自社の業務要件に完全に合うシステムを作りたいけれど、パッケージ製品では機能が足りない…。そんな課題に直面したとき、選択肢の一つとなるのがスクラッチ開発です。
しかし、いざ検討を始めると、「費用はどれくらいかかるのか」「パッケージ開発やノーコード・ローコード開発とどう違うのか」「本当に自社に適した選択なのか」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、スクラッチ開発の定義から他の開発手法との違い、メリット・デメリット、費用相場まで解説します。他の手法との比較を通じて、自社に最適な選択肢を見極めていきましょう。
スクラッチ開発とは
アプリ開発を検討する際、「スクラッチ開発」という言葉を耳にする機会も多いでしょう。しかし、他の開発手法との違いを正確に把握しておかないと、最適な手法の選定が難しくなります。
ここでは、スクラッチ開発の定義を確認したうえで、パッケージ開発やノーコード・ローコード開発との違いを整理します。
アプリ開発の基礎知識や開発手法の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
スクラッチ開発の意味と定義
スクラッチ開発とは、既存のソフトウェアやテンプレートに依存せず、ゼロから新規にシステムを構築する開発手法です。
「scratch(スクラッチ)」は英語で「ひっかく」を意味し、スタートラインを引く動作に由来しています。「from scratch」が「最初から」「ゼロから」という意味を持つように、自社の固有要件に合わせて仕様・機能・デザインをすべて自由に設計・実装できる点が特徴です。
独自の業務フローに完全適合したシステムや、業界特有のニーズに柔軟対応する必要があるアプリ開発では、スクラッチ開発が候補に挙がります。
フルスクラッチ開発との違い
「フルスクラッチ開発」は、フレームワークやライブラリも一切使わず、すべてをゼロから開発する完全な独自構築を指します。
一般的な「スクラッチ開発」では、既存のフレームワークを活用しながらゼロベースで構築するケースも含まれます。ただし実務上は両者の区別が曖昧で、ほぼ同義として扱われることも少なくありません。
パッケージ開発との違い
パッケージ開発が「既製服」ならスクラッチ開発は「オーダーメイド」と例えられます。
パッケージ開発は、あらかじめ用意された機能を組み合わせてシステムを構築する手法です。短期間・低コストで導入できる反面、カスタマイズは画面デザインや設定変更の範囲などに限定されます。
スクラッチ開発は、自社固有の業務フローを再現できる自由度を持ち、パッケージの枠を超えた独自仕様にも柔軟に対応できます。
両者の違いは以下のとおりです。
| パッケージ開発 | スクラッチ開発 | |
|---|---|---|
| 自由度 | 製品仕様内に制限 | 要件に応じて自由 |
| 開発期間 | 短期 | 長期 |
| コスト | 低〜中 | 高 |
| 独自要件対応 | 困難 | 容易 |
競合との差別化や、既存業務に完全適合したシステムが必要な場合は、スクラッチ開発が選択肢にあがるでしょう。
ノーコード・ローコード開発との違い
ノーコード・ローコード開発は、プログラミング知識がなくてもGUI操作だけでアプリを作れる手法です。
短期間で導入できる反面、提供される機能の範囲内でしか開発できません。ローコードはソースコードを部分的に記述できますが、それでもパッケージの仕様に縛られます。
ノーコード・ローコード開発の主な制約は以下のとおりです。
- 複雑なビジネスロジックの実装が困難
- 外部システムとの高度な連携に制限
- プラットフォーム依存によるベンダーロックのリスク
スクラッチ開発では、独自のアルゴリズムや複雑なデータ処理を実装できます。その他にも、AIチャットボットや大規模な基幹システムなど、ノーコード・ローコードでは実現が難しい高度な要件にも対応できます。
ノーコード・ローコード開発を検討する際の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
【比較表】4つの開発手法の違い
4つの開発手法の主な違いを、費用・期間・カスタマイズ性・開発難易度・保守運用の観点から整理します。
| 比較項目 | スクラッチ開発 | パッケージ開発 | ノーコード開発 | ローコード開発 |
|---|---|---|---|---|
| 費用 | 高 | 中 | 低 | 低〜中 |
| 開発期間 | 長 | 中 | 短 | 短〜中 |
