サービスブループリントとは? 基本からメリット、作り方まで徹底解説

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本記事は、2022年3月10日に公開された記事を再編集し、2025年12月10日にin-Pocket編集部により情報を追記しております。

1980年代前半に生まれたサービス運用や設計を支援するツール「サービスブループリント」。日本では2000年代以降に普及し、サービスデザインやユーザーエクスペリエンス(UX)の重要性が高まった2010年代から活用が広がり始めました。

現在では、サービス開発や改善に取り組む企業にとって不可欠ともいえるこのツールについて、基本情報やメリット、カスタマージャーニーマップとの違い、作り方、作成時に便利なアプリやテンプレートなどをご紹介していきます。

アイスリーデザインでは、ユーザー体験をより豊かにすべく、使いやすさを徹底的に追求したUX/UI改善を行っています。

見た目やコンセプトの美しさだけでなく、土台となるユーザビリティを追求し、納得感のある「UIデザイン」をご提供します。

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目次

サービスブループリントとは?

サービスブループリントは、顧客体験の裏側で動いている業務プロセスやシステムまでを一枚の図で見える化する、サービス設計のフレームワークです。

カスタマージャーニーマップで描いた理想的な顧客体験を、実際にどうやって実現するのかーそんな疑問に答えてくれるのがこのツールです。フロントステージの接客対応から、バックステージの業務の流れ、それを支える基幹システムまで、サービス提供の全体像を統合的に設計することができます。

ここでは、サービスブループリントの基本概念から具体的な作り方、カスタマージャーニーマップとの効果的な使い分け、ビジネスデザインへの応用まで、実例を交えながら分かりやすく解説していきます。

サービスブループリントとは?定義と目的

サービスブループリントの見本。最上段に記載されているユーザー行動に合わせて、どこでどんな対応が発生しており、貢献しているシステムは何かなどが一目瞭然となる。

サービスブループリントは、サービスがユーザーに提供されるまでのプロセスを、サービスの提供者やシステムの動きと合わせて視覚化したツールです。

分かりやすく言うと、イベント進行における役割分担表のようなイメージ

学校行事やイベント開催時によく使う「役割分担表」。この表があると、プログラムの流れと連動して誰が何をするかが一目瞭然です。

これに加えてサービスブループリントは、ユーザー行動に連動して起きる対応をカテゴリ分けしたり、各要素にかかる時間や繋がりを書き込んだりすることで、サービスの抜け漏れ、見直すべき点をより分かりやすくしてくれます

サービスの運用・設計を行う際、サービス提供者側の論理でサービスやビジネスの設計をしがちなところを、ユーザーを中心に置いた状態で機能検討や業務プロセスが整理できるフレームワークと言えます。

サービスブループリントの作成を主導すべき人は?

作成を主導するのは主に、ユーザー体験の設計を行うUXデザイナーや、サービスの戦略立案と実行を担当するプロダクトマネージャーなど。ただし、作成には全ての要素が出揃う必要があるため、会議やワークショップなどの場が設けられ、関係者を集めて作業を進めるケースが多いです。

<参加者の例>

  • 顧客と直接やり取りする機会が多い、顧客接点部門の代表者
    • カスタマーサービス担当者
    • 営業担当者
    • フロントデスクスタッフ
  • バックステージでの業務プロセスや技術的な制約を把握している、バックオフィス部門の代表者
    • 技術部門の担当者
    • 運用部門のスタッフ
    • 物流担当者
  • 経営層・管理職
    • 部門責任者
    • プロジェクトマネージャー

適切な作成タイミング

上記は弊社で実際に作成したサービスブループリント。ユーザーとの接点が多いサービスだと、一画面におさまりきらないくらいの情報量になります。

作成タイミングとして多いのは、プロジェクトの初期設計時サービスのプロトタイピング実施時期。それぞれのタイミングで作成する目的は下記を参照ください。

<プロジェクトの初期設計時>

  • ユーザー視点を軸に、機能単位でシステムを整理して課題を洗い出す
  • 機能の漏れや不足を確認する
  • サービスへの理解を深めて議論のポイントを明確にする

<サービスのプロトタイピング実施時期>

  • 将来的なユーザー体験にフォーカスしてサービスを再検討する
  • プロトタイピング(試作品)に対するフィードバックを元にサービスの要素を視覚化し、ブラッシュアップを手助けする

