「時間もお金もかけたのに、期待した成果が出なかった」──そんなアプリ開発の失敗談は、実は珍しくありません。なぜ多くのプロジェクトは失敗に終わってしまうのでしょうか?
その答えは、「発注前の準備不足」にあります。目的やユーザー像があいまいなまま開発を始めてしまったり、表面的な機能や見た目だけでベンダーを選んでしまったりと、多くの企業が同じ落とし穴に陥っています。
この記事では、アプリ開発のよくある失敗事例を紐解きながら、なぜ準備が重要なのか、どのような準備が必要なのかを解説します。そして、弊社がまとめた発注前に確認すべき30項目のチェックリストの一部を公開します。
「もう失敗したくない」「これから初めてアプリ開発を検討する」という方は、ぜひ最後まで読み進めて、成功への第一歩を踏み出していただけたらと思います。
ストーリーで捉える、アプリ開発3つの失敗パターン
アプリ開発は多くの時間と費用がかかる一大プロジェクトです。しかし、事前に準備を怠ると、「あれもこれも型」「とりあえず型」「それっぽい型」といった典型的な失敗に陥り、期待以下の成果しか得られないことがあります。

ここでは、そんな典型的な3つの失敗パターンを、具体的な事例とともにストーリー仕立てでご紹介します。
【失敗パターン①】要望を全部盛り込み、設計が破綻する「あれもこれも型」
事例:大手小売企業における顧客向け統合ポイント・会員アプリ
Aさんの会社は、複数の実店舗とオンラインストアを持つ大手小売企業です。顧客サービスの向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化を目的として、すべてのポイントサービス、会員機能、クーポン、オンラインストアを統合したアプリを開発することになりました。
このプロジェクトには、マーケティング部、営業部、EC事業部など、多くの部門が関与しました。各部門からは「会員限定イベントの予約機能」「店舗での商品在庫確認機能」「AIを活用したパーソナライズされた商品レコメンド機能」「AR技術を使ったバーチャル試着機能」といった要望が次々と寄せられました。
Aさんは、社内のすべての要望を汲み取り、それらを「リリース時点で実装する」という方針を立ててベンダーに発注。その結果、開発は複雑化し、当初予定していた予算を2倍以上超過し、納期も大幅に遅延しました。
ようやくリリースされたアプリは、機能が多すぎてユーザーは使いこなせず、クーポンを探すだけでも何度も画面遷移が必要でした。結局、使いづらさからアプリはアンインストールされ、ユーザーはこれまで通り紙のクーポンや実店舗での買い物に戻ってしまいました。
発注者がアプリの「最も重要な体験」を一つに絞り込まず、目的に照らして「やらないこと」を決めなかったことが、この失敗を招きました。また、MVP(最小限プロダクト)を定義し、段階的に機能を拡張する構えがなかったことも、開発の破綻につながりました。
【失敗パターン②】目的も戦略もなく見切り発車する「とりあえず型」
事例:製造業の社員向け業務効率化アプリ
Bさんのチームは、DX推進を掲げる親会社の方針を受け、現場作業員の業務を効率化するための社内アプリ開発に着手しました。しかし、「なぜ業務効率化が必要なのか」「誰のどんな課題を解決するのか」という具体的な目的や戦略はあいまいなままでした。
結果として、開発中に現場からの「この機能も必要」「やっぱりこっちの機能は不要」といった要望で何度も仕様が変更され、手戻りが多発しました。完成したアプリは、現場の作業員が本当に必要とする機能が抜けており、一部の管理職しか使わない「お飾り」のような存在になってしまいました。
このケースでは、ビジネス上のゴールが整理されておらず、ユーザーの主なニーズや期待が言語化されていませんでした。また、アプリが成功したと断言できる具体的なKPIを数値で設定していなかったことが、評価や改善をあいまいにし、プロジェクトの方向性を見失わせる結果となりました。
【失敗パターン③】表面だけ真似て本質が抜けている「それっぽい型」
事例:大手飲食チェーンにおけるモバイルオーダー・決済アプリ
Cさんの会社は、若年層の顧客層拡大と店舗の業務効率化を目指し、競合の成功事例を参考に、モバイルオーダー・決済機能を備えたアプリの開発を企画しました。この計画は「とにかく“映える”デザインと“バズる”新機能を盛り込んで、SNSで話題になるアプリを作ろう」という、表面的な目標に終始していました。
このプロジェクトでは、開発費用を抑えるために、似たようなデザインのテンプレートをベースに開発を進めるベンダーを選定しました。見た目は競合アプリに引けを取らない洗練されたものでしたが、アプリは通信環境に左右されやすく、注文確定までに時間がかかったり、決済が不安定になったりする問題が発生しました。
さらに、このアプリは店舗の既存POSシステムとの連携が不十分でした。そのため、アプリでの注文がキッチンにリアルタイムで反映されず、店員が手動で注文を再入力する手間が生じ、かえってオペレーションが複雑化してしまいました。結局、顧客も店員も使いづらさを感じ、アプリは利用されず、店舗の業務効率化という本来の目的は達成できませんでした。
この失敗の背景には、他の成功事例をただ表面だけ真似てしまったことがあります。店舗の業務フローや既存システムとの連携といった「運用」まで考慮せず、見た目や流行りの技術にばかり注力してしまったのです。その結果、開発した機能の多くが店舗オペレーションと分断され、顧客と店舗双方にとっての価値を創出できない遺産となってしまいました。
失敗を未然に防ぐ「30項目のチェックリスト」とは?

