GitHubは、ソフトウェア開発において非常に重要なバージョン管理の機能を持ちつつ、さらに開発者同士のコラボレーションを可能にする、まさに「ハブ(Hub)」の役割を持つサービスです。オープンソースから企業プロジェクトまで、世界中のプログラマーが利用し、効率的なコード管理とチームの連携を実現することができます。本記事では、GitHubの基本から、なぜGitHubが選ばれるのか、他のサービスとの比較、導入プロセスまで詳しく解説していきます。
目次
1. GitHubとは?サービスの概要と成長の歴史
GitHubは、ソースコードのバージョン管理システムであるGitを基盤としたサービスです。ソースコードのバージョン管理ができるGitの機能を活用しつつ、プロジェクト管理やコードレビューなどの機能が追加されているため、オンライン上で複数の開発者が同時に作業することができます。オープンソースのプロジェクト開発にも広く利用され、開発者同士をつなぐプラットフォームとしての役割を担っています。
GitHubがどんなサービスかを掴んでいただくため、まずは、GitHubが開発されることになった背景から見ていきましょう。
GitHub誕生の経緯:Gitの普及と共同開発の広まり
GitHubの開発基盤となった、ソースコードのバージョン管理システムGitは、2005年にリリースされました。Gitは既存のバージョン管理システムに比べ、高速性や柔軟性を兼ね備えたものだったため、大規模プロジェクトに適したシステムとして、開発者の間で広く採用されるようになりました。
Gitが普及してきた2008年当時、ソフトウェア開発において、複数の開発者が協力して1つのプロジェクトに取り組む、いわゆる共同開発の機会が増えてきていました。また、誰でも開発に参加することができるオープンソースのソフトウェア開発が台頭してきた時期でもありました。そういった背景もあり、Gitを使いやすくするホスティングサービス※として開発者のニーズに応える形で、GitHubは開発されました。
※ホスティングサービスとは、分かりやすくいうと、通信事業者などがウェブサイトやアプリケーションをインターネット上で運営するために必要なサーバーを提供するサービスです。ホスティングサービスがあることによって、自社のサーバーとは別のサーバーにデータを保管できるようになり、保管できる容量が増えたり、データの共有がしやすくなるというメリットがあります。
成長段階:ユーザーの増加と認知度向上
GitHubは2008年に一般向けにローンチされました。開発者のニーズを捉えた使いやすさが評価され、リリース当初からYahoo!や当時のTwitter(現X)など大手企業や組織が導入するなど、着実にユーザーを増やしてきました。
また、2009年から2013年にかけて継続的に関連製品のリリースも行い、FacebookやGoogleを含む世界の名だたるIT企業が利用するようになると一気に認知度が向上していきました。GitHubが公表しているGitHubユーザー数の推移を見ていただくと、そのとんでもない成長スピードがお分かりいただけると思います、、!
GitHubユーザー数の推移(引用:https://github.blog/news-insights/company-news/100-million-developers-and-counting/)
そんな形で成長を続けてきたGitHubは、2023年1月時点でユーザー数、1億人到達が発表されており、今では世界最大のソースコードホスティングサービスとして、開発者の間で広く認識されています。
さらなる成長:Microsoftによる買収
世界中の開発者が利用しているという盤石な顧客基盤と開発者コミュニティとしての価値が高く評価され、GitHubは2018年にMicrosoftに75億ドル(当時の日本円で約8,300億円)で買収されました。この買収は、MicrosoftのCEOによる大型買収の一つで、2016年のLinkedInの262億ドル(当時の日本円で約3兆円)での買収に次ぐ規模でした。GitHubがいかに注目度の高いサービスであるかが感じられますよね。
買収された当初はMicrosoftの他のサービスに統合されてしまうのではないか?とか、Microsoftによる統制が厳しくなるのではないか?と心配する開発者の声も多くありました。しかし、買収後もGitHubは独自の運営を続け、オープンで開発者ファーストなプラットフォームとして成長を続けています。Microsoftの傘下に入ったことで、さらに企業向けの機能が強化されるなど、今後もサービスが拡充していくことが期待されます。
たとえば、近年追加された機能としては、2022年に一般提供が開始された「GitHub Copilot」があります。AIがコーディングを手伝ってくれる機能です。日本企業でも導入が広がっており、サイバーエージェントやNTTデータ、ZOZOなど大手企業が積極的に活用しています。活用方法が確立され、成功事例が増えてくると、さらに導入する企業が増えていきそうですね。
2. GitとGitHubの違い
前述の通り、GitHubはGitというシステムから派生したサービスになります。では、そもそもGitとはどういうものなのでしょうか?機能面におけるGitとGitHubの関連性を解説していきます。
Gitとは?
