2021年2月26日

テクノロジー

DX戦略に欠かせない顧客エンゲージメント指標「NPS®」とは

N.Ohnaga

COVID-19によってビジネスのルールが一変した2020年。テクノロジーを活用して価値の提供方法や運用方法を抜本的に作り変え、ビジネスモデルの変革に取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)はすべての企業に求められる変革のキーワードになりました。

経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン 」によると、DXは、

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること” 

と定義されており、加えて2020年12月18に電通デジタルが発表した「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」によれば74%のも企業がDXへの着手していると回答されています。

多くの企業でまさに今、DXによる事業の変革真っ只中とう感じでしょうか。

(DXの取り組み状況 出典:電通デジタル)

そのようなビジネスモデルの変化に伴い、顧客の満足度を測定する指標として、あらためて注目されているのが「NPS®」です。

今回の記事では、NPSとCS(顧客満足指標)を比較しながら、NPSがDX戦略がどのように貢献するのかを見ていきます。

 

NPSとは何か?

NPSとは、「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、自社ブランドや商品・サービスに対する顧客ロイヤルティを数字で計測して確認する指標です。

米国のコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーが2003年に発表し、その後米国の大手企業をはじめとするさまざまな企業で導入されてきました。

NPSの出し方は非常にシンプルです。まず、顧客に

「あなたがこの企業(商品、サービス、ブランド)をを親しい友人や同僚におすすめする可能性はどのくらいありますか?」

というたった1つの簡潔な質問をして、その可能性を0点から10点で回答してもらいます。そこで10点と9点をつけた顧客を推奨者(プロモーター)と呼び、8点と7点をつけた顧客を中立者(パッシブ)、6点以下をつけた顧客を批判者(デトラクター)と呼びます。そして推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPS®です。

(統計的な観点から、400サンプル以上を確保することが望ましい。この場合の誤差は±5%と言われています。)

昔から「顧客ファースト」を掲げる企業は数多くあります。

顧客を大切にし、顧客満足度評価(CS調査)を定期的に実施し、製品サービスの改善を繰り返してきました。

しかし、DXによって競争の次元が、商品・サービス単体から顧客経験全体にシフトする中で、企業が考える製品やサービスの明確な機能や便益よりもトータルな経験がもたらす無意識の感覚や感情的な要素のほうがユーザーの好き嫌いにより大きな影響を与えているようになりました。

“曖昧でとらえどころのない意識を、どのように計測すべきか”

そこで活用がすすむ指標が、顧客の意識(ロイヤリティ)を数値化するNPS®です。

 

顧客満足度調査とNPSの違い

グローバルでみるとNPSを採用している企業は1000社以上と多く、顧客ロイヤリティを想定するデファクト・スタンダード指標といっても過言ではありません。

case:

「Appleを超えるブランド Peloton NPSスコアは驚異の91。全米でTeslaに次いで第2位。Appleをも上回る。」

https://link.medium.com/STTAzB0j3db

とはいえ、従来の顧客満足度(CS)との違いがわかりづらいという方も多いかもしれません。NPSとはどんな概念でどのように活用することができるのかをこちらの図で示します。

CSの目的は、不満をなくして「顧客満足」を獲得することです。

しかし先程お話したとおり、CSの観点では、合理的な満足か、感情的な満足かを判断できません。それに対してNPSでは心理的・感情的な価値を意識して設計され、顧客ロイヤリティを獲得することを目的としています。

かと言って、物理的・合理的な価値を軽視しているわけではありません。機能・性能・価格面での顧客満足は他社と同等レベルの活動を行っている前提で、そこでは見つけられない感情的な価値を評価・改善することを目的に活用していくわけです。

 

NPSは業績との相関が高い

またNPSが昨今注目されている大きな理由は、収益との連動性がCSよりも高い点にあります。これまで多くの企業が「満足度」を答えてもらう顧客満足度調査(CS調査)を行ってきましたが、従来の顧客満足度は必ずしも実際の再購入や購買金額の増加といった行動につながらないことが明らかになっています。

NPSが目指す「推奨レベルの満足」には「顧客の期待を超える価値」が必要であり、それが「優れた顧客体験」を生み、「ファンの創出」につながります。

そしてNPS向上を目的にした顧客体験デザインのための活動そのものが顧客視点でDXを加速させるキードライバーにもなります。

次回はNPSのカギとなる「優れた顧客体験」ついて「カスタマージャーニー」の観点から深堀りしていきたいと思います。

ユーザーに提供すべき価値とは何か?

i3DESIGNでは、サービス構築の前段階で、ユーザー調査、ペルソナ設計、ストーリーボードなどの手法やツールを用いて、優れた顧客体験を発想するためのお手伝いをしています。ぜひ一度、ご相談ください。

 

Nobuyuki Ohnaga

N.Ohnaga

株式会社アイスリーデザイン取締役、株式会社bridge代表、サービスデザイナー。日本にペルソナを導入した先駆的企業であるmct社のコンサルタントとして人間中心イノベーション手法を活用した商品開発、サービスコンセプトの構築、イノベーション人材育成といったプロジェクトをリード。2017年1月bridge.Incを設立。多様な業種、組織の200を超えるデザインプロジェクトの実践経験をノウハウとして体系化し、スタートアップや中小企業のイノベーションを支援する。2017年8月より株式会社アイスリーデザインに役員として参画。

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