前述したような失敗事例は、実は「発注前の準備不足」という一つの共通点に集約されます。逆に言えば、事前に重要なポイントを整理するだけで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
「アプリ開発 発注前チェックリスト」は、発注者が開発前に整理すべき30のポイントを体系化したものです 。このチェックリストを確認することで、ベンダーとの認識ギャップを最小限に抑え、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。要件定義・予算・ベンダー選定で迷ったらぜひチェックしていただきたい内容になっています。

ここでは、その30項目の中から特に重要なポイントをいくつかご紹介します。
アプリ開発を発注する前に準備しておくべき5つの要素

1. 目的(なぜ作るのか)
アプリ開発で最も多い失敗は、機能を詰め込みすぎて目的がぼやけることです 。重要なのは「ひとつの課題を、ひとつの体験で解決する」こと。
- アプリの「最も重要な体験」が1つに絞れていますか?(例:申し込みの簡素化、来店予約の効率化など)
- 目的に照らして「やらないこと」を決めていますか?
2. ユーザー像(誰が使うのか)
ユーザー像があいまいだと、機能やUX/UIが的外れになり、価値のないアプリになりがちです。
- 設計する上で優先すべきユーザーを絞り込めていますか?
- ユーザーの主なニーズ・不満・期待が言語化されていますか?
3. KPI(何を達成したいのか)
KPIがあいまいだとアプリの貢献度を測れず、改善や投資判断も属人的になります。
- アプリによって達成したいビジネス成果は明確ですか?(例:売上・業務効率・顧客満足など)
- KPIを実現するために必要な機能や導線が設計に反映されていますか?
4. 予算・スケジュール
限られた予算と期間で最大の価値を出す計画力は不可欠です 。
- MVP(最小限プロダクト)を定義し、段階的に機能を拡張する構えがありますか?
5. 社内体制
社内の役割や意思決定体制が不明確だと、プロジェクトが停滞し、ベンダーも動きにくくなります。
- 社内での意思決定者・承認フローが明確になっていますか?
- リリース後の運用・改善に向けた体制も含めて検討していますか?
これらは、アプリ開発を検討する上で必ず押さえておくべきポイントの一部です。自社のアプリ開発にあてはめて考えてみてください。
「もっと詳しく知りたい」「自分たちの場合はどうなのか」と感じた方は、このチェックリストの全文がダウンロードできる資料をぜひご覧ください。全30項目を網羅的に確認することで、プロジェクトの成功率を大きく引き上げることができます。
ダウンロード資料では、チェックリストの項目を一つひとつ確認できるだけでなく、「Yes」の数に応じた推奨アクションも解説しています 。
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アプリ開発 発注前チェックリスト
まだ準備ができていなくても大丈夫? ベンダーに相談する際の5つの疑問
チェックリストを通して、「まだ整理ができていない」「このままで発注していいのか不安」と感じた方もいるかもしれません。しかし大切なのは、最初から完璧な状態を目指すことではなく、信頼できるパートナーと協力して、最適な一歩を踏み出すことです。
ここでは、アプリ開発の初期段階でよくある5つの質問に、開発ベンダーからの視点でお答えします。
このチェックリストで発注前の準備を整え、信頼できるパートナーと「共創」の関係を築くことで、あなたのアプリ開発プロジェクトは成功へと大きく近づくはずです。
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