「なんで会社の業務システムって、こんなに使いにくいんだろう?」 皆さんも一度は思ったこと、ありませんか? 毎日使うツールだからこそ、使い勝手は生産性に直結するはず。でも、「仕事で使うから仕方ない」と諦められがちですよね。
そんな課題に、私たちアイスリーデザインのデザインチームが真正面から向き合った書籍『現場のあるあるから学んだ今すぐ使えるUIデザイン41の法則』が2025年7月に出版されました。
本書はただの理論書ではありません。100件以上のデザイン・開発実績を持つ弊社のデザインチームが、実際の現場で直面した「あるある」を元に導き出した、超実践的なガイドブックになっています。
今回は、主要制作メンバーの佐々木さん、直原さん、岩本さん、大林さんの4名にインタビューを実施。一冊の本が生まれるまでの、外からは見えない苦労や知られざる制作秘話、その背景にある“使いやすいデザイン”の本質に迫ります。
noteでの3,000を超える「スキ」がすべての始まり

——まずは、書籍化おめでとうございます! そもそも、どんなきっかけでこの本は生まれたんでしょうか?
佐々木:
きっかけは、数年前にチームで始めたnoteの連載「ユーザビリティチェックリスト」です。

もともとは一冊の本として構想されたものではなく、社内のナレッジ共有という地道な活動でした。チームが自らに課したトレーニングから生まれたものだったんです。
当時、チーム内でもまだデザインの知識が体系化されていなくて。「暗黙知になりがちな現場の知識をまとめよう」「なぜこのデザインが良いのかを、感覚じゃなくて言葉で説明できるようになろう」という、まさに“言語化トレーニング”としてスタートしました。
——最初は社内向けの施策だったんですね。
佐々木:
「ナレッジを共有して、デザインの良し悪しをちゃんと言語化するトレーニングが必要だよね」って。毎月苦しみながら(笑)社内に向けて記事を書いてたんだけど、「どうせやるなら社外にも公開しちゃおう!」って採用広報的な意味合いも込めてnoteで発信し始めたのが最初でした。
それがまさか、大きな反響をいただくことになって。そこから翔泳社の編集者の方の目に留まって、「書籍化しませんか?」と声をかけていただいたんです。その後も記事は多くの方に読んでいただき、おかげさまで現在(2025年12月時点)では180,000以上のビュー、3,200スキを超えるほどのコンテンツに育ちました。
妥協なき制作秘話と“本当に使える一冊”へのこだわり

——そこから書籍化が進んでいくわけですが、制作はかなり大変だったと聞いています…。
大林:
いやあ、本当に大変でした。 実は当初、プロのライターさんに取材をもとにまとめていただいた原稿があったんです。第三者視点でとても読みやすく整理していただいていたのですが、いざそれを前にしたときに、逆に自分たちの中で火がついてしまって。
「単なる監修で終わらせるんじゃなくて、自分たちのこだわりを隅々まで反映させた一冊にしたいよね」
そう話し合ううちに、「私たちアイスリーデザインが出版する意味をもっと強く出したい」という想いがどうしても勝ってしまったんです。 結果、ライターさんには申し訳ないと思いつつも、ほぼ全ての原稿に手を加えることに決めました。今思うと、あえて茨の道を選ぶような、かなり過酷な決断でしたね。
——まさに妥協なしですね。メンバー同士での議論も白熱したとか?
直原:
ですね。「41の法則」を絞り込むときは、特に白熱しました。 「この表現だとユーザーが受け身すぎる」「制作者視点が強すぎるんじゃないか」って、お互いにバチバチに意見をぶつけ合って。でも、誰も妥協しなかったからこそ、一つひとつのコンテンツの質は格段に高まったと確信しています。
——構成にもかなりこだわったと聞きました。
岩本:
そうなんです。実はこの「見開きでBefore/Afterを比較する」というレイアウト、もともと編集担当の方にアイデアとしていただいたんですが、そこから「どうすれば本当に読者に伝わるか」という中身の部分は、私たちの方で徹底的にブラッシュアップしました。
専門書ってどうしても文字ばかりで難しくなりがちですが、それだと直感的に分からないですよね。
だから、単に図を並べるだけじゃなくて、「左ページの課題(「惜しい!」)」に対して、「右ページの改善案(「いいね!」)」がどう解決しているのか。その対比がパッと見て伝わるように、図版の作りや見せ方の精度を上げることに注力しました。

——確かに、すごく見やすいです!
岩本:
単なるノウハウの羅列にはしたくなかったんです。 「飲食店向けの注文管理システム」のような架空のプロダクトを設定して、それが徐々に使いやすくなっていく「一連の流れ(ストーリー)」として読めるように構成しました。 これによって、実際の開発現場に近い視点で「なぜこの改善が必要なのか」というプロセスごと追体験してもらえるようになっています。
——そんな工夫の中に登場するマスコット「UIじぃ」の存在にも癒やされます。このキャラクターはどうやって生まれたんですか?
直原:
執筆が進む中で、「読者にとってのガイド役が必要だよね」という話が出たのが誕生のきっかけです。専門的な内容だからこそ、単に解説するだけじゃなくて、「ここが分からない」「ここが良くなったね」って、ユーザーの体験に寄り添う代弁者として、私たち著者と読者の橋渡し役を作りたかったんです。
——最初はマスコットキャラではなく、文字だけの予定だったとか。
直原:
そうなんです。当初はガイド役はセリフだけの想定だったんですが、制作過程で「やっぱりビジュアル化しよう」となりました。そこで「どんな見た目にする?」と議論になったんですが、やっぱりUIの本なので「UIに関連したモチーフがいいよね」という話になって。そこで、UI操作で一番身近な存在である「マウスカーソル」をモチーフにすることに決まりました。
そこから、あの「カーソルの形をしたおじいちゃん」というビジュアルが生まれたんです。