他のビジネスフレームワークとの使い分け

サービスブループリントは、他のビジネスフレームワークと組み合わせることで、より効果的なサービス設計を実現できます。

ここでは、よく比較されるカスタマージャーニーマップとビジネスモデルキャンバスとの違いと、それぞれのツールをどのように使い分けるべきかを見ていきましょう。

カスタマージャーニーマップとの違い

サービスブループリントとよく混同されるのが、カスタマージャーニーマップです。

結論から言うと、サービスブループリントは、カスタマージャーニーマップを使った分析の後に活用するツールです。

つまり、ユーザー体験の整理をするのがカスタマージャーニーマップ、カスタマージャーニーマップで見えたユーザー行動を参照してサービスの提供プロセスの整理を行うのがサービスブループリント、と言えるでしょう。

カスタマージャーニーマップのテンプレートダウンロードはこちら

カスタマージャーニーマップについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。

もう少し詳しく説明します。

カスタマージャーニーマップは、ユーザーを理解するには有用なのですが、そこに留まってしまうと、現状の組織的な側面から捉えることや、部門内の思考性の違いを置き去りにして進めてしまいがちです。

「大きなイチゴのケーキを食べたい」というユーザー視点だけでは、その裏にあるビジネス上の課題に気付けない。

すると、理想のみが先行してしまい現実的には実行できないサービスができあがる、なんてことが起こり得るのです。

そんなとき、サービスブループリントを使用すると、ユーザー視点と組織の課題を両立して考えることが可能となります。

ビジネスモデルキャンバスとの違い

サービスブループリントは、ビジネスモデルキャンバス(BMC)を組み合わせることで、事業戦略とサービス設計の整合性を高めることができます

ビジネスモデルキャンバス(BMC)は事業モデルや戦略の全体像を図解するフレームワーク、そしてサービスブループリントは具体的なサービス提供プロセスを詳細に可視化する手法です。

BMCで描いた戦略をサービスブループリントで実行プロセスに落とし込むことで、戦略と実行のギャップを埋めながらサービス提供内容を最適化できるでしょう。

BMCが事業の「何を・誰に」を定めるツールだとすれば、サービスブループリントは「どのように」サービスを提供するかを設計するツール。両者を連携させることで、戦略から実行まで一貫したサービス運営ができるはずです。

サービスブループリントを使用するメリット

サービスブループリントを活用すると、サービス改善に多くのメリットが得られます。

一枚の図でサービスの全体像を把握できるため部門間で共通認識を持ちやすく、プロセス上のボトルネックや問題点も見えてきます。さらに各段階で最適化すべきポイントを明確にできる点も大きな利点です。

ここからは、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

1. サービスの全体像の把握と部門間の意思疎通ができる

サービスブループリントを使えば、企業が提供するサービスの全体像が見えるようになるため、各部署や担当者がどのように連携して顧客にサービスを提供しているか一目で理解できるでしょう。

これにより、部門間のコミュニケーションが円滑になり、無駄や重複のない効率的なサービス提供が可能になります。各担当者同士のつながりも見えてくるため、組織内で共通の視点を持って話し合えるようになるというメリットも生まれます。

また、一枚の図を共有するだけでチーム全員が同じ前提に立って話せるようになり、無駄な手戻りが減ることでプロジェクトを効率的に進められるでしょう。

全員が同じゴールに向かうことでサービス改善の意思決定も迅速になり、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

2. ボトルネックや課題の発見につながる

サービス提供プロセスの各段階をサービスブループリントで細かく可視化することで、業務のボトルネックや改善余地を明らかにできます

顧客に同じ情報を二度入力させているような冗長な手順がないか、内部の連携不足による無駄な待ち時間の発生していないかなど、プロセス上の問題点も洗い出しやすくなります。

弱点を把握し、洗い出した課題に優先順位を付けて対策をおこなうことで、サービス全体の品質や顧客満足度の向上を図れるでしょう。

3. 最適化ポイントを特定できる

サービスブループリントを使用することで、サービス提供の各段階において最適化すべきポイントを具体的に特定できるため、リソース配分の調整や業務フロー再構築などの判断がしやすくなります。

