今さら聞けないAIエージェント──基礎のおさらいとこれまでの動向をまとめて振り返り!

2025年4月3日に元OpenAIの社員から衝撃の論文が発表されました。その名も「AI 2027」。この論文が衝撃的だったのは、現在のAIの飛躍的な進化によって2027年に人類は分岐点を迎えるというものです。既に「AI 2027」については、解説Youtubeやブログも多々出ているので、ここでは「AI 2027」でも取り上げられている「AIエージェント」について改めて説明します。

AIエージェントとは、単に質問に答えるだけでなく、人間の指示に基づいて自律的に判断し、行動できるAIシステムを指します。ChatGPTやGrokといった従来の生成AIが「問いに対する回答を生成する」という受動的な役割だったのに対し、AIエージェントは目標達成のために能動的に行動し、複雑なタスクを自律的に遂行します。

2024年には、Microsoftが「エージェンティックワールド」のビジョンを掲げ、Googleは「Gemini 2.0」を発表し「エージェント時代に向けた次世代モデル」と強調するなど、テクノロジー業界の巨人たちは次なるAI革命の主役として「AIエージェント」を本格的に打ち出し始めました。

この記事では、そんな「AIエージェント」について、基本的な概念を解説しつつ、AIエージェントが盛り上がり始めた2024後半~2025年初めの動向をまとめていきます。また、実際の企業活用事例やおすすめの学習書籍も取り上げ、AIの発展が早すぎてついていけないという方でもAIエージェントの全体像を一気に把握してもらえるようにしました。まもなく2025年も下半期に突入しますが、この記事を読んで今年初めまでのAIエージェントに関する動向をおさらいしておきましょう。

最新情報はこちらの記事でまとめておりますので、あわせてご覧ください!
AIエージェント時代の到来 – ビジネスリーダーが今から準備すべきこと

これからのAI時代をリードするためにも、まずは「AIエージェントとは何か?」をひも解いていきましょう。

目次

AIエージェントが導く未来社会の姿―AI 2027が示す衝撃の未来予測

AI 2027」は、2027年までにAIが人間の知能を超える、もしくはそれに匹敵する「AGI(Artificial General Intelligence / 汎用人工知能)」や、さらにその先の「ASI(Artificial General Intelligence / 人工超知能)」が登場する可能性を、AI研究者や専門家が具体的なシナリオとして描いた未来予測レポートです。

2025年から2027年にかけて「どんなAIが生まれて、社会や私たちの生活がどう変わっていくのか」を、時間の流れに沿って具体的なストーリー形式で描いています。

OpenAIやGoogle DeepMind、Anthropicといった最前線のAI企業のCEOたちは、「5年以内にAGIが実現する」と話しています。この予測が本当なら、そのインパクトは産業革命以上かもしれません。

内容の信頼性も高く、25回以上のシナリオ演習や、100人を超える専門家への聞き取り調査を実施。AIの技術やルール作りに詳しい有識者の意見がしっかり反映されています。

これまでAGIやASIの登場は、映画や小説の世界の話として、どこかSF的で非現実的な未来の出来事として描かれることが多くありました。ところが「AI 2027」では、AI技術がどう進歩していくのかを時系列で非常に細かく描いており、2027年にはAGIが現実のものとなり、さらにその先のASI登場まで、具体的な道筋が示されています。こうした精緻な予測は、AI研究者や専門家だけでなく、一般の人々からも大きな注目を集めており、世界中で話題になっています。

時系列のAI技術進化予測

「AI 2027」ではAIの進化の過程と社会に及ぼす影響が時系列で語られています。ここでは簡潔にまとめますが、非常に具体的なストーリーで語られているので、気になる方はぜひAI 2027のサイトで原文を読んでみてください。

