2017年9月22日 デザイン,ビジネス

ビジネスマンが知っておきたい、デザイン思考の3つの<枠組み>

■デザイン思考における3つのセット

近年、経営とテクノロジーを融合するキーワードとして「デザイン」が挙げられています。ビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーションを検討している企業にとっては『デザイン』そして『デザイン思考』は、重要な要素になってきています。
 
すでに様々なところで『デザイン思考』についてまとめたサイトもありますが、今回のこの記事では、ビジネス視点で『デザイン思考』を活用する上で、押さえておきたい3つの<枠組み>について紹介させていただきます。
 
 

1. 枠組み1:イノベーションの空間

 
『デザイン思考』は、元々アメリカのデザインコンサルタント会社IDEOによって提唱されたフレームワークです。今では、イノベーションの創造手法という一般的な意味で用いられることも少なくありません。『デザイン思考』が非常に特徴的なのは、イノベーションの創造を、一部の限られた才能のある人材だけのものとしていないところです。デザイナーが考えるときのプロセスを可視化することによって、経営者や技術者、営業担当でも、クリエイティブでイノベーティブなサービスを創造するための「手法」に落とし込まれています。
 
IDEOの社長兼CEOのティム・ブラウンは著作『デザイン思考が世界を変える』の中で、「イノベーションの空間」について言及しています。
 

■イノベーションの空間

  • 着想(インスピレーション)
  • 発案(アイディエーション)
  • 実現(インプリメンテーション)
  •  

    デザイン思考が世界を変える
     
    最初に大事になってくるのが「着想(インスピレーション)」です。モーツァルトのような天賦の才能があれば、あたかも自然界の音を神から天啓を受けたかのようにアイディアをつむぐことができるかもしれません。しかし、スティーブ・ジョブズが言及しているピカソの言葉「凡人は模倣する、天才は盗む」といった過程によって、天才的な多くのアイディアは生まれています。
     
    ジョブズは、類稀なる才能をもった経営者ではあるのですが、その天才さは大胆かつ意欲的な「盗む」の積み重ねがあって形作られた部分も大きいのではないでしょうか。インスピレーションを生み出すための多大な苦労と労力を厭わない人だけが、多くの試行錯誤を経ていくことで、本質を見極められるようになっていきます。その結果を得た人を、人々は手放しで「天才」と呼ぶのでしょう。
     
    現在、ベンチャーから上場まで至る多くの企業の中でも、特に短期間で拡大した会社がメディアでもてはやされています。その一方で、創業から10年以上経っている企業が、様々な試行錯誤の上で、ユニークなサービスを提供している、というケースも少なくありません。
     
    これらは、企業として試行錯誤した中で、本質を見抜く力を育ててきたからに他ならないでしょう。多くのトライアンドエラーが着想(インスピレーション)の種となり、発案(アイディエーション )に繋がったことで、実現(インプリメンテーション)をするための技術や実行力を身につけてきた結果だといえます。
     
    ジョブズは、会社を追放された時のことを、後のインタビューで次のように述べています。


    「スティーブ・ジョブス」
     
    「(多くの経営者は)アイデアを出せば、作業の9割は完成だと考える。そして、考えを伝えさえすれば、社員が具現化していると思い込むんだ。」
    「しかし、凄いアイデアから優れた製品を生み出すには、大変な職人技の積み重ねが必要だ。それに、製品に発展させる中でアイデアは変容し、成長する。細部を詰める過程で多くを学ぶし、妥協も必要になってくるからね。」
    「大量のコンセプトを試行錯誤しながら組み換え、新たな方法で繋ぎ、望みのものを生み出すんだ。そして、未知の発見や問題が現れるたびに、全体を組み直す。そういったプロセスが、マジックを起こすのさ。」
    引用元:40歳のスティーブ・ジョブズが遺した、世界中で使われるプロダクトを生み出すための考え方と創り方 | スタートアップアカデミア
     
    イノベーションの空間において、アイディアの生まれ方はただの直線ではありません。変容・成長しながら、時には反復し、螺旋系に組み合わされるなど、多彩な動きから生まれていくものなのです。
     
     

    2. 枠組み2:デザインプログラム

    次に紹介したいのが、デザインプログラムの3つの要素です。

  • 洞察(インサイト)
  • 観察(オブザベーション)
  • 共感(エンパシー)
  •  
    デザイン思考において、重要な考え方のひとつとして「人間中心設計 」ですが、上の3つの要素は、これを可能にするためのアプローチ手法です。
    ここで重要なことは、「人間中心設計」をするためのアプローチとして上の3つの要素が何故有効なのか、また上の要素で求められるのは「人間の本質の再発見」ではなく、「違い(差異)の抽出」というポイントです。
     
    補足説明すると次のようになります。デザインプログラムの3つの要素を実現する具体的な手法としては、多くのケースにおいて社会科学で用いられているエスノグラフィならびにエスノメソトロジーが用いられます。
    エスノグラフィとは、そこにいる人々からみて世界はどう見えているのか?を記述する手法で文化人類学において広く利用されています。エスノメソドロジーは、社会学において用いられる分析手法の一つで、社会現象の把握を「会話分析」という形で行っています。