そのため、限られた経営資源のなかで最大限の価値を提供できるようになるでしょう。

サービス全体のパフォーマンス向上や業務効率化に役立つほか、見直したプロセスを継続的に改善することで、結果として顧客満足度の向上にもつながります。

サービスブループリントの4つのメイン要素

それぞれの要素の詳細は下記の通りです。

①ユーザー行動

サービスを利用する際のユーザーの具体的な行動や活動のこと。「カスタマーアクション」とも呼ばれ、時系列に沿って記載されます。

たとえばECサイトの場合、以下のような行動が記載されます。

  • 商品検索
  • カートへの追加
  • 決済情報入力

②フロントステージアクション

ユーザー行動に対応するサービス提供側の直接的な対応や活動、または接触できるサービスの部分を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 接客する店員の行動
  • WEBサイトのインターフェース
  • AIによるチャットサービス
  • オンラインストアでの商品検索、カートへの追加、決済手続きなど

③バックステージアクション

ユーザーから直接見えない、サービス提供の裏側で行われる活動や処理を指します。フロントステージのアクションをサポートする役割を担っています。たとえば以下のようなものが該当します。

  •    レストランでのシェフによる厨房での調理
  •    ホテルの予約システム管理
  •    ECサイトの在庫管理システム

④プロセス

サービス提供を支える内部の仕組みや基盤を指します。ユーザーからは直接見えない、バックグラウンドで動作する要素です。フロントステージやバックステージの活動を支える役割を果たします。具体的には以下のようなものが含まれます。

  •    基幹システム
  •    管理システム  
  •    データベース
  •    サプライチェーン
  •    在庫管理システム
  •    決済システム
  •    配送システム

ポイントは、それぞれのユーザー行動がどのような機能に結びつくのか詳細に記載すること。ここの記載が大雑把すぎると機能の整合性が取れなくなってしまう可能性があるため、詳細に考えていくことが必要となります。

サービスブループリントの5つのサブ要素

上記の書き込みが終わったら、矢印、時間、感情、規則や指針、指標を書き加えていきます。サブ要素は必須項目ではありませんが、書き込むことでより分かりやすくなります。

①矢印

矢印は、プロセスの順序やステップの進行方向を示します。矢印には3種類あります。

  1. 「進行方向を示す矢印」
    各ステップをつなげプロセスの順序を明確にする(例:メニューを見る → 注文する → 支払う → 商品を受け取る)
  2. 「ステップの連携を示す矢印」
    ユーザー行動とフロントステージ、バックステージなどの間に上下の矢印を描く(例:お客さんが注文する ↑↓ 店員が注文を受ける)
  3. 「フィードバックを示す矢印」
    あるステップの結果が次のステップにフィードバックされていることを示す(例:商品を受け取った後に問題があった場合 → お客さんがクレーム → 店員が対応する)

それぞれを意識して書き込むといいでしょう。

②時間

各ステップの所要時間や待ち時間を明示し、サービスの効率性を評価するための要素です。適切に書き込むことで、改善が必要な部分やサービス全体のスピード感を理解しやすくなります。

所要時間、待ち時間、合計時間などを書き込むといいでしょう。

  • 所要時間の例:メニューを見る(2分)→ 注文する(1分)→ 支払う(1分)
  • 待ち時間の例:席に着く(待ち時間5分)
  • 合計時間の例:サービス全体の所要時間:20分

③感情

「感情」は、各ステップでユーザーが感じる感情の変化を示す要素です。サービス利用中の満足感、不安、期待、焦りなど、ユーザーの気持ちを視覚化することで、満足度向上やストレス軽減のための改善点を見つけやすくなります

たとえば、注文時の不安や、商品の受け取り時の嬉しさを表すことで、サービスのどこでポジティブな感情を生むべきか、あるいはネガティブな感情を減らすべきかを把握できます。

④規則や指針

シート内に「規則や指針」を書き込めば、サービスのルールやガイドラインを示し、品質や安全性の確保に役立ちます。

安全基準、法的規制やコンプライアンス、品質基準、顧客対応のガイドライン、緊急時の対応指針などを書き込むといいでしょう。

⑤指標

最後に、各ステップでの目標数値、達成基準、品質基準などがあれば記入しておきましょう。サービスの成果や改善点を客観的に評価できます。

たとえば、「注文対応時間を5分以内」「顧客満足度80%以上」といった具体的な数値を記載することで、サービスの質を評価しやすくなります。

サービスブループリントの作り方

出前のサービスを例に作成したサービスブループリントの記入例

サービスブループリントを作る時は、最初にユーザー行動から着手するのが基本です。その次に、フロントステージ、バックステージ、プロセスの順に書き加えていきます。そして最後に、各要素をつなぐ矢印、時間、感情、規則や指針、指標を書き加えます。

