2017年9月12日

テクノロジー

プロジェクト始動前に考えましょう!顧客体験の改善への4つの方針

N.Ohnaga

近年、IoTやAI、クラウドコンピューティング、ドローンなどあらゆるテクノロジーが顧客の行動に影響をもたらし、市場での競争のルールを変えています。そしてこのような技術革新を背景として、産業と産業の間にあった垣根は徐々になくなってきています。その結果、これまでとは全く違う価値を持つサービスが次々に生み出され、私たちはその様々なサービスを手軽に利用できるようになりました。
 
このような市場での競争のルールの変化は、顧客の期待・ニーズ自体が大きく変化してきているためだと言えるでしょう。サービスをつくり出す側の企業としては、変化が早く、非常に厳しい時代となったとも言えます。日々生まれる新しいルールに対応し、生き残っていくためには、顧客の期待を超えるような体験を提供していかなければなりません。
 
では、どうすればそのような顧客体験が提供できるようになるのでしょうか。今回は、サービスの方向性を決める4つの方針を、戦略キャンバスを使用しながらご紹介していきます。
 
 
まず、縦軸に[短期]と[中長期]という「時間軸」を置き、横軸に[既存の体験]と[新しい体験]という「体験軸」を置きます。この2軸を使って顧客経験を分類することで、大きなアプローチの型が4つできました。(図1)。

この図にある、<強化型> <最適化型> <追加・削除型> <再構築型>のそれぞれの方針について、一つ一つご説明していきます。
 
 

<強化型>

左下の象限にあたる『強化型』の方針は短期に結果を出すために有効です。うまくいっている顧客接点、体験を見つけ、そこに集中的に投資、強化するという方法です。
例えば、靴のオンライン小売業ザッポス(http://www.zappos.com)は顧客との接点、それも電話での顧客とのコンタクトをとても大切にしている企業として有名です。

通常のコールセンターでは「売上」や「平均処理時間」がオペレーター評価の指標となることが一般的です。しかし、ザッポスではそれらを重要視していません。それどころか顧客満足のためなら何時間でも応対することが奨励されています。さらに、「返品」「返金処理」「特別な配送手配」「クーポン発行」に至るまでを、それぞれのコールセンター社員の判断に一任しています。これらの取り組みによって、他社のコールセンターを圧倒する顧客経験を生み出しているのです。
 

<最適化型>

サービスの全体を俯瞰し、うまく行っている部分とそうでない部分のバランスをとりながら、ベストなカタチに整えていく。これが『最適化型』の方針です。
少し時間はかかりますが、これまで積み上げてきたプロセスを大きく変えることなく、最適な形に整えていくことができます。
 

<追加・削除型>

新しい体験を追加したり、既存のプロセスを削除することで全く新しい体験に創りかえるアプローチが、『追加・削除型』の方針です(図2)。

例えば、AMAZON Dash Button の出現によって、ユーザーは「いつもの」消耗品の残量がなくなったその瞬間に、スマホを使わずに追加の注文ができるようになりました。一方、NewsPicksはスマホのニュースアプリという既存の枠組みを超えて、「NewsPicksアカデミア」というオフラインのイベント体験を追加し、非常に熱心なファンを獲得することに成功しています。


 

<再構築型>

顧客体験を根本的に再設計する方針です。ここでは、既存の競争軸を見直し、まったく新しいサービスコンセプトを生み出すことを目標にします。ある調査では「企業経営者の80%は『自社のプロダクトが極めて差別化されている』と回答しているにもかかわらず、そのように受け止めている消費者は8%にすぎない」というデータも出ています。つまり、企業が思っているほど消費者は競合するプロダクトやサービスの違いをわかっていない、ということなのです。
この『再構築型』の方針でサービスのありようを考えていくときには、業界の競争軸の延長で顧客体験を考えるのではなく、”強制発想”的に体験を構想するアプローチが有効です。
 例えば、逆張りの発想で考えてみるのはいかがでしょう。競合各社が差別化のために様々な努力をしていますが、一歩引いて業界のパターンを俯瞰して捉え直すと各社同じポイントで競争しているといったことがよくあります(図3)。

『各社が努力している領域では自社ではあえて競争をやめた上で、各社が注力していない領域で差別化する』といった、いわゆる逆張りの発想で、これまでとはまったく違う体験を考えてはどうでしょう。たとえば、1000円カットの「QBハウス」、立ち食いフレンチで有名な「俺のフレンチ」などはこれまで業界が努力していた領域での競争をやめることで、まったく新しい価値づくりに成功している企業です。
 
以上が4つの方針でした。サービスを見直すフェーズに入る際には、『どの方針が自社の課題解決に適切か』を最初に考えた上でスタートすると、ゴールや取り組む範囲が見えやすくなります。またこのパターンにそって他業界の優れたサービスを分析してみると、自社サービスにとって有効なヒントが得られるかもしれません。ぜひ、この<強化型> <最適化型> <追加・削除型> <再構築型>の方針を参考にしてみてください。
 
 
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i3DESIGN(アイスリーデザイン)は渋谷とウクライナに拠点を構えるIT企業です。

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Nobuyuki Ohnaga

N.Ohnaga

株式会社アイスリーデザイン取締役、株式会社bridge代表、サービスデザイナー。日本にペルソナを導入した先駆的企業であるmct社のコンサルタントとして人間中心イノベーション手法を活用した商品開発、サービスコンセプトの構築、イノベーション人材育成といったプロジェクトをリード。2017年1月bridge.Incを設立。多様な業種、組織の200を超えるデザインプロジェクトの実践経験をノウハウとして体系化し、スタートアップや中小企業のイノベーションを支援する。2017年8月より株式会社アイスリーデザインに役員として参画。

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