時期マイルストーン主な出来事
2024年AIエージェントの進化・AIは指示に従いメール作成や簡単なコード生成が可能に
・「従業員」に取って代わる存在へ進化の兆し
2025年半ばパーソナルAIエージェント登場(Stumbling Agents)・「パーソナルアシスタント」としてAIエージェントが一般公開
・日常のタスクを自動化
・信頼性やコストには課題が残る
2025年後半最も高価なAIと巨大データセンター・OpenBrainが巨大データセンター建設
・新モデル「Agent-0」公開、従来の1000倍の計算力で訓練
・AI自身がAI研究を推進
2026年初めコーディング自動化とAI研究の加速・Agent-1がAI研究開発を50%高速化
・AIがアルゴリズム進化を加速、競合他社も追随
2026年半ば中国の覚醒・中国政府がAI開発に本腰、国家主導の開発体制へ
・米中AI競争激化
・計算資源面で遅れを取る中国は追い上げを図る
2026年後半AI R&Dの軍拡競争・セキュリティ強化・AIモデル盗用リスク増大、サイバーセキュリティ強化
・AIの目標や性格形成、アライメント問題が顕在化
2027年1月超人的コーダーの登場・AIがコーディングで人間を超える能力を獲得
・ソフトウェア開発の効率が飛躍的に向上
2027年4月超人的AI研究者の出現・AIが研究分野で人間トップ研究者を凌駕
・科学論文執筆や新技術開発を高速化
2027年7月AGI(汎用人工知能)臨界点到達・AIが多様な知的作業で人間トップ1%と同等のパフォーマンスを発揮
2027年9月ASI(人工超知能)出現・モデルが自己最適化を繰り返し、人類トップ研究者を大きく上回る速度で問題解決
2027年10~12月シナリオ分岐:「減速(Slowdown)」と「競争(Race)」・減速:AI開発のペースを意図的に抑制し、安全性を重視
・競争:国家間のAI開発競争が激化しリスク増大
2028年初めASIによる経済・社会の大規模自動化開始・多くの経済活動がASIにより自動化され、社会構造に根本的変化
・安全保障・倫理問題が顕著化

この未来予測の中で特に注目されているのが「AIエージェント」の急速な発達です。

 AGIへの道のりにおいて、AIエージェントは重要な中間段階として位置づけられており、すでに私たちの身の回りでその兆候が見え始めています。単なる質問応答を超えて、複雑なタスクを自律的に実行できるAIエージェントは、AGI実現のカギを握る技術として、世界中の企業や研究機関が開発にしのぎを削っています。

あらためてAIエージェントとは?

AIエージェントとは、単に質問に答えるだけでなく、人間の指示に基づいて自律的に判断し、行動できるAIシステムを指します。

ChatGPTやGrokといった従来の生成AIが「問いに対する回答を生成する」という受動的な役割だったのに対し、AIエージェントは目標達成のために能動的に行動し、複雑なタスクを自律的に遂行します。

こうした「受動的なAI」から「能動的なAI」への進化は、2024年7月にBloomberg(世界的に知られるアメリカの金融・ビジネス情報メディア)が発表した“AI進化の5段階”の中で、「レベル2」から「レベル3」への移行にあたるとされています。

参照:s/articles/2024-07-11/openai-sets-levels-to-track-progress-toward-superintelligent-ai?sref=b0SdE1lu&embedded-checkout=true

注目のAIエージェントサービス・ツール3選

AIエージェントがどのようなものかは、実際の例を見るのが一番わかりやすいと思います。まずは、注目されているAIエージェントサービス・ツールを3つご紹介します。

1. DeepResearch(ディープリサーチ)

OpenAIとソフトバンクグループ、Arm、ソフトバンクによる法人向け特別イベント「AIによる法人ビジネスの変革」より、OpenAIによるDeepResearchの紹介シーン

AIエージェント草創期のサービスとして、今一番使われているのが「DeepResearch」です。

これは、ChatGPTやPerplexity、Gemini、Gensparkなどの生成AIの機能の一部として提供されており、一般的な生成AIのように「ユーザーの問いに対して、一度きりの思考を通して回答を生成する」のではなく、「思考」と「検索」を何度も繰り返しながら、より正確で納得感のある情報を導き出してくれます。

たとえば、調べたいテーマに対して「どの情報が信頼できるか」「他にどんな視点があるか」といった検討をAIが自律的に行ってくれるため、単なる回答生成にとどまらず、本格的なリサーチの補助役として活躍します。