    “行動観察”からイノベーションを引き出す:日経ビジネスオンライン
     
    これらの手法は、社会科学におけるある2つの前提のもとになりたっています。

  • 社会の構成要素は、個々人や「行為」そのものではなく「コミュニケーション」である
  • 現代人は、もはや同一の価値を共有しておらず、前提や価値観が違う「島」のようないくつものコミュニティーに同時に複数所属している
  • つまりエスノグラフィもしくはエスノメソドロジーの手法を取ることによって、前提や環境が違うユーザーをより深く理解することができ、そのことによって観察者が非観察者の言動の「違い(差異)」を見つけることができます。
    ユーザー調査をするときには、エクストリームユーザーなどといった、極端な例に着目する手法もありますが、これはより強い「違い(差異)」を見つけるためなのです。
     
    現代社会のようにモノやサービスが溢れている世の中では、市場分析といったマス分析だけでは不十分となってくるのではないでしょうか。価値観が違う複数のユーザーの言動を、丁寧に拾い、洞察(インサイト)し、観察(オブザベーション)し、共感(エンパシー)することによって、気づくことが多くあります。そこで、これまで理解していたものと全く違うような「違い(差異)」から、そのサービスもしくは商品の「意味」を再定義できるのです。
     

    3. 枠組み3:サービスデザイン

    最後に紹介したいのは、ヨーロッパの工科大学の名門オランダのデルフト工科大学のテキストでも指摘されている、『サービスデザイン』の<枠組み>です。

    デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術 
     
    デザインは、カタチや色などの物理的なものだけではありません。その商品、サービスの体験そのものをデザインするということが、最近の「デザイン」の大きな流れです。より良いサービスの体験そのものをデザインをするために、前述したイノベーションの空間とデザインプログラムという2つの枠組みがあります。しかし残念ながら、これらを用いただけで事業にできるということではなく、実現は非常に難しくなっています。
     
      「ビジネス」
     /      \
    「人」- 「テクノロジー」

     
    そこで、このようにビジネス・人・テクノロジーという3点に立脚した『サービスデザイン』の枠組みで、アイディアを捉えることが重要なのです。イノベーションの空間・デザインプログラムで作られたアイディアはいずれも、”人”にフォーカスしたものです。そこに、ビジネスとテクノロジーの要素を入れなければ、サービスとして成り立つことは難しいでしょう。
     
    例えば、ユーザーインサイト調査によって得た新しい気付きをベースに、何かのサービスアイディアが浮かんだとしましょう。しかし対象となったユーザーが極めてニッチすぎる上、単価も高くない場合が考えられます。そうなってしまうと、「アイディアは面白い!…けれどビジネスにはならないね…」という結果になってしまいます。
    面白いアイディアがあったとしても、実現するためのコストが非常に莫大、かつ技術的にそれを解消できない場合も考えられるでしょう。そうなってしまうと市場から受け入れられず、これもまた、ビジネスにはなりません。
     
    つまり、デザイン思考を用いてイノベーティブなビジネスを発想するときは、アイディアがイノベーティブなだけでは駄目なのです。そのアイディアがビジネスとして考慮した場合に十分な市場があり、実現可能な方法があって初めて、イノベーティブなサービスとして世の中で受け入れられるのです。
    実現可能な方法を探るためには、プロトタイプでの検証を繰り返すことが重要です。ここでは、テクノロジーが重要な位置を占めています。プロセスの自動化、煩雑な作業の軽減という要素は、欠かすことができません。
     
    この認識は当社、株式会社アイスリーデザインでも強く持っています。クリエイティブ系のデザイン会社であればあまりないことかもしれませんが、当社がUXデザインのプロジェクトを行う場合には、デザインをするだけではなく、「ビジネス視点」と「テクノロジー視点」を持つ人材をプロジェクトにアサインしています。
     
    デザイン思考をビジネスにおいて活用するためには、「ビジネス視点」としてビジネスフレームワークとの融合をし、また「テクノロジー視点」として、プロトタイプを継続的にブラッシュアップするための実現(開発)プロセスの導入が重要です。これらとの融合ができると、よりパワフルなフレームワークとなるのです。
     
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    今回は、ビジネスでのデジタルトランスフォーメーションを進めていく際に無くてはならない『デザイン』そして『デザイン思考』で重要な、3つの<枠組み>を紹介させていただきました。また、このようなトピックについて、in-Pocketでお伝えいたします。
     
     
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    in-Pocket is presented by i3DESIGN

    i3DESIGN(アイスリーデザイン)は渋谷とウクライナに拠点を構えるIT企業です。

    「デザイン思考」の手法を取り入れたクライアントワークと、Google対応の自社クラウドサービス「GOMOBILE」の提供を行っています。

    ビジネスの創出に必要な”右脳”であるUX/UI分野と”左脳”の開発分野が融合した組織で、サービスデザイン・UI制作・プロジェクト管理・設計・開発・品質管理・システム運用を一貫してご提供できることが、i3DESIGNの強みです。

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    Yoichiro Shiba

    ファウンダー兼CEO

    大手シンクタンクにて金融機関むけのシステムコンサルティング業務に従事後、ソフトバンクにて海外ベンチャーキャピタルとの折衝、投資案件のデューデリを担当。当時ソフトバンクグループ会社内の最年少役員。その後、一部上場企業を対象に投資事業ポートフォリオ再編、バイアウトのアドバイザリー業務を提供、複数のIT企業の役員歴任。ロータリー財団の奨学生としてドイツBielefeld大学にて社会哲学を専攻。

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