| カスタマイズ性 | 高 | 低 | 低 | 中 |
| 開発難易度 | 高 | 中 | 低 | 低 |
| 保守運用 | 専門知識必須 | ベンダー依存 | 容易 | 比較的容易 |
スクラッチ開発は初期投資が大きい分、自社要件に完全適合したシステムを構築できます。ノーコード・ローコード開発は導入ハードルが低く、素早く立ち上げられる点が魅力です。パッケージ開発はその中間に位置します。
予算・納期・要件の複雑さを総合的に判断して、最適な手法を選択する必要があります。
スクラッチ開発のメリット

スクラッチ開発には、他の開発手法にはない独自の強みがあります。高コストというイメージが先行しがちですが、長期的に見れば投資に見合う価値を生み出せるケースも少なくありません。
ここでは、スクラッチ開発を取り入れる4つのメリットを解説します。
開発の自由度が高い
スクラッチ開発の最大のメリットは、既製品の制約がなく、思い描いた仕様をそのまま実現できることです。
パッケージ開発やノーコード・ローコード開発では「この機能は搭載されていない」「画面遷移を変更できない」といった制限に直面しがちです。しかし、スクラッチ開発であれば、自社独自の業務フローに適合した画面設計や競合との差別化を実現する細かな機能まで、すべてゼロから設計できます。
柔軟に対応できる要件の例は以下のとおりです。
- 複雑な承認ルートや独自の計算ロジックの組み込み
- 特定の業界や業務に特化したユニークな機能の実装
- 将来的な事業拡大を見据えた拡張性の高い設計
顧客の細かなニーズを一つひとつ機能化できるため、「本当に欲しかった」システムを構築できます。長期的に使い続けるシステムであれば、この自由度が競争力につながるでしょう。
独自性の高いシステムを構築できる
スクラッチ開発であれば、競合他社にはないユニークな機能を自由に搭載でき、市場での差別化を実現しやすくなります。
また、自社ブランドの世界観を反映したUX/UIデザインも自在に実現できます。ECサイトであれば、独自の推薦アルゴリズムやブランドイメージに合わせた画面設計によって、顧客体験を向上させられるでしょう。
自社独自のビジネスロジックをシステムに組み込めるため、他社が簡単に模倣できない競争優位性を確立できます。
パフォーマンスや仕様を最適化しやすい
スクラッチ開発であれば、想定される利用状況に応じてシステムのパフォーマンスを細かく調整できます。
パッケージ開発は汎用性を重視するため、自社では使わない機能も多数搭載されてしまい、システムが重くなりがちです。一方、スクラッチ開発であれば、必要な処理だけに絞った設計ができます。
実現できる最適化の例は以下のとおりです。
- 想定されるアクセス数や取引量に応じたサーバーリソースの配分
- 特定のOSやデバイスに特化した動作環境の構築
- 大量データ処理に適したデータベース設計
特に、金融システムのような大量データ処理やリアルタイム処理が求められる分野では、こうした最適化がアプリの成否を左右することもあるでしょう。
長期的な競争優位性を確保できる
スクラッチ開発で構築したシステムは、市場環境の変化に素早く対応でき、長期的な競争力を維持しやすくなります。
パッケージ製品はベンダーのアップデート方針に依存するため、自社が必要とする機能追加のタイミングをコントロールできません。一方、スクラッチ開発であれば事業戦略の変更に合わせて、必要な機能を必要なタイミングで追加できます。
また、システムの根幹部分を自社で保有できるため、技術的なノウハウが社内に蓄積されます。5年後・10年後を見据えたとき、自社の成長に合わせて進化し続けられるシステムは、価値ある財産になります。
スクラッチ開発のデメリット

スクラッチ開発には多くのメリットがある反面、注意すべきデメリットも存在します。
ここでは、スクラッチ開発を検討する際に押さえておくべき4つの課題について解説します。
開発コストが高くなりやすい
スクラッチ開発はゼロからシステムを構築するため、パッケージ開発と比較してコストが高額になります。
主な要因は人件費です。エンジニア1人あたりの月額単価は、初級で60万〜120万円程度、中級で100万〜180万円程度、上級になると160万〜300万円程度が一般的な相場とされています。開発期間が数ヶ月から1年以上に及ぶケースも多く、初期費用だけで数千万円規模になることも珍しくありません。
また、要件が複雑な場合や、開発途中で仕様変更が発生すると、追加コストが膨らみやすい点に注意が必要です。
稼働後も保守費用や追加開発費用が発生するため、運用段階でのコスト計画も必要です。