Deep Research機能はGoogle(Gemini Advanced)が2024年末に先陣を切り、OpenAI(ChatGPT)とPerplexity AIが2025年2月、Microsoft(Copilot)とAnthropic(Claude)が2025年4月に続く形で提供開始されており、AIによる高度な調査支援ツールとして各社が競争を繰り広げている注目の機能です。

主要な生成AIが提供しているDeepResearchの使用条件の例

  • ChatGPT:ChatGPT Pro(月額 200ドル)プランで、最大で月100回利用可能
  • Perplexity:無料なら1日5回、有料だと1日500回まで可能
  • Gemini:Google Workspaceの一部プランで利用可能

2. Dify(ディファイ

Dify.AI tutorial for beginners: Create an AI app with a dataset within minutes

Dify は、プログラミングの知識がなくても自分専用のAIアプリを作れるツールです。2025年1月にv1.0.0-beta版をリリースし、AIアプリケーション向けのプラグインシステムやマーケットプレイスなどの新機能を搭載して注目を集め始めました。

たとえば、お客様からの問い合わせに自動で答えるチャットボットを作ったり、ブログ記事やSNS投稿の文章を自動で書いてくれるツールを作ったりすることができます。個人で使ったり、小さな規模でアプリを作る程度なら無料で利用可能。高度な使い方やチームで運用する場合には有料プランの利用となります。

Difyについては実践的な活用事例についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
【最強AI開発ツール】DifyとReplitで非エンジニアでもすぐに動くアプリを爆速開発する方法

3. felo

Feloをご紹介します – 多言語対応の次世代検索エンジン

feloは、日本発の次世代AI検索エンジンとしてSparticle株式会社によって2024年7月に正式リリースされた、情報収集や知的作業の支援に特化したAIエージェント型サービスです。2025年以降は企業向けサービスを拡充し、AIエージェント技術を活用した自動リサーチ機能も注目されています。

一般的な生成AIが「プロンプトに対する単発の回答生成」を主な機能とするのに対し、feloは「継続的なリサーチや情報整理」をサポートすることを特徴としています。ユーザーはチャット形式で質問や指示を出し、feloが関連情報の収集・整理・要約・レポート作成などを支援します。

feloの大きな特徴のひとつは「情報の蓄積と整理のしやすさ」にあります。従来の生成AIが会話の文脈を短期的にしか保持できないのに対し、feloは「トピックコレクション」機能などを通じて、ユーザーがテーマごとに情報を蓄積し、長期的な知識ベースを構築できる仕組みを提供しています。ただし、AIがユーザーの思考パターンや履歴を自動的に学習し、個別最適化する機能については、公式には明言されていません。

また、feloは関連情報の提案や深掘り質問の提示など、ユーザーのリサーチを広げるサポートを行いますが、「思考の矛盾点の自動指摘」や「ユーザーが気づかなかった発想の能動的な提案」などの高度な機能については、現時点で公式な情報は確認できません。

feloの利用プラン(2025年5月時点・公式サイトより)

  • スタンダード(無料):無制限の高速検索、1日5回までのプロ検索
  • プロフェッショナル(月額14.99ドル、約2,187円):1日300回までのプロ検索、AIモデル選択、詳細な回答、複数AIチャット機能
  • エンタープライズ:要問い合わせ(組織全体での導入、カスタマイズ対応)

※プラン内容や価格は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。

生成AIとAIエージェントの違い

ChatGPTを始めとした生成AIとAIエージェントは、どちらもAI技術の発展形ですが、その能力と役割には明確な違いがあります。AIエージェントは生成AIの基盤技術を活用しながらも、さらに高度な機能を備えています。その主な特長は「自律性」「学習力」「多段階処理能力」「実行能力」の4つに集約できます。

1. 自律性

生成AIAIエージェント
• 事前に定義されたルールやシナリオに従って動作• 目標達成のためのプランを自ら立案
• 人間の指示・介入が細かく必要• 与えられた権限内で人間の指示がなくても自ら判断(必要に応じて人間による判断・介入も可能)

2. 学習力

生成AIAIエージェント
• 事前に与えられた知識に基づいて処理• 経験・データを継続的に学習し、パフォーマンス向上に活用
• 環境変化の理解能力が限定的• 環境変化を認識し、それに応じて行動を調整

