2020年12月24日

ナレッジ

サービス開発手法「デザインスプリント」の基本

新規事業という魅惑的な言葉の反面、残念ながら多くの新規事業が失敗に終わるのが現実です。一方でデジタルサービスの場合、市場調査、ユーザー調査、企画に1-2年を掛けていると市場環境が大きく変わっています。場合によって既に類似のアイデアを他社がサービス提供、ということにもなりかねません。デジタルを使った新規サービスの開発においては、スピード感を持ちながらも、十分に練り込まれたサービスを市場に投入しなければならないという二律背反した状況を打破する必要があるのです。この時に有効なフレームワークが「デザインスプリント」です。このフレームワークはシリコンバレーベンチャーでも多く採用されていますが、どのようなメリットがあり、具体的にどのように実施するのでしょうか。ここでは、デザインスプリントの概要、メリット、進め方、そして成功のポイントについて解説します。また、デザインスプリントが向いていないプロジェクトも一部存在するため、その特徴についても紹介します。

デザインスプリントとは

まず、デザインスプリントの概要、メリット、そしてデザイン思考との違いについて解説します。

デザインスプリントの概要

デザインスプリントとは、5日間という短い期間でプロダクトの成功確率を高める高速フレームワークです。小さなチームで集中的に作業を行い、その成果から新規事業の方針を定めることでリスクを減らすことができます。また上図の流れを通して得られる知見から、組織自体の成長を見込める点も特徴の一つです。

Google Venturesが考案したこのプロセスは、「黄金メソッド」と呼称されるほど、大きい効果を期待できるフレームワークとしてさまざまな企業で採用されています。

デザインスプリントのメリット

デザインスプリントの最大のメリットは、短期間でサービスアイデアのニーズ検証、及びプロトタイプを使った顧客体験の検証までを行えることです。プロダクトが失敗する最大の原因は、マーケットニーズがないことに気付かないまま多大な時間と費用を投じてしまうことであると言われています。デザインスプリントを導入することで、このような失敗を未然に防ぎつつ、組織でアイデアをブラッシュアップして共通認識を持つことができます。プロトタイプを活用した検証を行うメリットは、下記の通りです。

<メリット>

  • 少ないコストとエネルギーで、チームの様々な答えを実験できる
  • チャンスや限界を早い段階で表面化させ、学びを加速させる
  • 抽象的な考えを実物化することで、誰もが経験、評価できるようにする
  • チームの空気をポジティブにし、メンバーが協調してプロジェクトを推進しやすい状況を作る

 

デザインスプリントとデザイン思考の違い

サービスアイデアを元にプロトタイプを作成し、ニーズと顧客体験を検証するという点において、デザインスプリントとデザイン思考は一見すると同じもののように感じるでしょう。

しかし、デザインスプリントは実践からチームで学びを得るためのフレームワークである一方、デザイン思考は問題解決のためのマインドセットです。つまり、デザインスプリントは、デザイン思考を行動に移すための方法の一つなのです。

 

デザインスプリントが向いているケース・向かないケース

次に、デザインスプリントが向いているケースと向いていないケースについて解説します。

 

向いているケース:アイデアが既にある状態

デザインスプリントは、サービスアイデアのニーズと顧客体験の検証を目的としたフレームワークです。つまり、既に存在しているアイデアの検証を行う場合に初めて効果があります。

 

向いていないケース:アイデアがゼロの状態

上述した通り、デザインスプリントは既存のアイデアの検証を行うためのフレームワークです。つまり、あくまでも既に存在しているアイデアに対して行うものであり、ゼロからアイデアを生み出すためのプロセスではありません。したがって、アイデアがない場合にはデザインスプリントは適用できません。

 

デザインスプリントの進め方

最後に、デザインスプリントの進め方、ルール、そして成功させるためのポイントについて解説します。

5日間のスケジュール

デザインスプリントの5日間のスケジュールは、下記の通りです。

  • 1日目「理解」:目標の設定、課題の把握
  • 2日目「発散」:解決策の書き出し、決定
  • 3日目「決定」:ストーリーボードを活用し、プロトタイプのプランを作成
  • 4日目「試作」:プロトタイプの作成
  • 5日目「検証」:ユーザーテスト

 

5日間のルール

デザインスプリントは短い期間で最大の成果を出すために、厳しいルールが設定されています。その中でも特に重要なものを5つご紹介します。

 

