2015年12月15日

AI・xR

Mobile World Congress 2015に出展してみて分かったこと

ファウンダー兼CEO

Mobile World Congressは世界最大のモバイル関連の見本市で、今回はバルセロナで開催された。
(別記事、『Mobile World Congress 2015で見た、最新スマホ事情』もあわせてご覧いただきたい)

2015-12-15
今年3月2日~5日にバルセロナで開催された世界最大モバイル関連の見本市「Mobile World Congress 20

今回はMWC2015に出展しての感想と、来年以降、出展する企業のために、今回のMWC2015に出展してみて分かったことについて書いてみたい。
 

Mobile World Congressって何?

改めてだがMobile World Congressって何か?という所から始めると、簡単に言ってしまえば”モバイル関連の世界最大の見本市”だ。それ、そのままじゃないか?と言われるかもしれないが、ここで重要なのは、世界最大というのは世界の最先端とは違う、ということだ。最大というのは、ブースの大きさ(正確には展示場の大きさ)、出展企業数、来場者数の観点からみて最大ということらしい。

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確かにバルセロナに設置されたFiraという会場は、果てしなく大きい。今回、我々が展示したのはapp-planet8.1というホールだったが、勿論ホールは1.から始まる。日本でも東京ビックサイトに展示会場という意味では大きな会場があるが、ビックサイト比較であれば3-4倍位大きい?という感覚だ。前日の準備の際には、各ホール間の移動は、スケボーで移動する人もいる位だ。2015年の来場者数は、93,000人を記録と報じられているので、この数字からもどれだけ会場に人が多いかはイメージが沸くだろう。

そこで最大というポイントに話を戻すと、出展者のブースの大きさも一つのポイントで、Samsung、LG、SONYといったメーカーのブースは、これでもかという位に巨大なブースを出展しており、一般来場者が出展するだけのブースだけではなくホール1.2.は、出展企業がお得意様を会場に呼んで招待客しか入れない巨大スペースを設置している。

勿論、そんな巨大資本でなくても1コマ100-200万円単位で出展できるので、ホールによっては、鬼のように細切れされた空間に各社がブースを構えているところもある。こっちはどっちかというとブースが細かすぎて、正直、何が何だかよく分からない。そもそも最大の見本市であるが故に、オペレーター、インフラ機器、デバイス機器、モバイルOS、アドネットワーク、アプリ、セキュリティー、DB関連から、ウェアラブルデバイス、車、IoT関連、モバイルアクセサリーと、あらゆるジャンルが出展しているので、出展者も来場者も、展示ブースが分かりやすくできていない限り、「何の会社?」から会話が始まる。

この中からいい会社を発掘するのは、砂漠でダイヤモンドを探すように難しい。もしかしたら出展企業の中に、最新のサービスがあったのかもしれないが出展者ならびに来場者の話を総合するに、私の知る限りでは、これは画期的というサービスは残念ながらみあたらなかった。

よくよく考えてみたらこれは当たり前で、大資本の出展に際しては、メディアが色々報じる関係から情報過多になり、実際のデバイスやサービスをみる際には画期的という心象はなく、新しいサービスを出すベンチャー等が出すには、十分にもMWCは巨大になり過ぎていて出展費も高く、あまり多くない。

 

出展国別のブースが分かりやすい

とはいえ、色んな話を総合するにMWCの歩き方というのも幾つかあることが分かった。私が一番、ピンときた切り口は、国別のブースだ。我々であれば今回はMCF(モバイルコンテンツフォーラム)が主催するジャパンパビリオンの共同ブースに出展したが、日本以外も各国のブースがある。

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中でも一番出展数が多かったのが、イスラエルブースで66社が出展していた。イスラエルは、国を挙げて力をいれていて写真のように冊子を作り、企業発掘が難しいのを考慮して、その会社が何をやっている企業を来場者に分かりやすく纏めてくれている。

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勿論、歩き方の切り口として、あるサービスもしくはジャンルに絞ってみることも可能で、これはMWCのホームページならびに現地で配布されるカタログで確認できるが、残念ながら私には活用できなかった。何故ならば、出展企業からすると検索ヒット数を多くするために複数ジャンルで申請する。複数ジャンルに申請するということは、直接は関係ないジャンルにも登録するから、それを見てきた人は、これまた、「これって何のサービス?」から会話が始まる次第なので、鬼のように効率が悪い。その上、大きな会社から小さな会社まで、<○○ leading company>と記載がされているから、どのサービスが一番いいかは見る人の眼力による。

これに対して、MWC出展側からみるとグローバルに展開したいから出展している訳だが、グローバルといっても重点エリアはある程度は決まってくるから、各国別にブースを出展してくれれば、とりあえずその国のブースに行って情報交換するのが一番早い。ちなみにジャパンブースには、日本からの来場者も多く、かつ日本からの来場者はそれなりのクラスの人が多いので、実は日本企業のクライアントを海外で発掘することができる。

聞いた話では、昨年までは出展社は出展社用のマッチングシステムが用意されて、これで自分が会いたい企業と事前アポシステムで提携先、パートナー等を探せたらしいが、何故か2015からこのサービスが提供されなかった。その為、出展前の事前用意では、一般、来訪者と同様にMWCのウェブサイトから興味のある企業を普通に検索するしかなく、途方に暮れてしまった。

 

