2020年6月19日

UI/UXデザイン

DXを妨げる最大のラスボスFAXの侮れないUI/UX

D4DR 代表取締役社長

新型コロナ禍でテレワークなどが一気に進み,DX(デジタルトランスフォーメーション)が多くの企業で加速しそうです。しかし,一方でまだまだ日本には昔ながらのやり方が根強く残っていることが露呈してしまったことも事実です。中でも代表的なものがFAXです。今回新型コロナに対応する医療機関が保健所に送る「発生届」はFAXでした。受け取った保健所はそれをパソコンにデータとして手で入力して,印刷したものをまたFAXで自治体に送るということが行われていたようです。大量のFAXが紙で行き交い,入力ミスなども発生したりなど現場は大混乱だったとニュースにもでています。現場の方々も少ない人数でこうした処理に時間を忙殺され,結果的にPCR検査などが増えなかった理由のひとつではないかと言われています。現場が多忙な理由のひとつがFAXだったとすると,もしこれがシステム化されていたらもっとPCR検査ができたのかもしれない,救えた命があるかも知れないということにもなります。もし第二波が拡大した時に同じ混乱を起こさないためにも保健所や医療現場のデジタルトランスフォーメーションは「やった方が良い」ではなく「やらなければいけないもの」と言えるのかもしれません。

しかし,何故日本ではFAXがまだまだ無くならないのでしょうか?その理由としてFAXのユーザビリティがとても素晴らしいということがあります。例えばある発注業務をFAXで行っている会社を想定してみましょう。発注担当者がFAXが設置してあるところに行きます。そこには発注書のレイアウトが印刷された注文用紙が発注先別に何パターンかおいてあります。そしてその横にはボールペンもおいてあります。発注担当者は該当する用紙をとって,机に用紙をおき,そしてペンで該当項目にチェックして数量を書き込みます。そしてそのままFAXに差し込み,あらかじめ登録してある発注先のボタンを押します。FAXが無事送信されたら終了です。ここまでの時間は簡単な注目であれば1分くらいかもしれません。どうでしょう。素晴らしく洗練され,効率化された業務になっています。同じ事をWeb発注でやることを考えてみましょう。担当者は自分のパソコンにパスワードを入力してログインします,ブラウザを開き,ブックマークしてある発注先のWebにアクセスします。そこまでまた自社のID,パスワードを入力し,発注サービスの画面にアクセスします。発注商品を検索し,選択したら個数を入力します。納期なども入力して確認画面を何度かクリックし,発注終了です。もちろん何度も注文している商品なら履歴から一発ということもあるかもしれませんが,それでもここまで5分はかかるかもしれません。

日本の現場の得意な改善と部分最適はFAX用紙のレイアウトからペンの位置まで極限まで効率的に計算されています。それは工場の生産効率化と同じノウハウです。しかし,システムはセキュリティやミスを防ぐために何度の入力するフローが追加されたりなどわざと面倒にしている場合すらあります。現場の担当者ならFAXの方が早くて便利だと感じるかもしれません。これを解決するためには実はパソコンのシステムではなく,FAXと同じ場所に専用タブレット端末をおいて,今までのFAXと同じレイアウトの画面をペンデバイスでチェックするだけで済むようなシステムにした方が良いのかもしれません。しかし,中小企業が多い現場の状況にあわせればコストもかかるので,なかなかそういうソリューションを提供する企業が現れないのかもしれません。

しかし本当の現場を考えたUI/UXというのはFAXに勝てるもので無ければいけないかもしれません。これだけICT社会になったといいながらいまだに大量のFAXのUI/UXに勝てていないICT業界はやはり何かを反省しないといけないのかも知れないのです。

アイスリーデザインが取り組むUXデザインの詳細はこちらをご参考に!!
https://www.i3design.jp/service/ux-design/

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Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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