ここでは、目的と要件の設定や、カスタマーアクションの記載、フロントステージとバックステージのアクション整理、内部プロセスの可視化、そして関係者との共有・改善まで、サービスブループリント作成の6つのステップを順に解説します。

1. 目的と要件を設定

はじめに、サービスブループリントを作る目的と要件を明確にします。

どのサービス領域を対象にするのか、どんな課題を解決したいのかをはっきりさせておくと、プロジェクトの方向性がブレません。ここが曖昧だと効果的な計画も実行も難しくなってしまうため、改善のゴールをチーム全体で共有して、現状の問題点を洗い出すところから始めましょう。

たとえば、顧客満足度を上げることが目的なら、顧客からのフィードバックを集めて分析することが要件になります。今のプロセスのどこに問題があるのかを特定して、集めたデータをもとに具体的な改善策を考えていきます。

改善策をサービスブループリントに反映させていけば、筋の通った設計ができるようになります。

2. カスタマーアクションを記載

次に、ユーザーがサービスを利用する時にどんな行動をとるのか、一連の流れを書き出していきます。

ユーザー視点でサービスの流れを整理しておくと、各段階でどんな問題が起きそうか、どこにチャンスがあるかが見えてきます。効率的な改善策を考える時にも役立つでしょう。

オンラインショッピングを例にすると、「商品を検索する」「カートに入れる」「会計に進む」といったステップがカスタマーアクションにあたります。

このステップは、カスタマージャーニーマップを作る時とも共通する部分です。ユーザーがどんなシナリオで動くかを具体的にイメージしながら、時系列で行動を整理していくといいでしょう。

3. フロントステージのアクションを記載

ここでは、ユーザーから見える部分で、サービス提供側がどんな対応をしているかを記載します。

ユーザーが直接体験する領域を明確にしておけば、顧客接点でのサービス品質を評価できます。どこを強化すべきかも見えてくるでしょう。

Webサイトでユーザーに表示される検索結果画面やチャットサポート、店舗でスタッフが行う案内や会計対応などが、フロントステージのアクションの例です。

これらはサービスの第一印象を左右して、ユーザー満足度に直結する領域と言えます。それぞれのタッチポイントで、どんなサービスが提供されているか、どんな課題があるかを洗い出してみてください。

4. バックステージのアクションを記載

続いて、ユーザーからは見えない裏方で行われている業務も洗い出して記載します。フロントステージを支える重要な内部プロセスで、詳しく書き出しておけばサービス全体を俯瞰して課題を見つけやすくなります。

ホテルの例だと、予約システムの管理や清掃スタッフのスケジュール調整、在庫管理などがバックステージのアクションです。普段は見えにくい裏方の業務まで見える化しておけば、改善のチャンスを見逃さずに済むでしょう。

バックステージの業務がスムーズに回っているかどうかで、フロントステージのサービス品質も変わってきます。裏方を最適化しないままでは、UX向上は難しいと言えます。

5. プロセスを記載

さらに、それぞれのステップを支えている内部のサポートプロセスも書き込んでいきます。

ITシステムや物流といったバックオフィスのインフラ的な活動もここに含まれて、サービス提供を裏で支える重要な要素です。各工程がどうやって連携しているかを詳しく記載しておくと、全体像がつかみやすくなります。

顧客が注文してから商品が届くまでの一連のプロセスを書き出しておけば、人員配置や在庫補充をどう適正化するか、具体的な改善策を考えやすくなるでしょう。サービス提供の裏側にあるプロセスまで洗い出せば、部署間の連携ミスや無駄な重複業務も見つけられます。

全体で最適なフローを設計して、ボトルネックになりそうなところを事前に取り除いておけば、サービス提供の安定化にもつながります。

6. 関係者と共有・改善

最後に、完成したサービスブループリントは関係者全員で共有して、定期的に見直しながらアップデートしていきます。

部門をまたいでサービスブループリントを検討すれば、チーム全員の認識を合わせることができます。それぞれの担当者が、サービス全体の中で自分がどんな役割を担っているかを理解できるようになるでしょう。