——「UIじぃ」という名前もユニークですよね。
大林:
名前は議論の中でかなりスムーズに決まりましたね。 「GUI(※)」をもじっているという遊び心がいいなと。実は 「UIの妖精」という設定になっていて、UIの始まりとともに生まれ、長年UIデザインに向き合う人々を見守ってきた……という、壮大なバックグラウンドがあるんですよ。
あえて「業務システム」に焦点を当てた理由―華やかさより、実用性を追求するUIデザイン哲学

——多くのデザイン書がある中で、なぜあえて地味な印象のある「業務システム」をテーマに選んだのでしょうか?
佐々木:
一番の理由は、シンプルに「私たちが最も得意とし、多くの実績を持っている領域だから」です。 私たちアイスリーデザインは、これまでに100件を超えるデジタルプロダクトの設計・改善に携わってきましたが、その多くが業務支援ツールのUI改善なんです。
——なるほど、現場の強みが一番活きるテーマだったわけですね。
佐々木:
そうなんです。書籍化の話をいただいた時、改めて「本を出す目的」に立ち返って議論しました。 華やかで映えるBtoCサービスのデザイン本は世の中にたくさんあって、いわばレッドオーシャンです。一方で、業務システムのデザインに関する実践的な本は意外と少なくて、ブルーオーシャンじゃないかと。
業務システムって「仕事で使わなければならない」ものだから、使いにくくても見過ごされがちですよね。だからこそ、そこにメスを入れる私たちのノウハウには価値があると考えました。読者の方々に「アイスリーデザインは業務システムに強い会社なんだ」と認識していただきたい、というブランディングの意図も込めています。
——その「業務システムならではのデザイン」を定義する言葉として、本書で語られている「道具的UI」という言葉が印象的でした。
佐々木:
Webサイトみたいな「広告的UI」に対して、業務システムは目的を達成するため「道具的UI」だと定義しています。
道具的UIの核心は「データとの関係性」にあります。メールアプリならメールデータ、写真編集アプリなら写真データ。ユーザーはUIを意識することなく、目的のデータをスムーズに扱えることを求めています。
道具に求められるのは、見た目の美しさ以上に、効率よく間違いなく使えること。ユーザーがUIを意識せずに、扱いたいデータをスムーズに操作できることが一番大事なんです。「企業の生産性向上に貢献して、人々の暮らしをより良くする」っていう、私たちの企業理念とも通じる部分だと思っています。
デザイナーだけの本じゃない。すべてのプロダクト開発者に届けたいメッセージ
——この本はどんな人に読んでほしいですか?
大林:
UIデザイナーはもちろんですが、職種の垣根を越えて、プロダクト開発に関わるすべての方に読んでいただきたいです。チーム全体の「共通言語」を創り出したいという強い想いがあるからです。
——なるほど、「共通言語」を作る、ですか。それは具体的にどういうことでしょうか?
大林:
はい。まず、これからアプリのUIを学ぶ人や、Webデザイナーから転向しようと考えている人。そういう方にとっては、UIの基本から業務システムへの応用まで体系的に学べるので、実務への確かな一歩になるはずです。
そしてそれだけでなく、PMやエンジニアの皆さんにこそ読んでほしくて。これがあれば、デザイナーと話すときの「共通言語」が生まれるんです。「なぜこのデザインなのか」という根拠が分かれば、チームでの意思決定もすごくスムーズになるはずです。
——デザインに直接関わらない人にとっても発見がありそうですね。
大林:
そうですね。「UIデザイナーって色やフォントを決める仕事でしょ?」って誤解されがちですが、そのイメージを変えるのに最高の入門書だと思います。 実際、制作メンバーの一人が「この本のおかげで、やっと家族に自分の仕事を説明できた」って嬉しそうに報告してくれたんです。それくらい、専門外の人にも伝わる内容になっていると思います。
さいごに

——最後に、読者へのメッセージと今後の展望をひとことお願いします!
佐々木:
この本を通じて「UIデザイナーの裾野を広げることが、業界への貢献になる」と信じています。業界全体がレベルアップすれば、巡り巡っていつか自分たちにも返ってくるはず。日本のDXを、デザインの力で支えていきたいですね。
インタビューを通して、この本がただの「便利なTips集」ではなく、私たちの未来をちょっと良くするための「投資」のような一面もあるんだな、と改めて感じました。
この記事を読んでいるプロダクト開発に携わる皆さん。 もしよかったら、ぜひオフィスやデスクに一冊置いてみてください。「これ使えるかも?」と感じた法則を現場で一つ試してみるだけで、プロダクトがぐっと良くなるはずです!
【書籍情報】
書名:現場の「あるある」から学んだ今すぐ使えるUIデザイン41の法則
著者:佐々木 祐真、直原 杏花、岩本あかり、大林志帆
監修:株式会社アイスリーデザイン
発行所:株式会社翔泳社
発行日:2025年7月24日
ISBN:978-4-7981-8992-5













※GUI:Graphical User Interface(グラフィカルユーザーインターフェース)の略。コンピューターなどの画面上で、ウィンドウ、ボタンなどの視覚的な要素を使って直感的に操作できるようにした仕組みのこと。文字(コマンド)を入力するCUI(Character User Interface)と対比される。