開発期間が長期化しやすい
スクラッチ開発では、要件定義から設計、開発、テストまですべての工程をゼロから進める必要があるため、開発期間が長期化しやすくなります。
要件定義フェーズでは、業務要件の整理や仕様の確定に想定以上の時間を要するケースが多い傾向があります。
アプリ開発における要件定義について、以下の記事で詳しく解説しています。
また、開発途中で仕様変更が発生すると、手戻りによってスケジュールが大幅に遅れるリスクが高まります。重大な仕様変更があったプロジェクトの57.1%で工期が大幅に遅延したという調査結果もあります。
参照:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「ソフトウェアメトリックス調査2020システム開発・保守調査」
スクラッチ開発を行う際は、余裕を持ったスケジュール設計と、仕様変更を最小限に抑える精度の高い要件定義が求められます。
高度な技術力やリソースが必要になる
スクラッチ開発を実現するには、高度な専門知識と豊富なリソースが欠かせません。
プログラミング言語、フレームワーク、データベース技術といった幅広い技術領域に精通した人材が必要です。フロントエンド、バックエンド、セキュリティなど、各領域のエキスパートを揃えましょう。
また、技術力だけでは不十分です。業務知識やヒアリング力、分析力といったコンサルティングスキル、プロジェクト全体を統括するマネジメント能力も求められます。
こうした多様な専門人材を社内で確保できるかどうかが、内製化と外部委託の判断基準になります。要件定義の段階から、開発側と運営側が同じ完成イメージを共有できる体制を構築することがプロジェクト成功のポイントとなります。
保守・運用にも専門知識が求められる
スクラッチ開発では、システムをリリースした後も継続的な保守・運用が必要です。
バグ修正やセキュリティアップデート、機能追加といった対応が求められます。保守運用費用は年間で開発費の15〜20%程度が相場とされており、1,000万円で開発したシステムであれば年間150〜200万円のコストが発生します。
課題となるのが、システムを理解し適切に保守できる専門人材の確保です。開発時のエンジニアが離れてしまうと、保守コストがさらに高騰するリスクもあります。
長期的な運用を見据えるのであれば、保守体制の構築や技術継承の仕組みまで、初期段階から計画しておく必要があります。
アイスリーデザインでは、アプリ開発の発注を検討している方向けに、要件定義・予算・ベンダー選定に活用できる資料を無料で公開しています。
アプリ開発で成功・失敗するポイントや、発注前に準備しておくべき5つの要素を解説。発注前のチェックリスト(全30項目)も掲載していますので、ぜひご活用ください。
スクラッチ開発に向いているケース

スクラッチ開発は高い自由度とコストが特徴ですが、すべてのプロジェクトに適しているわけではありません。
ここでは、スクラッチ開発が特に適しているケースについて解説します。
独自要件や複雑な業務フローを持つシステム
標準的なパッケージソフトウェアは、多くの企業で共通する業務プロセスを前提に設計されています。そのため、自社独自の業務ルールや複雑なワークフローを持つ場合、パッケージでは対応しきれません。
スクラッチ開発が適しているのは以下のような場合です。
- 業界特有の複雑な承認フローや独自ルールがある
- 既存の業務プロセスを変えずにシステム化したい
- パッケージのカスタマイズ範囲を超える改修が必要
スクラッチ開発であれば、既存の業務フローを無理にシステムに合わせる必要がありません。システム側を業務に最適化できるため、現場の生産性を最大限に引き出せるでしょう。
既存のパッケージでは対応できないアプリ・サービス
既存のパッケージアプリやサービスは、一般的な業務フローを想定して設計されています。そのため、独自性の高いユーザー体験や競合との明確な差別化を実現したい場合、パッケージの機能だけでは限界があります。
特定のターゲット層に特化した高度なカスタマイズや、市場にない新しい機能を実装したい場合、スクラッチ開発が最適な選択肢となるでしょう。
長期運用を前提とした中規模〜大規模システム
将来的な事業拡大や仕様変更を見据える場合も、スクラッチ開発が適しています。
スクラッチ開発には以下のような長期運用上のメリットがあります。
- 事業成長に合わせた機能追加や改修が柔軟に行える
- 自社で保守・運用体制を構築しやすく、外部依存を減らせる
- システムの仕様を完全に把握できるため、トラブル対応が迅速化する