一度作って終わりではなく、常に最新の業務フローを反映できるよう継続的に更新してください。市場の環境が変わった時や新しいサービスを導入する時にも、その都度サービスブループリントを見直して現状を正確に反映させます。

定期的にアップデートを続けていけば、サービス改善のPDCAサイクルを組織に根付かせることができます。

サービスブループリントの要素や作り方は一見シンプルですが、実際に作成・活用するのが難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。

アイスリーデザインでは、ユーザビリティをとことん追求し、使いやすさにこだわったUX/UI改善を行っています。

サービスブループリントを活用して、ユーザーに寄り添ったUX/UI改善をしたいとお考えのご担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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サービスブループリントの3つの境界線

サービスブループリント上には、サービスを構成する要素を区分けするための3種類の「境界線」が定義されています。

これらの線を引くことで、顧客と提供側のやり取りが発生する領域、顧客に見えるフロントステージと見えないバックステージの境目、組織内部での役割分担の範囲が明確に区別できます。

ここでは、それぞれの境界線がどんな役割を持っているのか、詳しく解説していきます。

1. インタラクションの境界線

インタラクションの境界線は、顧客と従業員(サービス提供者)が直接やり取りを行う領域を示す線です。この線を引くことで、サービスのプロセス上でユーザーとスタッフが直接関わる部分がはっきりするため、顧客接点を理解したり分析したりしやすくなるでしょう。

この線は、サービスブループリント上ではユーザー行動とフロントステージアクションの境界に位置します。

飲食店のサービスブループリントでは、顧客が注文するアクションと店員が注文を受けるアクションの間にこの境界線が引かれます。対面で行われるやり取りに注目して、サービス体験を分析できるようになります。

この線を基準にすれば、顧客接点における改善策を検討しやすくなるでしょう。サービス品質を上げるための重要な指標となります。

2. 可視境界線

可視境界線は、顧客が直接見ることができる領域と、見ることのできない領域との境目となる線です。フロントステージ(顧客に見える部分)とバックステージ(顧客に見えない部分)を分けます。

サービス運用上の課題や改善点を把握しやすくなるでしょう。図ではフロントステージアクションとバックステージアクションの間にこの線を引きます。

サービスの見える部分と裏側の部分を分けて整理できます。飲食店ではホールでの接客(フロントステージ)と厨房での調理作業(バックステージ)の間にこの線が引かれるでしょう。

顧客に見えるサービスと見えない裏方業務を切り分けて整理できるため、内部プロセスの改善点を把握しやすくなります。効率的な業務改善につながります。

3. 組織内のインタラクションの境界線

組織内のインタラクションの境界線は、顧客と直接やりとりを行う部署・従業員と、顧客に直接は関わらない裏方の部署・従業員を区別する線です。この線を引くことで各部門の役割範囲が明確になります。

部署間の連携や責任分担を見直して業務効率を高められるでしょう。サービスブループリント上ではバックステージアクションとプロセスの間にこの線を引いて区別します。

ホテルではフロント係やコンシェルジュなど顧客対応部門があります。清掃・設備管理など顧客と直接接しない部門との間にこの境界線が設けられるでしょう。

各部門の責任範囲が明確になり、部署間の連携強化に役立ちます。部署横断でサービス提供の役割分担を見直す際の指針にもなるでしょう。

関係者が集まって作る際の進行方法

上記のようにユーザー行動のみを記載したシートを準備し、参加者に付箋を貼り付けてもらう形で進めると作成がスムーズです。

関係者が集まってサービスブループリントを作る際は、

  1. 主導する人がユーザー行動を記入したシートを準備する
  2. 参加者に付箋を配る
  3. 付箋に各ユーザー行動に対応して発生する業務を記入してもらう
  4. 記入を終えた付箋をシートに貼ってもらう

という順番で進めるといいでしょう。

ビジネスデザイン用途で作成・使用する際のポイント

サービスブループリントを利用するシーンはサービスデザイン時が主ですが、ビジネスデザインのシーンにも適用できます。

まずはサービスデザインとビジネスデザインの違いを今一度おさらいします。

  • サービスデザイン:お客さんが使いやすく満足できる仕組みのデザイン
    (例:ユーザーがECサイトをどうやって便利に使うか)
  • ビジネスデザイン:事業におけるお金の稼ぎ方のデザイン
    (例:どうやってEC事業でお金を稼ぐか)

