2019年1月17日 ビジネス

筋肉体操でもブレークした武田真治から考えるマルチジョブの時代

俳優の武田真治氏が筋肉体操での出演からまたまたブレークしています。年末の紅白でもバックダンサーだったにも関わらず大きな話題になりました。元々、我々世代では昔から個性的な俳優でミュージシャンという印象がすでにあるためマルチな才能をもったタレントということに違和感は無いのですが、最近ではバラエティでも注目されており、芸人という肩書きもさらにプラスされたとも言われその幅は広がる一方です。彼自身が先日、記者会見で「本業が何かわからなくなってきた」と発言したこともネットで話題になりました。ただ、タレントの世界では昔からこのようにマルチに才能を発揮する人は多かったと思います。
 

出典:NHKの公式YouTubeチャンネル 【みんなで筋肉体操】腕立て伏せ ~ 厚い胸板をつくる
 
一方で、現在一般的な職業の世界においてもこの本業という概念自体が急速に変化していると感じます。私自身コンサルタント、ベンチャー経営者、大学非常勤講師、社外取締役、ライターなど肩書きがどんどん増えておりまさに自分の本業が分からなくなっています。そして私のまわりを見てもこういう人の裾野はかなり広がっているのだと思います。最近では一躍有名人になった落合陽一氏も学者であり、アーティストであり、会社経営者とマルチで活躍しています。
 
タレントの中で枠を広げることと異なり、そもそもまったく違うスタイルの職業を複数同時に実現することはかつては時間的制約からも厳しく、現実的に実現するのが困難だった部分も大きいと思います。そもそも職場に通う、同僚、関係者とコミュニケーションをとる、事務手続きをこなすというハードルはかなり高かったでしょう。しかし現在はICTの普及で職場に通う必要が無い、リアルなコミュニケーションの必要性が格段に減り、様々な作業の生産性が劇的にあがったということにより、普通の人でもマルチに活躍できる土壌が確実に広がっています。
 

 
一方で職業を取り巻く環境変化も大きいものがあります。例えばライターという職業ですが、かつては文章を書くということはそれなりの専門領域であるため、各業界別の専門職として重宝されてきました。中でも主要な舞台として様々なジャンルの紙の雑誌がありました。例えば自動車ライターは自動車雑誌だけでもたくさん存在していたので一生食べて行くことができたのです。
 
しかし、雑誌の衰退は急激で、雑誌の仕事だけでは食べていけない人も増えました。ブログやSNSの登場で一般人の中から優秀な人が多数登場し、我々のようなコンサルタントなどライターでは無い人もどんどん文章を書くようになってライターもやっているが他にも色々やっている人が劇的に増加しています。無料でも喜んで文章を書く人が劇的に増えた結果、文章を書く技術だけでなく、幅広い知識や経験、新しい視点も含めたトータルの価値が求められる現在、むしろ複数のバックボーンがある方がその価値を発揮しやすいという側面もあります。
 
ホリエモンもよく指摘していますが、現代は全員が寿司屋の職人を目指す必要は無い時代です。もちろん95%の技術を96%にするために10年かけるような人間国宝は素晴らしいです。しかし、大多数の人はまず60%をさくっと短時間で獲得した方が良い時代なのでしょう。60%は3年で実現できるかもしれないが、60%を70%にするには10年必要かも知れないのです。レベルがあがればあがるほど1%のレベルを上げるにはかなりの修行が必要になります。10年寿司を学ぶよりも3年で寿司、フレンチ、デザインの勉強をした人が新しい料理ジャンルのイノベーションを生み出す人になるのかも知れないのです。
 
副業を認める会社も増えています、本業としてひとつの会社でひとつの仕事を続けても破壊的イノベーションの登場によりその仕事そのものが無くなる可能性のある時代です。みんながマルチに様々なスキルを身に付け、その中から新しいイノベーションを産み出すことに挑戦する方がリスク分散にもなると同時に挑戦にもなる生き方なのでしょう。みんなで武田真治を目指す時代です。でもあの筋肉はなかなか難しいかもですが。

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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