2017年10月24日

テクノロジー

プロトタイプが生み出す“副次的な”効果

N.Ohnaga

新しいレシピがあったとしても、実際に料理を作るまでは、レシピ自体は単なるアイデアに過ぎません。シェフは、味見をしながら修正とテストを繰り返し、ベストな味のバランスにたどり着きます。プロジェクトも同様で、プロトタイプになるまでは、コンセプトは単なる思いつきに過ぎません。プロトタイプを使って実験し、試行錯誤をすることによって、解決策を見つけ出すことができるのです。そんなプロトタイピングのプロセスですが、仮説の検証に留まらず、実は副次的な効果がいくつかあります。今回はその要素を3つ、ご紹介いたしましょう。
 

●プロジェクトチームの相互作用を促す

製品のプロトタイピングをすることによって、チーム内での理解の違いについて相互認識でき、目的の共有のレベルをぐっと高めてくれます。たとえば同じ課題と洞察を共有したつもりのメンバー間であっても、プロトタイプとして表現してみるとまったく違う打ち出し方を考えているケースがあります。お互いの視点、捉え方がどう違うのか、プロトタイプによってはじめて表出するのです。プロトタイプ制作のプロセスを通じてチームはあらためて相互理解ができ、メンバー同士の結束をさらに強くすることができます。
 

●ユーザーからの学習を促す

「多くの場合、人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」というスティーブジョブスの言葉は有名ですね。プロトタイピングは仮説の検証だけではなく、顧客の「何が欲しいのか」を理解するためのツールとしても有効です。
 ユーザーがプロトタイプを評価している様子から、製品・サービスにどのような価値を見出しているのか、利用を促進/阻害する要因は何か、その背景にどんな考えや期待があるのか何かを深く理解できるようになります。たとえば短期間で仮説検証のサイクルを回す『デザインスプリント』では、初日にユーザーへのデプスインタビュー、最終日に同じユーザーへのサービス体験テストを実施するというプロセスを組むことがあります。ユーザーの価値観や志向、行動といったパーソナリティを理解してサービステストを行うことで、サービス評価の背景にある潜在的な要因をより具体的に把握できるようになるのです。
 

●部門間、経営陣との意思疎通を促す

レポートやイメージといった概念的・抽象的な考えや意見を、見るだけでなく触れられるようにすることで、誰もが新しい製品サービスのコンセプトを経験することができ、部門間・経営陣とも共通の視点で議論できるようなります。この世に存在しない未来のサービスだとしても、物理的に視覚化することで場の空気はポジティブに変わります。どのようなフィードバックであったとしても、協調し推進しやすい雰囲気を作り出してくれるでしょう。プロトタイプは、プロジェクトを立場や役割を超えて協同で進めて行く際の、コミュニケーションにおける潤滑油のような役割も果たしてくれるのです。
 
プロトタイピングは、「資源の限られたスタートアップが使用するプロセス」といったイメージを持たれがちではありますが、実際には大手企業、特に組織がタテ割り(いわゆるサイロ化)になり、開発プロセスが過度に合理化されてしまっている企業にとっても有効な手段です。過去の延長線上にないチャレンジには、組織の中であらゆる秩序が大きな変化を求められます。プロトタイプを活用してステークホルダーの相互理解を促し、協力して推進できる関係を築くことで、プロジェクトの成功確率はぐっと高まるのです。
 
 
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Nobuyuki Ohnaga

N.Ohnaga

株式会社アイスリーデザイン取締役、株式会社bridge代表、サービスデザイナー。日本にペルソナを導入した先駆的企業であるmct社のコンサルタントとして人間中心イノベーション手法を活用した商品開発、サービスコンセプトの構築、イノベーション人材育成といったプロジェクトをリード。2017年1月bridge.Incを設立。多様な業種、組織の200を超えるデザインプロジェクトの実践経験をノウハウとして体系化し、スタートアップや中小企業のイノベーションを支援する。2017年8月より株式会社アイスリーデザインに役員として参画。

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