2015年12月15日

UI/UXデザイン

グローバルプロジェクトで通用する働き方 ~ リーン 仕事術のススメ~

Ryusuke Saito

以前より、日本人は生産性が低いと言われています。
労働生産性の指標に関する議論は賛否両論ありますが、これまで多くの国の人とプロジェクトをしてきた肌感覚からすると、個人的にも日本人の生産性は他国の人に比べて低いのでは?と感じることが多々あります。

総じて日本人は、”史上最薄”とか、”最軽量”とか、「本当にそこまでマーケットが求めているものなの?」と疑問に感じる部分も過剰追求する傾向があるように思います。
一方、日本国外の人達の働き方を見てみると、その根底には、Facebook社のモットーにもあった、”Done is better than perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)”と同じような意識が強いです。
このコンセプトは、「リーン開発モデル」の考え方に通じ、特にスピードの速いIT業界に働く人にとってはもはや常識的な考え方になっています。リーンというコンセプトはプロダクト開発時に用いられるものですが、個人の仕事術としてもIT業界で働く人、とりわけグローバル環境で働く人にとって有効。この考え方を身につけておくと多国籍プロジェクトを進める際にも役に立ちます。

あらためて、「リーン」とは?

一般的には、

①初期投資を抑え、まず最低限の機能を持った製品(MVP: Minimum Viable Product)を作る

②それに対し少数のユーザに試してもらいフィードバックを得て検証

③更なる仮説をたて、なるべく早く次の施策を実装

④次の改善サイクルへ

という考えに基づき、素早く軌道修正を繰り返す手法である、と定義付けられています。

No2_Lean3

下のスライドは、Pivotal Labs ( http://pivotal.io/ )という、リーン開発手法の導入をサポートしている企業のスライドです。
横軸は時間、縦軸は無駄な努力が生じるリスクです。時間が経てば経つほど、努力が無駄になる可能性が高くなっているのが分かります。

No2_Lean1

一方、下図の青い線は、こまめに確認→軌道修正→確認→軌道修正を繰り返しています。このアプローチだと無駄な努力になるリスクを極小化出来ます。これがまさにリーンの考え方です。

No2_Lean2

リーンのコンセプトを個人の仕事に当てはめてみよう

このコンセプトは、誰かから依頼されアウトプットを求められる全ての職種の人に当てはめることが出来ます。
例えばあなたが上司に何か頼まれた時、初期の段階でプロトタイプを見せ、後はこまめに確認・報告しながら軌道修正をする、という具合です。とはいえ上司も忙しいのでそんなに頻繁に見せられないケースも多々あるでしょう。
そういった場合は、80点の段階で見せるというのも手です。最後の20点を仕上げる労力と時間は、80点までに仕上げるそれよりかかることが多く、また、自分が100点、つまり”perfect”だと思っていたものが結果として全く上司が求めていないもの、”perfect”像からズレていることも往々にしてありえます。そんな場合は、Done is better than perfectの精神で先に見せてしまえばいいのです。

これは上司だけでなく、相手が顧客の場合にも有効です。顧客に何かを納品する際、顧客に満足頂ける品質を担保する必要がありますが、この品質管理の肝は、“品質”の定義です。、先にアウトプットイメージや期待される品質のレベルや観点を顧客と合わせておくことで、
・期待値とのギャップを埋めることが出来る
・過剰品質や顧客の望んでいない“perfect”の押しつけ予防に役立つ
などの利点があります。
文脈を共有していないグローバル環境でのプロジェクトなら尚更、その品質を評価する上司なり顧客とこまめにすり合わせることが大事です。

 

オフショア開発でもリーンはオススメ

このコンセプトを取り入れると、オフショア開発でのプロジェクト管理もやり易くなります。

2015-12-15
ある日、深夜のみんなが帰ったオフィスで、オフショア先とのテレカンが終わって疲れ切っていたところ、ふと現実逃避で、「いま世
上記の別記事では、オフショア先とのコミュニケーションについて、文化や仕事の進め方の根本的な部分については触れませんでしたが、期待通りの品質のアウトプットが上がってこない(と感じる)原因は、そもそも「仕事の進め方の前提が異なっている」事が多いように思います。

初めからマイルストーンを細かく設定したり、“Done is better than perfect”を意識して戻しや品質のすり合わせの時間を確保。それを考慮したスケジューリングでプロジェクト進行すればいいのです。
もしオフショアプロジェクトなどで期待値を下回るアウトプットのものが納品されてきたとしても、「ブラッシュアップして完成形にしていこう」、そんな過程を楽しむくらいの気持ちでプロジェクトを推進してみてはどうでしょう?

以上、色んな角度でリーンな仕事術について書いてきましたが、一言でいうと、“完璧主義は捨て、早めのアウトプット・共有を」という点に尽きます。こうしたほうが結果として良い品質のものが出来る、ということを心のどこかに留め頂ければ幸いです。

…と、何だか偉そうなことを書いてますが、実はこの原稿を書くきっかけになったのは、一度全部書き上げてボツ⇒ゼロベースで書き直すという、正にリーンと正反対になってしまったから。プロジェクト進行だけでなく、原稿執筆にもリーンの考えを活かしたいものです…

Ryusuke Saito

Ryusuke Saito

純ドメな環境でSEを6年ほど経験したのち、三十路で世界デビュー。ヨーロッパ、アフリカと3年ほど転々として日本に帰国し、コンサル業を経てi3DESIGNにジョイン。非英語ネイティブ国で培ったグロービッシュで多国籍エンジニアと格闘する日々。趣味はランニング。

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