2018年4月18日 UXデザイン

“失敗”に学ぼう。デザイン思考導入における、部門ごとの障壁

IDEOのCEO であるティム・ブラウンはデザイン思考を「デザイナーの感性と手法をもちいて、人々のニーズと技術の力を取り持つこと」あるいは「現実的な事業戦略にデザイナーの感性と手法を取り入れ人々のニーズにあった顧客価値と事業機会を創出すること」と説明しています。近年、従来のビジネスのセオリーだけでは、企業やプロダクトの競争優位は作れなくなってきました。そこで顧客の価値を起点にしながら、ニーズと技術、そして事業機会の間をとりもつ具体的な方法論を提供する「デザイン思考」に様々な企業から注目が集まっています。また、多くの企業が自分たちの組織にもデザイン思考を導入するべく、その方法論を学ぶ努力をしています。
 
しかしデザイン思考をプロセスとフレームワークの習得と捉えて進めてしまうケースも多くなっています。その本質を十分に体得できないまま、流行りもののひとつとして消費してしまうケースも散見されます。
 
そこで今回はこれまでわたし自身が体験したいくつかのデザイン思考の導入の際のケースお伝えします。大きく分けると、導入される部門ごとにその障壁は異なるようです。
 


 
 

デザイン部門の場合


最近サムスンをはじめとするいくつかの企業では、デザイン部門が起点となってデザイン思考の導入を進めています。
しかし、一般的な企業で導入する際のプロセスについては注意が必要です。経営者はデザイン思考そのものがデザイナーの方法論ということもあり、デザイナーに任せさえすれば組織への浸透が進むと期待してしまうのです。
デザイン部門をプロジェクトリーダーとして、その下に事業部門や、セールス、広告部門をまたがるプロジェクトチームが編成されることが多くなっています。しかし、このようなチームがただ編成されたとしても、短期的な数字を担っている事業部門の意思決定プロセスを変えることは容易にはできません。事業部門の力が強ければ、「既存の市場環境の中でどうやって競合との差別化をするか」や「成功事業の優位性をどう守るか」を主に議論することになります。その結果デザイン部門は、デザイン思考の表面的な理解すら得られることなく消化不良のままプロジェクトを終えることになり、結果、「ウチの会社じゃ無理!」とデザイン思考を導入するモチベーションを失ってしまうのです。
 

事業部門での場合


事業部門やプロダクトの担当チームが中心になってデザイン思考の導入をすすめる場合、事業部門での導入は検討したアイデアやコンセプトを実現する権限が与えられていることもあり、最終的には製品やサービスとして具体化することが期待されます。しかし、デザイン思考導入のアプローチが2・3日の研修やセミナーといった方法論とフレームワークの理解を目的に進められることも多く、実際のプロジェクトでは上手く実践できません。結果、既存の視点や枠組みから離れられず、既視感のあるアイデアばかりが残り、変化を生み出せないままプロジェクトは終結します。その時デザイン思考については「ウチでも導入してみたけど、結局使えなかったよ。」という評価を下されてしまうのです。
 

研究開発部門の場合


研究開発部門で導入する際の一番のハードルは、判断することを保留し、課題の設定が曖昧にしながら探索を続けていくデザイン思考のプロセスに違和感を感じ、なかなか導入意義を感じにくい点にあるようです。技術進化や実現可能性といった部分に重点を置いてしまい、生活者のライフスタイルの中でどう利用されるのか、どのような意味をもたらすのかを具体的にイメージしづらくなってしまいます。こうなると、デザイン思考の導入はすすみません。
 
デザイン思考を導入していくと、既存の業務の範囲を越えて、フィールドワークや、ユーザーインタビューなど研究所の外に出かけるような、新たなタスクが求められることもあります。そこで、プロジェクト開始前に十分な理解と納得がないと、「これって商品企画やマーケがやることでしょ?」というメンバーの思いを拭い去れず、プロジェクトが頓挫してしまうことが往々にしてあります。
 


 
このような経験もあってか、最近では企業の経営チーム自身がデザイン思考の本質について集中的に学ぼうとしているようです。また、デザインファームを買収し、外部からその方法論だけでなく、能力やマインドセットまでに取り込もうとする動きもでてきました。
 
今はまさに、デザイン思考の表面的な理解に起因する、「導入の限界」に立ち向かい、乗り越えていく時と言ってよいでしょう。デザイン思考の根底にあるマインドや視座、態度、そしてもたらされる文化について理解を深め、長期的な視点で粘り強く導入を進めていくことが企業に求められているのです。
 
 
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i3DESIGN(アイスリーデザイン)は渋谷とウクライナに拠点を構えるIT企業です。

「デザイン思考」の手法を取り入れたクライアントワークと、Google対応の自社クラウドサービス「GOMOBILE」の提供を行っています。

ビジネスの創出に必要な”右脳”であるUX/UI分野と”左脳”の開発分野が融合した組織で、サービスデザイン・UI制作・プロジェクト管理・設計・開発・品質管理・システム運用を一貫してご提供できることが、i3DESIGNの強みです。

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OhnagaNobuyuki

N.Ohnaga

株式会社アイスリーデザイン取締役、株式会社bridge代表、サービスデザイナー。日本にペルソナを導入した先駆的企業であるmct社のコンサルタントとして人間中心イノベーション手法を活用した商品開発、サービスコンセプトの構築、イノベーション人材育成といったプロジェクトをリード。2017年1月bridge.Incを設立。多様な業種、組織の200を超えるデザインプロジェクトの実践経験をノウハウとして体系化し、スタートアップや中小企業のイノベーションを支援する。2017年8月より株式会社アイスリーデザインに役員として参画。

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