地域共生型MaaS meemo
地域共生型MaaS「meemo(ミーモ)」アプリのUIUXデザインとアプリ開発を担当しました。このアプリは、送迎が必要な住民と登録ドライバーをマッチングし、バスやタクシーが利用しにくい地域での移動を支援するものです。弊社はデザインの見直しからクラウドネイティブかつ高速なCI/CD開発手法を用いたアプリ開発まで、一貫して実施しました。
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
コミュニティソリューション事業本部NEXT事業統括本部 横田美希さん
技術創造センタ技術開発部 久米田晴香さん、平井佐和さん
Overview
概要
プロジェクト概要
「MaaS(Mobility as a Service/モビリティ・アズ・ア・サービス)」という言葉をご存知でしょうか? これはフィンランド・ヘルシンキ市が2014年に公開した、2025年までに地域内の自家用車をゼロにするロードマップをきっかけに生まれた、ICTで多様な移動手段・交通サービスをワンストップで利用可能にする概念です。
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(以下、OSS)が提供する「meemo(ミーモ)」は、MaaSを活用し送迎を必要とする住民と、登録ドライバーである住民をマッチングし、バスやタクシーの利用が難しい地域でもスムーズな移動を可能にする点が最大の特徴です。日本の課題である、少子高齢化と都市部への人口集中を解決しようというサービスです。
今回アイスリーデザインでは「meemo」の中核をなすiPhone用アプリ改修版の開発を担当いたしました。
アプリ開発の知見を活かし、開発に即したデザインへの見直しからクラウドネイティブかつCI/CD(継続開発/継続デリバリ)を高速に提供できる開発手法を用いて実施させて頂きました。
「meemo」プロジェクトの中心人物であるOSS コミュニティソリューション事業本部NEXT事業統括本部の横田美希さん、技術創造センタ技術開発部の久米田晴香さん、平井佐和さんをお迎えして、同プロジェクトの概要と今回のアプリ開発の所感について伺いました。
クライアントの課題
交通サービスの減少による地方の移動手段確保
2025年に地方交通事業者のドライバーが大幅に減少する予測に対応し、地方での移動手段を確保する必要がある。
高齢者を含むすべての住民の移動ニーズへの対応
自由に移動が難しくなる高齢者や地元住民のための使いやすい交通サービスの提供。
住民主導のサービスの持続性と拡張性の確保
住民自身がサービス提供者となる持続可能なシステムを確立し、広範囲に展開可能な解決策を模索。
i3DESIGNの解決方法
ユーザーフレンドリーなアプリの開発
高齢者を含む全ての住民が容易に使用できるよう、シンプルで直感的なユーザーインターフェースを持つアプリを開発。
継続的な改善と技術支援の提供
アプリのユーザビリティを向上させるための継続的な改修と、高速の開発プロセスを通じて迅速な問題解決を実現。
実証実験から得たフィードバックの統合
初の実証実験を基に集められたユーザーからの具体的なフィードバックを反映させ、さらに使用しやすく、機能的なアプリへと改善。
Interview
インタビュー
“移動”で日本の地域課題解決を目指す「meemo」プロジェクト
プロジェクト全体の責任者として、サービス開発、事業計画、現場対応等を中心に手掛ける横田美希さん
2025年には地方交通事業者のドライバーが6割減少してしまうという試算があり、このままでは地方の交通が成り立たなくなってしまうと言われています。また、地元の住民の方々は自由に移動ができなくなり、友達にも会えなくなります。
そこで、我々は、住民が自治体や交通事業者に頼るだけでなく、自らサービスを作る側となってお互いに助け合うことができ、かつ、そのサービスを交通事業者と協業しながら実施することができれば、より持続的な地方の運営ができると考えました。
そこで生まれたのが、住民同士による送迎、バス、タクシーといった多様な移動手段を網羅した「meemo」のコンセプト。
送迎を必要とする住民と、登録ドライバーである住民をマッチングすることで、バスやタクシーの利用が難しい地域でもスムーズな移動を可能にする点が「meemo」最大の特徴です。
そんな「meemo」プロジェクトが実行に移されたのは2018年10月ごろ。偶然が重なり、早期のスタートが実現しました。
そうして市長を交えたプロジェクトを若手中心に組み、包括連携を結んで実証実験を始めることになりました。
実証実験は好評。しかしアプリ開発に課題あり
「meemo」の実証実験は、2020年7〜9月の約3ヶ月間にわたり舞鶴市の加佐・西地域にて実施。実験に参加したのは、40名の認定ドライバーと51名の利用者の合計91名。
期間中、ドライバーと利用者による送迎は全111回マッチングが成立し、利用者の4分の3以上が「住民送迎に不安を感じなかった」と回答するなど好評を得る結果となりました。
