2018年6月26日 テクノロジー

スポーツの「デジタル化」と「データ分析」- ワールドカップロシア大会で見えてくる未来

ワールドカップロシア大会が盛り上がっています。その熱戦の横で、国際スポーツ大会におけるテクノロジー活用の最前線を垣間みることができます。2020年の東京オリンピックに向けて、スポーツはどのように変わっていくのでしょうか。
 
今回、審判に関して2つのテクノロジーが使われています。ひとつは、前回のワールドカップから導入されすでに定着しているゴールラインテクノロジーは、7台のカメラでゴールラインを分析し、1秒以内に主審の腕時計にゴール結果が通知される仕組みです。もう一つは、今大会から導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で、映像で主審が際どいプレーを確認できるようになっています。このふたつのシステムが導入されたことで、これまでワールドカップで何度も議論になっていた疑惑の判定や、審判による判定のばらつきなどが大きく減少することになりました。こうした仕組みは他のスポーツでも増えていくことは確実と思われます。スポーツファンとしては安心して応援に集中できるようになってきました。

 
そして今大会ではプレイする方だけでなく、視聴する方の技術でも大きく変化があります。NHKのアプリや民法のTverなどではマルチアングルカメラでプレーの様子を自分の好きなアングルで見ることができるのです。中でもNHKのアプリは「戦術カメラ」というピッチ全体を見ることができるアングルが提供されており、サッカーファンから好評です。視聴者同志がSNSなどでお互い戦術を分析しながら観戦するという新しいサッカーの観戦スタイルが生まれつつあります。
 
今大会はVRによる観戦も多数行われています。中でもOculus社が提供する「Oculus Venues」は大人数のユーザーで同時にスポーツ中継を見ることができるシステムで、今回は米国内限定ではありますが4試合が中継されます。ヘッドマウントディスプレイの中に広がる仮想スタジアムの中で、facebookの友人達と一緒に近い観客席で会話しながら観戦することができます。もちろん仮想空間なので自分専用の個室の中で見たり、好きな観客席で観戦することもできるのです。世界中の何億人という人が同じスタジアムで観戦するということも仮想世界の中であれば、近い将来実現するのではと感じます。
 

しかし今大会では、何と言っても一番大きなインパクトがあるものとして、リアルタイムデータ分析の導入が挙げられるでしょう。これまでも試合後のデータ分析は活用が進んできました。前回大会優勝のドイツチームの強さはSAP社のデータ分析によるものだとも言われています。そこからさらに段階が上がり、いよいよ分析はリアルタイムで行われようとしているのです。
 
選手ごとの走行距離、ボールの保持時間やパス成功率などは画像データからの解析でどんどんデータ化されていくでしょう。そうしたデータから敵の攻め方などもデータアナリストが分析し、試合中にコーチと無線やチャットでディスカッションすることができるようになったのです。今大会では専用のタブレットがベンチに持ち込むことが認められたようです。ハーフタイムに出す監督からの指示も、よりデータに基づいたものになってくるでしょう。
 
今後は監督やコーチ陣に求められるスキルなども大きく変化していくかもしれません。どちらかというと野球などと異なり、サッカーやラグビーでは監督の采配はチーム作りの方に主眼が置かれていたかと思います。しかし、今後は試合中でのフォーメーション変更や選手交代がよりデータ分析に基づいたものに変わっていくかもしれません。スポーツにおけるデータアナリストの役割も大事なものになっていきそうです。
 
 

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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