。

この資料では自社プロダクトやサービスのユーザーの行動を明確にする方法について解説しています。

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カスタマージャーニー作成時のポイント

実際にカスタマージャーニーマップを作成・運用する際に、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

作って終わりではなく継続的に更新していく姿勢や、偏りのない視点で作成する工夫など、より効果的に活用するための実践的なコツを確認していきましょう。

AS-IS/TO-BEの整理

新サービスを検討する上でTO-BEの検討に目が行きがちですが、必ずAS-ISの整理から実施することが重要となってきます。まず現状を整理(AS-ISの整理)した上で、課題を洗い出すことに注力してみましょう。

その上でTO-BEを整理することで、現状の課題の解決策をも念頭にTO-BEを検討することができるため、現状との一連の繋がりを持つことができ、サービスの意義や目的を改めて理解した上でサービスに落とし込むことに有効です。

複数人での作成

カスタマージャーニーマップ作成時に、部署を横断したチームメンバーで取り組むことで、サービスを多角的に検討することができます。

一般的にはカスタマージャーニーマップはデザイン部署よりのツールと言えますが、限定的な部署のみで作成すると偏りや検討不足も生じうるでしょう。

異なるポジションや役職のメンバーで作成することで新たな気付きなどもあり、より掘り下げて作成することが期待できると言えます。

ブラッシュアップの実施

カスタマージャーニーマップは1度書いて終わりではなく、何度も追記・修正を加えることでよりサービス及び顧客への理解を深めることができます。

後続フェーズでペルソナ像に新たな気付きなど変更点が見られた場合、柔軟にカスタマージャーニーマップも修正・ブラッシュアップすることで、整合性がより担保されユーザー目線に立った作り込まれたサービスを検討することができるでしょう。

カスタマージャーニーマップの作成例

出前のサービスを例にカスタマージャーニーマップを使用して記入例を挙げています。記入例のようにカスタマージャーニーマップを記載することで、時系列に沿ってユーザーの行動及び感情を整理することができ、そこから現状の課題も洗い出すことができます。

上記で説明させて頂いたカスタマージャーニーマップのテンプレートをダウンロードいただけます。

まとめ

今回、カスタマージャーニーマップの書き方について説明させていただきました。カスタマージャーニーマップ を使用することで、以下のメリットを期待できることが特徴かと思います。

  • カスタマージャーニーマップを使用することで、ユーザーの体験・感情を時系列で整理することができる
  • 様々なポジションの人たちで書き進めることでチーム内の共通認識が促進できるとともに、ブラッシュアップしていくことでより顧客体験の向上を見込むことができる

本記事が皆様の理解の一助となれば幸いです。

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