3. 多段階処理力

生成AIAIエージェント
• 一問一答の単純処理が中心• 複数ステップからなる複雑なタスクを処理
• 決められたワークフロー内での処理のみ• 自律性・学習力を活かし、各ステップで必要な判断を実行

4. 実行能力

生成AIAIエージェント
• 特定範囲(チャット内など)での回答生成が中心• 外部システムと連携してアクション(情報取得・追加処理)を実行
• 外部ツール連携や他動作は限定的• 複数のシステムやアプリケーションを操作して実務を遂行

※一部の高度なチャットサービスは、ある程度の自律性・学習力・多段階処理・実行能力を備えているものもあり、チャットボットとAIエージェントの境界線は必ずしも明確ではありません。

上記の点を踏まえて、​​AIエージェントと生成AIの最も本質的な違いは、「情報提供にとどまらず、実際のアクションまで遂行できる」点にあります。この「考えて動く」能力こそが、単なる情報提供ツールから、真の意味での「アシスタント」へとAIを進化させる鍵となっています。

生成AIとAIエージェントの違いの例

例1)宿泊施設の検索と予約

  • 現状の生成AI:
    「五反田で1万円以下の宿を探して」という指示に対して、該当する宿泊施設の情報を収集・提示するところまで対応します。しかし、どの宿が最適かを判断したり、実際に予約手続きを行うことはできません。
  • AIエージェント:
    ユーザーの条件をもとに、最も適した宿を自律的に選定し、予約サイトにアクセスして予約手続きを完了させるところまで実行します。つまり、情報提供にとどまらず、目的達成に向けた一連の行動を自律的に遂行します。

例2)Excelでの作業補助

  • 現状の生成AI:
    「この条件を満たす関数を教えて」といった問いに対して、関数の書き方や使い方を提示することはできますが、実際にExcelファイルに関数を組み込んだり、他のセルとの整合性をとることまでは行いません。
  • AIエージェント:
    「C列の得点に基づいてD列に評価を入れてほしい。80点以上は“B”、それ以外は空白で」などの自然な指示を理解し、該当する関数を生成し、実際のシートに自動で適用します。さらに「他に必要な条件があれば対応して」といった曖昧な依頼にも、データの傾向や文脈をふまえて柔軟に対応します。

例3)スマートホームの操作

  • 現状の生成AI:
    「Alexa、シーリングライト30%」のように、具体的な数値や明確な命令が必要であり、ユーザーが細かく操作指示を出す必要があります。
  • AIエージェント:
    「もうちょっと明るくして」といった曖昧な指示にも対応でき、時間帯、部屋の明るさ、ユーザーの過去の好みなどの文脈をふまえて、最適な明るさを自動で判断・設定します。より人間らしいやりとりが可能になります。

AIエージェントの種類・分類

AIエージェントにはいろいろな「考え方」や「行動のしかた」をもつタイプがあります。たとえば、人間でも「すぐに反応する人」や「計画を立てて動く人」などがいるように、AIにも性格のような違いがあるのです。

そのタイプは主に「単純反射型エージェント」「モデルベース反射型エージェント」「目標ベースエージェント」「効用ベースエージェント」「学習エージェント」の5種類に分類され(※)、さらにAWSなどの大手テック企業は、実用的観点から「階層型エージェント」という6つ目のカテゴリーを追加しています。

※人工知能の標準的な教科書として広く知られており、学術界で最も広く引用され、多くの組織の基準となっている『Artificial Intelligence: A Modern Approach』より

これらの分類は単なる理論的枠組みではなく、実際のAI開発において重要な設計指針となります。特定の問題に対して最適なAIエージェントタイプを選択することで、システムの効率性、適応性、信頼性を大きく向上させることができます。

ポイント
実在するAIエージェントは、多くの場合、複数の分類を組み合わせたハイブリッドシステムとして設計されています。たとえば、OpenAIのGPT-4ベースのエージェントは、一部の特性において学習エージェントの要素を持ちながら、特定のタスクでは効用ベースや目標ベースのアプローチを採用しています。

1. 単純反射型エージェント(Simple Reflex Agent)