厳しい時間制限

「短距離を全力疾走する」を意味するスプリントの名前の通り、5日間の各日は厳格にスケジュールを区切り、短時間で最大限のアウトプットを目指します。例えば、1日目と2日目に各メンバーがそれぞれの情報をチームと共有することや、アイデアをブラッシュアップする時間は、15〜30分ほどに細かく設定されています。

このように限られた時間の中で最大の成果を出そうとメンバー全員の作業スピードと集中力が高まることこそが、デザインスプリントの重要なポイントです。

 

部署、役割を混ぜたチーム編成

デザインスプリントでは、部署や役割を問わずメンバー全員が対等にチームを組むことが重要なルールになっています。様々な視点を持ったメンバーが集まることで、対象アイデアに対してあらゆる見方を発見、共有することが可能です。また、組織内に共通認識が生まれることで、デザインスプリントが終わった後に結局上長が独断で全てを決めてしまうといった問題も起こりにくくなります。

 

アイディエーションは個人、意思決定は多数決

デザインスプリントではアイデアを生み出すためのブレインストーミングは個人で行い、その後初めて全体と共有し、最後は多数決で意思決定を行います。

大人数で議論をしながらアイデアを練り上げるプロセスは、ただ意見を交わすだけで議論が空中線に終始する危険性があります。またマルチタスクやコミュニケーションが苦手なメンバーがいる場合、全員の意見を平等に聞き出せないこともあるでしょう。このルールを守ることで、全員の意見を最大限にまで引き出しながら、確実にアイデアを共有することができます。

そして全ての意思決定は、上下関係やコミュニケーション能力の良し悪しを問わず、なるべく公平に行うことを目的に投票という多数決の手法を使います。場合によっては、獲得票が多かったアイデア同士を掛け合わせて、より良いものを生み出せることもあります。

 

パソコン、スマホ等のデバイスは電源オフ

5日間という短い時間で最大限の結果を出すためには、集中力を極限まで高める必要があります。従って、期間中は原則パソコンやスマホなどのデジタルデバイスの電源は全てオフ、メールも自動返信モードを設定した体勢で臨みます。このような極端な環境に身を置くことは、参加者の能力を引き出すだけではなく、チーム全体の団結力や信頼関係向上にも繋がります。

 

別件の会議等への参加NG

デザインスプリントの期間中は、全員が全ての時間をフルコミットをすることが求められます。従って、5日間は他のミーティングに参加することも原則禁止です。事前にその週の他の会議には参加できないことについて了承を得てから参加しましょう。上述の通り、デザインスプリント中のスケジュールは数分単位で細かく設定されているため、少しの時間でも離脱をしてしまうと遅れをとってしまい、その後の貢献度が著しく低下する危険性があります。

 

デザインスプリントを成功させるための3つのポイント

デザインスプリントを成功させるためのポイントを3つご紹介します。

 

プロジェクトチーム全員が参加すること

デザインスプリントを行う場合は、サービス開発に関わっているプロジェクトチームのメンバー全員が参加する必要があります。デザインスプリントを通して開発中のサービスはニーズがあるのかどうか、どのような顧客体験を提供するべきなのかというチーム全体の共通認識を持つためです。

 

プロトタイプの作成を迅速に行える体制を作ること

デザインスプリントの5日間のスケジュールの中で、プロトタイプを作成する時間はたった1日しか用意されていません。つまり、プロトタイプを迅速に作成できる体制を整えなければ、デザインスプリントのメリットである「アイデアを高速で検証する」というポイントを活かすことができません。

 

アクションプランまで落とし込むこと

デザインスプリントを通してアイデアの検証を行った後、アイデアを具現化していくためのアクションプランを立てなければ意味がありません。アクションプランには、タスクの整理、担当者の割り振り、そしてその後のスケジュール設定などが含まれます。この最終ステップが抜け落ちてしまい、検証に留まってしまうデザインスプリントにならないよう注意が必要です。

 

まとめ

この記事では、デザインスプリントの概要、メリット、向いているケースと向いていないケース、進め方、そして成功の3つのポイントを解説しました。デザインスプリントは一見すると効率的かつ効果的なサービス検証方法です。一方で、5日間でやりきるにはノウハウとプロトタイプ作成を迅速に行う体制が求められます。したがって、自社だけで取り組むのではなく、ノウハウと体制を持つ企業と共同でデザインスプリントに取り組むという方法も検討すると良いでしょう。

 

▶︎in-Pocket編集部より
アイスリーデザインで実施しているデザインスプリントにおけるサービスの特徴、手法や関連事例などについては、こちらをご覧ください。

 

i3DESIGN

in-Pocket編集部

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