ビジネスデザイン用途で使用する場合は、作成時に意識する点や手順、有効な場面などが少し変わるため、そのポイントを表にまとめてみました。

ビジネスデザイン目的で作成する時は、提供するサービス自体の機能よりも、管理画面側、もしくはバックヤードの動きに重点を置くことがポイントになります。下記の3点を意識して作成を進めることで、より良いアウトプットが得られるでしょう。

  1. 該当するオペレーションがどうすればよりスムーズに流れるか
  2. どうすればユーザーに素早く価値を提供できるか
  3. どうすれば収益構造をより最適化できるか

サービスブループリント作成に便利なツール

サービスブループリントを作成する際に便利なツールを紹介します。テンプレートやアプリ、オンラインの図表作成ツールなどさまざまな方法があるので、自分に合うツールを選んで作成してみてください。

サービスブループリントに特化した機能を持つツールと、特化した機能はないものの作成に適したツールに分けてご紹介します。

サービスブループリントに特化した機能を持つツール

①Miro

オンラインホワイトボードツールで、サービスブループリントのテンプレートが提供されています。直感的なインターフェースで、チームでの共同作業も可能です。 iOSやAndroidアプリ、デスクトップアプリが提供されています。

②Figma

デザインツールとして知られるFigmaですが、サービスブループリントのテンプレートも利用できます。デザインとプロトタイピングを一体化して行えるのが特徴です。 

③FigJam

Figmaの姉妹ツールで、ホワイトボード型のインターフェースを持ち、サービスブループリントの作成に適しています。リアルタイムの共同作業が可能です。 

④Strap

サービスデザインに特化したツールで、サービスブループリントの作成をサポートします。ユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップの作成も可能です。 

⑤Unprinted

サービスブループリントのテンプレートを無料で提供しているサイトで、FigmaファイルやPDF形式でのダウンロードが可能です。

⑥Lucidchart

フローチャートやダイアグラムを作成するのに最適なツールです。クラウドベースでの共同作業が可能で、ドラッグ&ドロップで簡単にサービスブループリントを作成できます。

サービスブループリントの作成にも使えるツール

以下に、サービスブループリントに特化した機能はないものの、作成する際に便利なツールをリストアップします。

  • Draw.io (diagrams.net)
  • Microsoft Visio
  • OmniGraffle (Mac)
  • Microsoft PowerPoint
  • Google Slides
  • Adobe Illustrator

サービスブループリント導入時の課題と成功のコツ

サービスブループリントを導入する時には、いくつかの課題が出てきます。

作成したり維持したりするのに時間も手間もかかって、関係者を巻き込んだ大掛かりなプロジェクトになることもあるでしょう。効果的に作るには複数の部署が協力することが欠かせず、部門間の調整が難しいこともあります。

また、一度作って終わりではなく、定期的に更新しないと使えないものになってしまうのも課題です。

こうした課題に対処するには、常に顧客視点を軸にしてプロセスを考えることが大切です。部署をまたいだワークショップを開いて関係者全員の共通理解を作り、サービスブループリントを「生きた文書」として位置づけて、定期的に見直しながら改善を続けていきましょう。

これらのポイントを押さえておけば、サービスブループリントの真価を発揮させて、継続的なサービス改善につなげることができます。

サービスブループリントを活用して、より質の高いサービス設計を

通常、サービスはユーザーに見える範囲(フロントステージ)と見えない範囲(バックステージ)に分けられます。

そのためバックステージの様子はユーザーには見えず、バックステージ側もフロントステージ側の詳細がよく見えずにサービス設計並びに業務推進をしてしまう可能性があります。

しかし、サービスブループリントを利用すれば、ユーザーの行動を起点にしながらサービスの提供プロセスに主軸を置いて可視化を行うことができ、また、ユーザーの行動を起点に機能要求に落とし込むため、システムの流れや機能間の整合性を確認することができます

ユーザー視点と企業視点の両方を考慮することで、より包括的で実行可能なサービス設計が可能になり、結果として競争力のある優れたサービスを生み出すことができるのです。

サービス開発やビジネスモデルの検討においてもはや欠かせないツールとなりつつあるサービスブループリント。ぜひ活用して、より質の高いサービス設計に役立ててみてください。

アイスリーデザインで実施しているUX/UIデザインにおけるサービスの特徴、手法や関連事例などについては、こちらをご覧ください。
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