パッケージ開発では、ライセンス更新費用やカスタマイズ制約といった長期的なコストも発生します。これらを踏まえたTCO(総所有コスト)を踏まえると、スクラッチ開発のコストに見合う価値があるといえるでしょう。
スクラッチ開発の進め方

スクラッチ開発を実際に進める際には、要件定義から保守運用まで、明確な流れに沿って進めることがポイントです。
ここでは、スクラッチ開発の主要な5つの段階について解説します。
アプリ開発の基本的な流れや開発手法の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
要件定義
要件定義は、スクラッチ開発の成否を左右する最も重要なフェーズです。
「何を作るのか」を言語化し、開発チームと認識を共有します。曖昧なまま進めると、コスト増加や納期遅延、品質低下を招くリスクがあるため、時間をかけて丁寧に整理しましょう。
要件定義で明確にする内容は主に以下の3つです。
- 業務要件:システムで実現したい業務目的や課題
- 機能要件:具体的な機能や処理内容
- 非機能要件:セキュリティや保守性、拡張性など
精度を高めるには、ターゲットユーザーや解決すべき課題を具体的に洗い出し、関係者へのヒアリングを重ねる必要があります。要件を文書化して共有することで、追加要求による予算オーバーや手戻りを防げます。
要件定義を効率化し、関係者間の認識を統一する手法については、以下の記事で詳しく解説しています。
設計
要件定義で明確にした内容をもとに、システムの構造や機能を決めていくのが設計フェーズです。
設計は「基本設計(外部設計)」と「詳細設計(内部設計)」の2段階に分かれます。
基本設計では、システム全体のアーキテクチャやデータベース構造、UX/UI設計など、利用者から見える部分を中心に設計します。一方、詳細設計では、内部の処理ロジックやデータの物理構造、使用する言語やフレームワークの選定など、開発者が実装するための詳細仕様を定義します。
この段階で作成される主なアウトプットは以下のとおりです。
- 基本設計書・詳細設計書
- 画面設計書・画面遷移図
- データベース設計書(ER図など)
- システム構成図
設計段階では、開発チームと発注者の間で仕様の認識を揃えることが重要です。ここでの認識のズレが、後工程での手戻りやコスト増を招く原因になります。
開発
設計書をもとに、実際のコーディングを行うのが開発フェーズです。
プロジェクトの要件に応じてプログラミング言語を選定します。iOS向けならSwift、AndroidならKotlinやJava、クロスプラットフォームならFlutterやReact Nativeといった形です。
開発中は、進捗管理やコードレビューを通じて品質を担保していきます。複数のエンジニアが並行して作業するため、定期的なレビューやバージョン管理ツールの活用が求められます。
FlutterとReact Nativeの違いや選定ポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
テスト
開発フェーズが完了したら、テスト工程でシステムが要件通りに動作するか、バグがないかを確認します。
テストは複数の段階に分かれており、それぞれで確認する範囲が異なります。
- 単体テスト:個々の機能が正しく動作するかを検証
- 結合テスト:複数の機能を組み合わせた際の連携動作を確認
- 総合テスト:アプリ全体が仕様書の要件を満たしているかチェック
- 受入テスト:実際の利用者による最終確認で実用性を検証
不具合が見つかった場合は、原因となった工程まで戻って修正し、再度テストを実施します。この確認工程を丁寧に行うかどうかが、長期的な運用の安定性を左右します。
リリース・保守運用
アプリが完成したら、ストアへの申請と公開を行います。
App StoreやGoogle Playのガイドラインを遵守しているか最終確認が必要です。不完全な機能やクラッシュがあると審査で却下される恐れがあるため、事前に動作をしっかりチェックしておきましょう。
公開後は保守運用フェーズに入ります。主な業務内容は以下のとおりです。
- OSバージョンアップへの対応
- 障害発生時の緊急対応
- セキュリティパッチの適用
- 仕様変更や機能追加の開発
運用・保守コストは開発費用の15〜20%が年間の目安とされ、規模によっては年間150万〜300万円以上かかることもあります。
スクラッチ開発の費用と期間を左右する要因
