2015年12月15日

テクノロジー

世界のITを牽引する東欧・ロシアのポテンシャル

ファウンダー兼CEO

ITのオフショア開発というと、ベトナム・タイもしくはインドといった東南アジアエリアに拠点を構えて…という国内企業も少なくないが、実は世界的に見た時、旧ソビエト連邦の東欧(スラブ語)諸国もITのオフショア拠点として有名なのだ。
東欧諸国の何が世界を惹きつけるのか?今回は、日本ではあまり知られていない東欧諸国のIT事情についてまとめてみたい。

 

世界のオフショア開発事情

とはいえ、いきなり東欧諸国のITがすごいといわれてもピンとこない人も多いだろう。
そこでまずは世界のオフショア開発事情から振り返ってみよう。
下の図は、グローバルでクラウドソーシングができる大手「elance」に掲載されている世界のクラウドソーシングの受託状況だ。この図をみると英語でのやり取りということもあり北米の絶対ボリュームが大きく、後は人口の多いインド、パキスタン、バングラディシュと続くのだが、なんとその次に東欧諸国ウクライナ、ルーマニアが上位に食い込んできている。それだけITエンジニアが多い地域なのだ。参照元:『ONLINE WORK REPORT』

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東欧というと世界地図が頭に浮かばない人も多いと思う。ざっと地図でみるとこんな感じだ。

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地図をみると分かると思うが、昔のソビエト連邦に所属していた国が多く、ルーマニアは違うものの、その殆どがいわゆるスラブ語圏の国々だ。実際、有名な会社も幾つかあって、LINEの競合とも言えるfacebookに買収されたメッセンジャーアプリ「whatsapp」の創業者もウクライナ人で、優秀なエンジニアも多い。
いくつかのWebメディアでもITスタートアップがホットだ!と記事が掲載されていたので、下記に東欧のIT事情を紹介しているリンクをまとめてみた。合わせて参考にしていただきたい。

 

オフショア開発先としてのロシア・東欧エリア

それではオフショア開発という観点で東欧エリアについてみてみよう。
実際のところオフショア開発先を選択するにあたって3つの重要なポイントがある。
◆コスト
◆人材
◆タイムゾーン
ざっくりこのように分けられる。
ここで各ポイントごとにウクライナの事情を考えてみたい。
まずはコスト。定番のベトナム、タイといったエリアでジュニアクラス採用すると給与ベースで6~8万円/月くらいだが、ウクライナで実際採用してみても、大体同じ位のレベルと理解してもらっていいだろう。
やや余談だが、物価水準に比例するならアフリカのITエンジニアはもっと安いのではないかと期待する人も少なくないが、実際のところアフリカはそこまで物価は安くなく、それに比例しエンジニア単価も安くない。

次に人材は、さらにいくつかのパラメーターに分解して、
◆開発スキル・言語
◆コミュニケーション言語
◆クオリティマネジメント
この3つに分けて考えてみよう。
するとものすごく粗い表現だが、以下のようなことが言えると思う。
開発スキル・言語については、東南アジア・インドエリアよりも、東欧の方がレベルは高い。分かりやすい所では、インド・パキスタンあたりは、PHPを主としたLAMPエンジニアは鬼のように存在する。ベトナム、タイあたりは日本の会社が多く進出しているためかアプリ開発者が多め。
対して東欧諸国は、Web開発者もアプリエンジニアも両方いるのは勿論、旧共産圏のためか工学系の大学も多く、基礎能力高めの優秀なエンジニアが集まっているのだ。

次はコミュニケーション言語について。東欧では日本語は全くといっていいほど通じない。
仮にキリル文字と日本語を並べてみても、日本人の感覚だと「何語と何語だ?」と混乱するレベル。故に互換性はない。ただ日本カルチャー、例えば寿司などは何故か人気で、変わったところでは「ウサビッチ」は人気動画コンテンツとして知られており、こういう点での親日感があって面白い。

クオリティマネジメントについては、東欧の場合、ドイツからの開発委託も多く受けているのと、北方系で冬は寒いためか、どっちかというと南方系よりきめ細かく、真面目といった印象を受ける。
※勿論、これらの要素は最終的に個々人の性格に依存するところが大きいので、一概にそうだと言い切れないので、感覚程度で捉えて貰いたい。

さて、ここまでが人材面についての考察だ。
再びオフショア開発先を選ぶ上でのポイントに戻ってみよう。
3つの重要ポイント、最後はタイムゾーンだ。東欧系の会社とのやり取りでは、6~7時間の時差が発生する。アジア諸国に比べれば圧倒的に大きいのだ。
すごく上手に組み立てれば「日本での開発が終わる⇒東欧諸国でリレー開発」と、時差をつかったスピーディーな開発が可能になるはず…。だが現実はそんなに綺麗にはいかない。大抵の場合、時差の関係から必ずといっていいほど何日かはロスすると考えておいた方がいい。この点だけは、東欧も乗り越える課題があるといっていいかもしれない。

 

インド人が解けない問題はロシア人に持っていけ

やや古い本だがシリコンバレーでの創業を綴った貴重な一冊『ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記』でロシア系のITエンジニアがすごい、という下りがある。

実際には、シリコンバレーでITエンジニアとして多く在籍するのはインド人だが、その一方で「インド人が解けない問題はロシア人に持っていけ」という風潮も同時に耳にしたことがある。それほど世界的にみて、東欧・ロシア系のエンジニアの評価は高いのだ。

例えば航空宇宙学を上げて考えてもロシアとアメリカでは考え方が異なる。東欧・ロシア独特の解決方法、アプローチを期待しての評価と受け取ってもあながち間違いではないだろう。

 

さてここまで様々な観点で東欧・ロシアにおけるオフショア開発をみてきた。
実際、日本からだと時差の問題が大きく馴染みのないエリアだ。だがこれさえ乗り越えれば、東欧・ロシアというのはオフショア開発の拠点として非常に魅力的なのである。
優秀な人材をアサインできて、さらにカッティングエッジなTechサービスを委託する際には是非覚えておきたいエリアなのだ!ということを声を大にしてお伝えすることで、この記事の〆としたい。

次回は、そんな東欧に拠点を持つi3DESIGNだから伝えられる、「ウクライナにIT開発拠点をつくって分かったこと」について触れてみたい。

Yoichiro Shiba

ファウンダー兼CEO

大手シンクタンクにて金融機関むけのシステムコンサルティング業務に従事後、ソフトバンクにて海外ベンチャーキャピタルとの折衝、投資案件のデューデリを担当。当時ソフトバンクグループ会社内の最年少役員。その後、一部上場企業を対象に投資事業ポートフォリオ再編、バイアウトのアドバイザリー業務を提供、複数のIT企業の役員歴任。ロータリー財団の奨学生としてドイツBielefeld大学にて社会哲学を専攻。

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