しかし、その一方で「meemo」アプリについては、利用者とドライバーからは完成度の低さを指摘する不満の声が多数寄せられてしまう結果ともなってしまいました。
実証実験の詳細はこちらよりご確認いただけます。
顧客SEとしてユーザーへのシステム解説、実証実験を通して得た要望検討、その他の調整等を担当している平井佐和さん
高齢者の方にスマホ操作を習得してもらうためにスマホ教室を開いたのですが、参加者が長い時間をかけて3文字打ったところで、指が違うボタンにあたって全部削除されてしまうのを3回繰り返す場面を目の当たりにして、スマホを使い慣れていない高齢者にとってはスマホの文字入力の難易度が高いことを痛感しました。
そこで今回の改修では高齢者の方が使いやすいアプリを目指すことにしました。
アプリの開発リーダーを務める久米田晴香さん
実際に面談させていただいた企業数社の中でも、アイスリーさんは銀行など硬めの企業の案件実績も多数あり、高セキュリティルームも持たれていたので、自治体と企業が連携している「meemo」プロジェクトの特性を理解していただけるだろうと最初から好印象を抱いていました。
しかし、今回の改修にあたって別のデザイン会社様にデザインをお願いしていたことから、当初はお断りされてしまいました。
多数の開発実績、そしてUI/UXデザインに対する知見をもとに、デザインから開発までを一気通貫してプロジェクトに取り組めるのがアイスリーデザインの強みです。そのため当初、「meemo」の開発部分だけを請け負うのでは弊社のバリューを発揮できないと判断し、お断りさせていただきました。
しかし、アイスリーデザインの営業担当が「meemo」に非常に可能性を感じており、今後日本が直面する超高齢化社会に対して取り組む「meemo」に弊社の技術で寄与したいと強く考えたことで会社を説得。デザインや要求仕様がある程度固まっている中でも、アイスリーデザインのクラウドネイティブかつCI/CD(継続開発/継続デリバリ)を高速に提供できる開発手法で少なからずご協力ができると考えを改め、開発を請け負わせていただくこととなりました。
開発力とデザイン力、その相乗効果が発揮された開発フェーズ
紆余曲折を経て開発がスタートすることになった「meemo」改修ですが、実際には開発を始める前に約2ヶ月かけてデザインの手直しがアイスリーデザインで行われることになりました。
その理由は、当初のデザイン案が開発を前提とした作りになっていなかったことが判明したからでした。例えば、モバイルアプリのデザインでは、電波の不安定な状況でのエラー表示をはじめとした「異常系」と呼ばれる画面表示や遷移が必要となります。さらには文字入力の際に、入力文字数が予想以上に多かった際などどのようにUI上で対応するかといった、多岐にわたるイレギュラー事象の想定が必要となります。元デザインではこうした考慮が不足していたこともあり、アイスリーデザイン側で追加・調整することとなりました。
異常系画像(イメージ画像)
そして、このデザイン見直しが当初の全体スケジュールを圧迫することとなります。実際に開発可能なデザインに落とし込むための調整が多岐にわたった結果、ローンチまでの開発期間が大きく圧縮されてしまったのです。
そう、リリース直前にプッシュ配信サーバーの開発が間に合わないというトラブルが発覚してしまったのです。「meemo」は通常のアプリ以上に、プッシュ通知の重要度が高く、通知機能なしにはリリースできません。
プッシュ通知画面(イメージ画像)
PMF(プロダクト マーケットフィット)フェーズで長く愛されるアプリへ
こうして「meemo」はデザインの見直しなど、多くの困難を乗り越え、無事スケジュール通りにリリースされました。この改修版を使った2021年の実証実験では、利用者の皆さまから多くの好評の声をいただくことができたそうです。
アイスリーデザインの特徴の一つに、リリースした時点で終わるのではなく、リリース後も継続して開発支援できる体制を提供できるという点があります。
そのため毎週のようにデプロイしてローンチするという、大手Sier企業では難しい「スピード感」を実現できているのです。
アイスリーデザイン UXデザイナー:永峰 優(左) アカウント責任者:山本 真吾(右)
今後も「meemo」はさらなる改善を続けながら、日本の地域課題解決を通して、地方創生に寄与すべく展開していく予定です。
担当者からのコメント
アイスリーデザインはデザインから開発までを一気通貫した、デザインとエンジニアリングの融合を強みとする企業ですが、今回の「meemo」改修においては当初開発のみを請け負う予定でした。しかし、実際にはアプリ開発の知見を活かし、“開発に即したデザイン”への見直しからプロジェクトに携わらせていただく結果となりました。今後はPMFのための修正を高速で繰り返しながら、より根本からUI/UXのブラッシュアップにご協力させていただければと考えています。