「今どうなっているか」だけを見て、決められたルール通りに即座に行動するタイプです。過去のことや周囲の状況などは考えません。

代表的なモデル:
なし。ルールベース(if-then)の自動制御で済むため、モデル名がつかないことが多い。

例:自動で冷房を入れるエアコン
室温が28℃を超えたら冷房をオンにする、というように、あらかじめ決めた温度のルールに従って動きます。今の温度だけを見て判断しているので、とてもシンプルな仕組みです。

2. モデルベース反射型エージェント(Model-based Reflex Agent)

その場の情報だけでなく、「こういう時はだいたいこうなる」という過去の経験や知識(モデル)をもとに、もう少し賢く判断するタイプです。

代表的なモデル:
「o1」や「GPT」などのような大規模LLMではなく、伝統的な予測アルゴリズム(ARIMA, Prophet, LightGBM, XGBoost)や小規模モデル(MDP)が該当。

例:天気予報や過去の売上から在庫を調整するシステム
たとえば、晴れの日はアイスがよく売れる、というデータを持っていると、天気予報が晴れならアイスを多めに注文するように判断できます。目の前の情報だけでなく、経験や今の環境から予測して動けるのが特徴です。

3. 目標ベースエージェント(Goal-based Agent)

「◯◯を達成したい」というはっきりした目標があるタイプです。その目標に向かって、自分で考えたいくつかの選択肢を比べながら、一番よさそうな方法を選んで実行します。

代表的なモデル:

  • OpenAI “o1″(ReasonerレベルのAI)
    →目標を理解して複数の選択肢を検討する能力を持つ。
  • Google Gemini 1.5(思考プロセスを踏まえて意思決定)
  • AutoGPT(オープンソースのタスク指向型エージェント)
    →目標を受け取って中間ステップを計画・実行する。

例:営業活動をサポートするAI
「成約率を上げたい」という目標に向けて、お客様にどのタイミングで、どんな提案をすればよいかを考えてくれるAIです。目標に近づくために、どの情報を参照して、何をすればいいかまで自分で考えながら動くのが特徴です。

4. 効用ベースエージェント(Utility-based Agent)

目標だけでなく、複数のメリット・デメリットのバランス、たとえば「どれが一番お得か」「リスクが少ないか」など、いくつもの観点から総合的に判断できるタイプです。

具体的なモデル:

  • Claude 3 Opus / AnthropicのConstitutional AIモデル
    →「有害でない・倫理的にバランスが取れた出力」を意識する点が「効用最適化」に近い。
  • Google DeepMindのAlphaGo/AlphaZero
    →勝利という「効用」を最大化するために行動を選択。

例:売上と満足度を両立する価格設定AI
たとえば、「安くするとお客さんは喜ぶけど、利益は下がる」というような複雑な状況でも、「売上」「お客様の満足度」「競合の動き」などを数値で評価して、バランスのよい価格を考えてくれます。

5. 学習エージェント(Learning Agent)

経験をもとに自分で学び、どんどん賢くなっていくタイプです。環境が変わっても、それに合わせて自分をアップデートできるのが強みです。

代表的なモデル:

  • GPT-3.5 / GPT-4 / GPT-4o(OpenAI)
  • Gemini(Google)
  • Claude 3(Anthropic)
  • LLaMA 2(Meta)
  • Mistral / Mixtral(オープンソース)

これらはトレーニングを通じて継続的に学ぶ大規模言語モデル(LLM)。
ChatGPTなどもこれに基づく。

例:工場の不良品を見分けるAI
最初は簡単なルールでスタートしますが、使えば使うほど新しいデータを学習して、不良品の見分け方がどんどん上手になります。人間のように「経験を通じて成長する」仕組みをもっています。

6. 階層型エージェント(Hierarchical Agent)

チームで仕事を分担するように、役割ごとにAIを階層的に分けて働かせるタイプです。会社で「社長→部長→課長→社員」と仕事を分けるのと似ています。

代表的なモデル:

  • OpenAI「Operator」(開発中)
    →階層的に複数のサブエージェントが連携して動作。
  • Gorilla(Meta AI)
    →ツール使用エージェントとして、機能分担型で構成。
  • AutoGen(Microsoft Research)
    →複数のエージェントを役割分担させて協調する設計。