スクラッチ開発を検討する際、最も気になるのが「どれくらいの費用と期間がかかるのか」という点でしょう。コストやスケジュールは、プロジェクトの内容や進め方によって大きく変動します。
ここでは、費用と期間に影響を与える要因を整理します。
費用に影響する主な要素
スクラッチ開発の費用を決める要素は、大きく分けて3つあります。
1つ目は機能要件です。開発する機能の数や複雑さ、独自性が高いほど、設計・実装に必要な工数が増えてコストが上昇します。
2つ目はデザイン・ユーザビリティ要件です。UX/UIデザインにこだわると、デザイン費用だけで数百万円かかるケースもあります。全体予算の15〜25%をデザインが占めることも珍しくありません。
3つ目は外部連携・データ要件です。既存システムとのAPI連携やデータ移行が必要な場合、仕様調整やテスト工程が増え、費用が膨らみやすくなります。
開発費用の内訳や見積もりの見方については、以下の記事で詳しく解説しています。
見落としやすい保守運用コスト
初期開発費だけに目を向けがちですが、リリース後の保守運用コストも無視できません。
サーバー費用、セキュリティ更新、機能改修といった継続的な対応が必要で、年間で開発費の15〜20%程度が相場です。長期的な予算計画を立てる際は、この運用コストも必ず見込んでおきましょう。
開発期間が変動する主な要素
スクラッチ開発の期間を左右する最大の要因は、要件定義の精度です。
要件が曖昧なままプロジェクトを始めると、開発途中での仕様変更が頻発し、手戻りが発生してスケジュールが大きく遅延します。
次に影響するのが開発手法の選択です。アジャイル開発では短いサイクルで進めるため期間を短縮しやすくなりますが、ウォーターフォール開発は工程を順次進めるため長期化しやすいでしょう。
また、開発チームの体制も影響します。
- チームの規模や経験値
- メンバー間のコミュニケーションの質
- 使用する技術やフレームワークへの習熟度
これらが不十分だとプロジェクトの進行速度が落ちます。現実的なスケジュールを立てるには、要件定義に十分な時間を確保し、開発体制を慎重に整える必要があります。
工程ごとの期間目安やスケジュール管理のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
スクラッチ開発を成功させるポイント

スクラッチ開発を成功に導くには、計画段階から意識すべき事項がいくつかあります。準備や体制づくりを誤ると、コストの膨張やプロジェクトの遅延につながります。
ここでは、4つの観点から実践的な工夫を解説します。
要件や目的を初期段階で明確にする
スクラッチ開発を成功させるには、プロジェクトの初期段階で「なぜ開発するのか」「何を実現したいのか」を明確にする必要があります。
曖昧な要件定義のまま開発を進めると、後工程での大幅な手戻りやコスト増大を招くリスクが高まります。
要件を整理する際は、ビジネス要件とシステム要件の両面から検討しておきましょう。
- ビジネス要件:業務プロセスの改善目標や競争優位性の確保など、経営視点での目的
- システム要件:具体的な機能や性能、操作性など、技術的な内容
この際、必須要件と希望要件を明確に分けるのがおすすめです。優先順位を可視化することで、本当に必要な機能に集中できます。
予算と開発期間に余裕を持たせる
スクラッチ開発では、予算と期間に余裕を持たせることがポイントです。
想定外のコスト増加や開発期間の延長は、スクラッチ開発において珍しくありません。要件定義の段階では見えなかった技術的課題が浮上したり、仕様変更が必要になったりするケースが多いためです。
余裕を持たせることで得られるメリットは以下のとおりです。
- 品質を担保する時間が確保でき、テストやレビューを十分に実施できる
- 仕様変更や追加要件にも柔軟に対応でき、プロジェクトの成功確率が高まる
- 開発チームが無理なスケジュールで疲弊せず、持続的に高いパフォーマンスを発揮できる
見積もり費用の一部を予備費として確保し、開発期間も同様に余裕を見ておくと安心です。
将来的な拡張性・保守性を考慮する
スクラッチ開発では、開発直後だけでなく5年後、10年後も見据えた設計が求められます。
ビジネス環境の変化に応じた機能追加や仕様変更が必要になるケースも多く、その際に柔軟に対応できるかどうかがシステムの寿命を大きく左右します。
拡張性と保守性を高めるには、以下のような点を意識しておきましょう。
- モジュール化された設計で、機能追加時の影響範囲を限定する
- 統一されたコーディング規約を守り、誰でも理解しやすいコードにする
