2016年8月5日

テクノロジー

オウンドメディア をノンプログラミングでチャットボット化してみてわかったこと

Ryusuke Saito

チャットボットがアツい!と言われて久しい。
Facebook、Micorosoft、GoogleがチャットボットのAPIを立て続けに提供開始し、Apple もついにiOS10からサードパーティにiMessage/SiriのAPIの公開を開始する。
 
 
かくいう自分は、チャットボットと言っても、何か必要な情報がある場合は検索した方が早いし、例えばECサイトへの技術の応用を考えた場合も、わざわざボットに投げかけなくてもレコメンドエンジンが自分の行動データを踏まえて結構な精度でレコメンドしてくれるから、別にわざわざ対話形式にする必要はないじゃん、くらいに思っていた。
実際、いま話題のマイクロソフトのAI女子高生、”りんな”でもちょっと遊んでみたが、最新の自然言語処理アルゴリズムを使っているという割には、以下のとおりまったく会話が通じず残念なイメージしかなかった。
 
 
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ただ、英エコノミストの記事 でも、アプリマーケットの次はボットのマーケットプレースが来る!と喧伝している。これだけのビッグプレーヤーがこぞって参入している領域なので、まずは「ボットで現状何が出来るのか」を知る為に、Zeal社(ノンプログラミングでメディア向けボットが作成できるサービス「BOT TREE for Media」 を提供)が主催するBOTソンへ参加することに。
このイベントで実際にボットを作ってみたので、そこからの気付きについてレポートしたい。
 
 
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[BOT TREE for Mediaで出来ること]

基本的な機能としては以下の2つを提供している。今回は、この標準機能を使ってin-Pocketの記事レコメンドボットを作ってみた。

(1). 記事のレコメンド
例えば、”スマホのデザインについて知りたい”などと話しかけると、オススメの記事をレコメンドしてくれる。メディアに特化したボットツールなので、こちらの方がメインの機能だ。

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(2). 雑談
ボットとして最低限備えるべき雑談機能も付加されている。例えば、以下のように想定される”ユーザーの発言”と、それに対する返答をデータベース化しておけば、それに沿った想定問答が可能になる。
逆にこのデータベース上にない発言をされると、”何か話しかけてください”とデフォルト設定された応対になってしまう。

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[わかったこと: チャットボットの商用利用にはまだ乗り越える必要のあるハードルがありそう]

チャットボットに求められるプロセスを分解すると以下の2つだ。人間に変わってユーザーに接客してもらうには、このプロセスを、限定的な文脈でもいいので、限りなく人間に近いレベルで応対することが求められる。

Step1(インプット):相手の言っていることを理解する
Step2(アウトプット):利用可能なデータソースから答えを探索して適切な答えを返す

 
 
Step1. インプット
文字列を適切に分解して、ボットが相手の意図している通りに内容を理解する必要がある。
先述のりんなの例だと、”好きなスポーツチームは?”との問いに、”スポーツチーム”というひとくくりの単語ではなく、”スポーツ”というキーワードだけ拾って、それに紐づくデータベース上の応答集から、”はしること”と答えている。その後”チームは?”と訊くと”チーム8はかわいいよね”というまったく文脈を無視したキーワードに紐づく想定問答を返すことに終始している。
このように、人間なら当然のように行っている、文脈から相手の質問を理解するということをコンピューターにやらせるのは結構ハードルが高いことがわかった。

Step2. アウトプット
仮にStep1で正確に投げかけられた問いの意図を把握できたとして、ボットがアクセス可能なデータソースから、関係しそうな情報を引っ張りだしてユーザーに返す必要がある。
BOT TREEに関しては、基本的にメディアの記事を紹介することにほぼ特化したボットなので、登録したメディアのRSSフィード+Metaのkeywordか何かをみてヒットした記事を返してくれるようになっているようだ。提供元のZealさん自体は機械学習からディープラーニングを研究しているようだが、現状は1950年代の第一次AIブームでできていた、探索・推論の延長で出来ていたレベルな気がする。
”りんな”については、この記事によれば、ディープラーニングを含む高次なAIのエンジンが搭載されている。それでも現状少し使った限りでは上記の通りインプットの解釈にも難があるし、返答も女子高生が使いそうなワードのデータベースから引っ張っていて、そこから外れるインプットがあると、顔文字で逃げるという少々物足りない感じだ。(もう少し長く話しかければ、自分がどういう人間か学んで気の利いた回答をしてくれるのかもしれないが…)

 
 
というわけで、例えばEコマース領域での応用を考えた際に、完全にボットに委ねるには逆に消費者との信頼関係を壊す可能性があり、早くからチャットボットをFAQで取り入れているロハコの”マナミさん”は、前半だけボットで対応して、後半のクロージングは人が対応するオペレーションになっており、現在もこれが現実解であろうと思われる。 参照: http://eczine.jp/news/detail/3143
 
 
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[まとめ:向こう一年で起きるのは技術の進化よりカスタマーエクスペリエンスの進化かもしれない]

上記の通り、ボットが完全に人間を代替するのはまだ先かも知れない。しかしながら、世の中にはすでにチャットボットをベースにした新サービスが続々登場している。

当社のそばにあるハイテクコーヒーショップ、THE LOCAL  では、接客から決済までをバリスタボットが行ってくれる、「O:der Cognis」の提供を開始した。

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iOS10ではiMessangerなどがオープン化されるなど、プラットフォームは整いつつあるので、上記のような事例がこれから加速度的に増えることが予想される。
※iMassage上やSiriとのやり取りの中で、Apple payやSquare cash で支払いということが可能になる。(参照:http://www.gizmodo.jp/2016/06/ios-10-everything-you-need-to-know.html )

 
 
現状のEコマースはWebベースに最適化されていて、レコメンド、接客サービスも充実しているが、ボットエコノミーはこれを根本的に変える可能性がある。そうなると、例えばデザイナーは単純なWebのUIデザインだけが出来ればいい時代ではなく、UXデザインを出来る必要性が出てくる。
というわけで、ウェブ・アプリにとらわれずUXデザインが出来る(ようになりたい)デザイナーを当社では積極採用中です。と、お約束の人材募集で締めさせていただきます。

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Ryusuke Saito

Ryusuke Saito

純ドメな環境でSEを6年ほど経験したのち、三十路で世界デビュー。ヨーロッパ、アフリカと3年ほど転々として日本に帰国し、コンサル業を経てi3DESIGNにジョイン。非英語ネイティブ国で培ったグロービッシュで多国籍エンジニアと格闘する日々。趣味はランニング。

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