来場者の傾向と出展の裏側

会場を歩いている人(来場者)の傾向は、大きく3タイプに分かれている。

  1. 出展企業
  2. 各国から情報収集のために訪問している企業
  3. 各社が招待している重要顧客。

MWC自体は3月2日から3月5日までの4日間開催されている訳だが、出展企業を除いて、ビジネスにつながるような要人は、4日間展示会に来るほど暇ではない。日にちを絞って1-2日がいい所で、大抵の場合には前半の1-2日にそういった人は集中する。主催者側も、過去の経験からかそれを理解していて、Facebookのマーク・ザッカーバーグのような業界の有名人のKeynoteの日付をずらしたりしている。しかし、出展してみての実感は最初の1-2日が客筋はよく、これが3-4日になってくると急速に落ちていく。後半になってくると、現地の出展企業のスタッフが見学がてら見て回る人が多くなるのと、ローカル(バルセロナ近郊)の会社か、自称ブロガーという不明な人が情報収集がてら見に来るような感じになり、お金の匂いからは遠ざかっていく感じだった。しかも展示会中の開催時間は9時-18時だが、後半になればなるほど出展社側も、やや疲れが出てくるので、16時位になると、景気づけにいろんなブースでは酒が振る舞われビート音をガンガンにならしながら、どちらかというとパーティー会場に様変わりする。

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出展社は、展示会中何気に忙しく昼間はブースに立ち来場者への説明ならびに商談をし、時間の合間をみては、情報収集のために他のブースを渡り歩く。そして夜になると色んなネットワーキングという名のパーティーが開催されるので、これに参加して夜中を迎える。しかも、このネットワーキングパーティー、会場周辺だけでなくバルセロナの各地で開催されており、何気に移動が大変なんだが、たまに、無料のパーティーの場合、開催は案内されているが訪問してみると開催が中止されていることもある。

そんな感じで、ヘロヘロになりながら夜中を迎えて、朝、会場に9時には行くわけだが朝辛いからタクシーを捕まえる。だが、出展者は考えることが同じなのか、市内からFiraの会場までは大渋滞が待ち受けている。これも初日の渋滞が一番ひどい。正確に言うと、初日はタクシーが捕まらない。おかげで我々も初日は会場に着いたのが既に9時半を回って、しまった!出遅れたと思ったが、ジャパンブースの周りも例に漏れず遅刻していた(笑)。

それと展示会の期間中、ホテル代が恐ろしく高い。4つ星位のたいしたことのないホテルですら、シングルで1泊5万円と言われる。真偽の程は分からないが、バルセロナではこの会期中にバルセロナ市のGDPの1%が動くとまことしやかに言われていた位だ。その為、今回、私はAirbnbで部屋を借りることにしたが、場所と部屋を選べば快適で、かつ、お得だ。日本から纏まってチームでいく場合にはAirbnbで大きめの部屋を借りてワイワイやるのもお勧め。もっとも、会期中は上のような感じで朝から夜まで色々あるので、さらに夜中まで飲んでいると体力消耗も激しいのでペース配分は気を付けた方がいい。

 

もう一つのMWC - 4FYN –

冒頭に書いたようにMWCは世界最大の見本市だが、その傍らでMWC公認のもう一つの興味深いイベントがある。「4FYN(http://www.4yfn.com/)」だ。会場Firaから二駅離れた駅で開催されており、こちらは巨大資本がブースの大きさを競い合うイベントではなく、スタートアップ企業が集う祭典だ。

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開催期間もMWCと同じ3月2-5日の4日間で、Connecting Startupsというタイトル通り。現地で色々話を聞いた限りでは、ベンチャーで出展するならMWCよりも4FYNに出展したほうが、新興ベンチャーとしてイケている会社らしく、VC等も、面白い会社の発掘はMWC本体というよりも4FYNらしい。今回、会期中に同じく出展していた企業の中でも、来年出すなら4FYNにしようかなと話をしていて、確かに既にある程度の規模の会社で資本力があるのであればMWC、ベンチャーで世界目指すぜ!というのであれば4FYNという区分けというのも一つの選択肢だと思う。

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ちなみにだが、MWC内にも4FYNとコラボしているブースもあり、写真のように4FYNに出展企業でありながらMWC内の4FYNブースに展示している企業もあるので、出展戦略としては、このような展開も検討の一つに入るだろう。

 

最後に

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纏まりなくつらつらと今回の出展での感想を書いてみたが、総論としてはMWC2015の出展は当社にとっては非常に意義あるものだった。普通であれば、まずは見学をしてどういったものかを理解してから出展するというのが正しいSTEPかもしれないが、ベンチャーの場合にはスピードが大事なので、これで良かったのだと思う。今回一緒に出展している企業の中には、過去にも海外の見本市に出展したが、その際には絵だけで、まだサービスが開発できていなかったという会社もあった位だ。

けど、今回、当社も出展してみて表から見る以上の情報を得ることができたし、国内外問わず、色んな企業と情報交換をすることができて、モバイルサービスの世界の中心に近づけた感覚を得ることができた。グローバルを意識するモバイル関連のベンチャーは是非、出展してみはどうだろうか。

Yoichiro Shiba

ファウンダー兼CEO

大手シンクタンクにて金融機関むけのシステムコンサルティング業務に従事後、ソフトバンクにて海外ベンチャーキャピタルとの折衝、投資案件のデューデリを担当。当時ソフトバンクグループ会社内の最年少役員。その後、一部上場企業を対象に投資事業ポートフォリオ再編、バイアウトのアドバイザリー業務を提供、複数のIT企業の役員歴任。ロータリー財団の奨学生としてドイツBielefeld大学にて社会哲学を専攻。

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