- 仕様書やドキュメントを整備し、担当者の変更にも対応できるようにする
- 技術選定では、コミュニティの活発さやサポート体制も確認する
開発体制や外注先選定を慎重に行う
スクラッチ開発の成否は、開発体制の選択と外注先の見極めで大きく左右されます。
開発体制には主に3つの選択肢があり、それぞれ特徴が異なります。
| 体制 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 内製 | 情報漏洩リスクが低く、社内にノウハウが蓄積できる | 人材確保や育成に時間とコストがかかる |
| 外注 | 専門スキルを活用でき、開発期間やコストを抑えられる | コミュニケーションコストが増加しやすい |
| ハイブリッド | 内製と外注の強みを両立できる | 役割分担の明確化が必要 |
外注先を選ぶ際は、以下の点を確認しておきましょう。
- 類似アプリの開発実績がホームページや資料で確認できるか
- 専門資格保有者数やポートフォリオの多様性があるか
- 自社メディアの更新頻度から技術力や情報発信力が読み取れるか
契約時は、作業範囲・責任分担・検収方法・著作権の帰属を明記する必要があります。
開発会社の選び方や外注時のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
スクラッチ開発に関するよくある質問
スクラッチ開発の検討を進める中で、判断に迷う点や不安に感じる点が出てくることもあるでしょう。
ここでは、よくある上記の質問にお答えします。
スクラッチ開発か他の手法か迷ったときの判断基準は?
スクラッチ開発を選ぶべきか判断に迷ったら、以下の3つの軸で整理してみましょう。
| 判断軸 | スクラッチが適するケース | 他の手法が適するケース |
|---|---|---|
| 独自性・競争優位性 | 差別化が事業の成否を分ける | 標準機能で十分対応できる |
| 要件の複雑さ | パッケージでは制約が多い | 業界標準の業務フローに近い |
| 予算・期間・運用体制 | 長期運用を前提に投資できる | 短期間・低コストで導入したい |
これらの要素を総合的に評価し、自社のビジネス戦略と照らし合わせて判断する必要があります。
スクラッチ開発のデメリットを軽減する方法は?
スクラッチ開発の「高コスト」「長期化」といったデメリットは、計画段階での工夫で大きく軽減できます。
効果的な方法の一つが、MVP(Minimum Viable Product)開発の採用です。最小限の機能に絞ってリリースし、ユーザーの反応を見ながら段階的に機能追加することで、無駄な開発を排除できます。
また、要件定義の精度向上も重要です。ユーザーペルソナやジャーニーマップを作成し、本当に必要な機能を見極めることで、開発期間の無駄を省けます。
MVP開発の進め方やプロトタイプ作成のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
スクラッチ開発の著作権は誰に帰属する?
スクラッチ開発で制作されたシステムの著作権は、原則として開発を実際に行った「開発者側」に帰属します。
外部に委託した場合、契約で特別な取り決めをしない限り、著作権は開発会社やエンジニアに残り続けます。
ただし、契約書に著作権譲渡条項を盛り込むことで、発注者側に権利を移転させることも可能です。契約時には以下の点を確認しておきましょう。
- 著作権の譲渡または利用許諾の範囲が明記されているか
- ソースコードの改変権や二次利用権の扱いはどうなっているか
- 著作者人格権の不行使条項が含まれているか
注意したいのが、著作者人格権は譲渡できない一身専属の権利という点です。将来的な改変やリブランディングを見据えるのであれば、「著作者人格権を行使しない」という条項を契約書に盛り込んでおく必要があります。
まとめ
スクラッチ開発は高い自由度と独自性を実現できる反面、コストや期間の課題も抱えています。
最終的な判断では、自社の事業戦略における優先順位を見極める必要があります。独自性や競争優位性が事業成長を左右するのであれば、初期投資は高くても長期的なリターンを見込めます。
一方、標準的な業務効率化が目的であれば、パッケージ開発やノーコード・ローコード開発で十分な効果を得られるでしょう。
開発手法の選択に正解はありません。予算・期間・要件の3つの軸で評価し、自社のビジネスゴールに最も近づける選択をしてください。
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