Gitは、「分散型バージョン管理システム」と呼ばれています。
ソフトウェア開発は複数の開発者がコードを書き換えていくため、誰が、いつ、どのような変更を行ったのかを把握しておく必要があります。Gitを使用し、ソースコードのバージョンを記録しておくことで、変更を加える前の状態に戻すことができるのです。これにより、開発者間で生じるコードのコンフリクトの解決を容易にしたり、バグの原因解析や修正が効率的に行えるというメリットがあります。
「分散型」というのは、一つの作業場所で複数人が作業するのではなく、各自の作業場所が分散されているということです。つまり、各ユーザーが自分のローカル環境でソースコード履歴の管理ができるため、複数の開発者が同時に作業を行うことができます。
まとめると、Gitを使うことで、ソフトウェア開発プロジェクトの進行に伴うコードの変更履歴を管理したり、過去のバージョンに戻ったり、異なる機能の開発を並行して進めたりすることができます。
GitHubとは?
GitHubは、Gitをベースにして、プロジェクトのホスティングや共有、他の開発者とのコミュニティ機能を追加したサービスです。
Gitがローカル環境でのバージョン管理に特化しているのに対し、GitHubはクラウドベースのプラットフォームとして利用できます。チームがインターネットを通じてプロジェクトにアクセスし、共同で作業を行えるということです。
さらに、プラットフォーム上に公開されているソースコードを参照したり、逆に自分のソースコードを公開して評価をもらうこともできます。このようにGitHubは、Gitのソースコード管理機能を使いつつ、開発者同士の交流の場となっている点が特徴的です。
少し古い記事ではありますが、GitとGitHubの違いについてより噛み砕いた表現で説明しています。両者の違いをとにかく端的に知りたいという方はこちらをご覧ください!
3. 類似サービスとの比較
Gitの機能を活用した、GitHubと似たような機能を持つツールは、GitHub以外にもいくつか存在します。ここでは2つのサービスをご紹介します。
Bitbucket
引用:https://bitbucket.org/product/
Bitbucketは、GitHubと同様にGitをベースにしたバージョン管理プラットフォームです。ソフトウェア開発やプロジェクト管理の支援ツールを提供しているAtlassianの製品です。同じくAtlassian製品であるJIRA(タスク管理やバグ追跡のツール)と統合出来る点が強みとなっています。特にアジャイル開発を行うチームにとって、プロジェクト管理ツールとしての価値が高く、課題管理を一元化することができます。
GitLab
引用:https://about.gitlab.com/ja-jp/
GitLabはGitHubと名前は似ていますが、実現できることの方向性が違います。
GitLabは社外とのコラボレーションというよりも、企業や組織が独自の開発環境を構築するのに向いています。DevSecOpsプロセスを取り入れるためのツールとして最適です。
(アイスリーデザインではGitLabの導入支援をしております。導入をご検討の方はぜひご相談ください。)
CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の機能が標準で提供されていたり、プロジェクト管理やセキュリティ機能も統合されているため、オールインワンでソフトウェア開発プロセスを管理することができます。
DevOpsやアジャイル開発についてはこちらの記事で解説しています。
・DevOpsとは?DXが進む企業の約8割が実践!メリットや導入方法を解説
・アジャイル開発とは?メリット・デメリット、他の開発手法との違いを解説
・DevOpsとアジャイル開発の違い:メリット、注意点、導入方法も解説
4. GitHubが多くの人に選ばれる理由
GitHubは1億人以上の開発者に利用されています。それほどまでに多くの人に選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。
オープンソースの支援
GitHubはオープンソースプロジェクトのホスティングに最適なプラットフォームです。開発者は、世界中の他のエンジニアと簡単にコラボレーションができ、自分のプロジェクトを広く公開することで、プロジェクトの協力者を探すことができます。
世界最大の開発者コミュニティ
GitHubの最大の特徴は、世界最大のオープンソースコミュニティを持つことです。開発者は世界中のあらゆるプロジェクトに触れることができ、知識の共有や勉強の機会を得ることができます。また、他の開発者からのフィードバックを通じて、コーディングスキルの向上やキャリアアップにも繋げることができます。
Microsoftの支援
GitHubは現在、Microsoftの傘下にあり、これによりさらに多くの機能開発が進められています。Microsoftの支援により、GitHubの信頼性や機能が強化されていることも、さらなるユーザー数の増加につながっています。具体的には、GitHub Copilotの提供や、Microsoft Azureとの連携強化などが買収後に実現されてきました。
5. GitHubの料金プラン
GitHubには無料プランと有料プランが用意されています。無料でも基本的な機能を利用することができますが、有料版にするとチームでの利用や大規模なプロジェクトでの利用がしやすくなります。(キャンペーン料金が適用されている期間もあるため、導入時には公式ページをご確認ください。)
無料プラン(Free)
Freeプランは、個人や小規模なプロジェクトに最適です。プライベートリポジトリ(いわゆるアクセスが制限されたデータの保管場所)が無制限に利用でき、オープンソースプロジェクトにも適しています。また、基本的なCI/CD機能も含まれており、開発環境の構築を迅速に行えます。
※2020年4月の料金見直しにより、多くの機能が無料で使えるようになりました。まずは小規模なコード開発から始めたいという方には、無料プランがおすすめです。
有料プラン(Team、Enterprise)
GitHubの有料プランは、TeamとEnterpriseの2種類用意されています。チームでの利用や大規模な開発に便利な機能が、Freeプランに追加されている形です。
Teamプランはコード変更を承認する際のレビューを必須とすることができたり、特定の作業を行うメンバーを設定できる点などチームとしての利用に便利です。
Enterpriseプランはさらにセキュリティ面を強化する機能が盛り込まれており、大規模なプロジェクトでの利用に向いています。
料金プラン(引用:https://github.co.jp/pricing.html)
6. 知っておくべきGitHub用語
GitHubに関する用語をいくつかご紹介します。これを知っておくとGitHubをスムーズに使い始めることができるはずです。
「リポジトリ」
リポジトリとは、プロジェクトのデータが保管される場所です。コードやドキュメント、リソースなど、プロジェクトに関連するすべてのファイルがここに保存されます。また、リポジトリには、コミット履歴や変更履歴も含まれており、プロジェクトの進捗を追跡できます。
リポジトリは、自分のPCのローカル環境にデータを保管する「ローカルリポジトリ」と、オンライン上にデータを保管する「リモートリポジトリ」の2種類があります。
「フォーク」
フォークは、他のリポジトリのコピーを作成し、自分のプロジェクトとして編集できる機能です。これにより、元のプロジェクトに影響を与えずに、自分のアイデアや改良を試すことができます。また、フォークしたプロジェクトを他のユーザーと共有し、コラボレーションを進めることも可能です。
「プルリクエスト」
プルリクエストは、コードの変更を提案し、他の開発者にレビューしてもらうためのプロセスです。これにより、コードの品質を保ちながら、複数の開発者が効率的にコラボレーションできます。また、プルリクエストを通じて、チーム全体でのコードレビュー文化を育むことができます。
「コミットとプッシュ」
コミットは、ローカルリポジトリで行った変更を記録する操作です。各コミットには、変更内容の説明や作成者、タイムスタンプなどの情報が含まれます。プッシュは、ローカルリポジトリで行ったコミットをリモートリポジトリに送信する操作です。これにより、自分の変更を他の開発者と共有したり、オンライン上にバックアップを作成したりすることができます。
7. GitHubの始め方
Step1:アカウントの作成
GitHubの使用を開始するには、まずアカウントを作成します。GitHub公式サイトにアクセスし、基本的な情報を入力するだけで簡単にサインアップできます。無料プランから始めることができ、必要に応じて後から有料プランにアップグレードすることも可能です。
Step2:リポジトリの作成
アカウントの作成が完了すると、以下のようなダッシュボードが表示されます。
「Create a new repository」をクリックして、リポジトリを作成してみましょう。リポジトリは、プロジェクトの中心となる場所です。リポジトリの名前や説明を設定し、必要に応じてプライベートリポジトリにすることもできます。
リポジトリの作成が完了すると以下のような画面になります。作成後は、プロジェクトのファイルをアップロードしたり、Gitを使ってローカルのリポジトリと同期させたりすることが可能です。
step3:最初のコミットとプルリクエスト
リポジトリが作成されたら、最初のコミットを行いましょう。これは、コードやドキュメントをリポジトリに追加する最初のステップです。コミットを行うことで、プロジェクトの進捗が記録され、他の開発者と共有することができます。その後、プルリクエストを作成して、他のメンバーにコードの変更を提案し、フィードバックを得ることができます。
さいごに
ある程度の規模感のあるソフトウェア開発を行う上で必要なバージョン管理ツール。中でもGitHubは数多くの開発者に選ばれている人気のツールです。
新たな機能が追加されれば、今後ますます注目が高まっていくでしょう。もしまだGitHubを使ったことがないという方は、この機会にぜひ導入を検討してみてください。
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