例:宅配便の全国配送を支えるAIチーム
・上位AI:全国の荷物量を見てトラックの数やルートを決める
・中位AI:地域ごとに仕分け作業の計画を立てる
・下位AI:各ドライバーのその日の最適な配達ルートを計算
こうした役割分担によって、1つのAIだけでは難しい大きな仕事も、チームで協力しながらうまくこなせます。

企業におけるAIエージェントの活用事例5

AIエージェントは実際のビジネスでも具体的な成果を上げ始めています。この章では、AIエージェントが実際のビジネスでどう活用されているのか、わかりやすい事例とともに紹介します。

1. 明治安田生命:3万6千人の営業職員に「デジタル秘書」

明治安田生命では、約36,000人の営業職員全員に「MYパレット」と呼ばれるAIエージェントを導入しました。これは単なるチャットボットではなく、文字通り「デジタル秘書」として機能します。

例えば、顧客との商談中に「最近運動していないんだよね」という何気ない会話が出たとします。MYパレットはこの会話をスマホからリアルタイムで分析し、その場で近隣の運動関連のイベント情報を営業職員に提供。顧客との会話に自然に溶け込む提案ができるようになりました。

この取り組みの成功を受け、明治安田生命はアクセンチュアとの提携により今後5年間で約300億円を投資し、全社的なAI活用基盤の構築を進めています。

2. アクセンチュア:全社員がAIエージェントを活用する「デジタルツイン・エンタープライズ」

世界的コンサルティング企業のアクセンチュアは、全社員がAIエージェントを活用する「デジタルツイン・エンタープライズ」という構想を実現しています。社員の活用状況は、①業務への導入(ほぼ全員)、②生成AIによる新業務創出(徐々に成果を拡大)、③生成AIの独自開発(一部の社員)という3段階で進行中です。

特に注目すべきは、600人以上のマーケティング担当者による「AI Refinery™ for Industry」の活用です。このAIエージェントの導入により、手作業が25~35%削減され、市場投入までの速度が25~55%向上し、コストが6%削減されています。

さらに、2025年末までに、消費財・サービス業では収益向上管理、ライフサイエンス分野では臨床試験の効率化、工業分野では機器のトラブルシューティングなど、各業界の特有の課題に対応した100種類以上のAIエージェントを提供していく予定です。

3. GMO:顧客対応の効率化と満足度向上の両立

引用:自律型AIエージェントの開発により業務工数68%以上減! さらに顧客満足度は12.5ポイント向上 | GMOインターネットグループ株式会社

GMOグループは2023年7月に会話型AIを導入し、わずか1年半という短期間で、問い合わせ件数を前年同時期比で70,000件以上削減しました。

特に注目すべきは、2024年12月時点で問い合わせ対応の工数を68%以上削減しただけでなく、さらに顧客満足度12.5ポイント向上いう成果を達成した点です。AIエージェントが「効率化」と「質の向上」を同時に実現した好例といえるでしょう。

4. メタリアル:AIエージェントによるプレスリリース作成の革新

MetaReal「広報AI」の紹介図
引用:専門AI開発のメタリアル、「広報AI」を新開発。自社プレスリリースをAI化

メタリアルは広報専用AI「広報AI」を導入し、自社のプレスリリース作成をAI化しました。このシステムは、過去のメディア取材傾向データを学習し、「話題性」や「消費者視点」など6つの基準でプレスリリースをスコア化する独自ロジックを搭載しています。これにより、約72%という高精度でメディアに掲載される可能性を判定できるのが特長です。

注目すべきは、広報AIが単一のAIではなく、複数のAIエージェントが協働する仕組みを採用している点です。たとえば、あるAIがキャッチーなタイトルを考案し、別のAIが本文を豊かに表現し、さらにもう一つのAIが全体の整合性をチェックするといった具合に、それぞれの役割を分担しながら対話的に作業を進めています。このように複数のAIが連携することで、一つのAIでは実現が難しい高品質なプレスリリースの作成が可能になっています。

5. ブレインパッド:AIエージェント事業に特化した子会社を設立

ブレインパッドは、2025年3月にAIエージェントに特化した新会社「株式会社BrainPad AAA(ブレインパッド エーキューブ)」を立ち上げました。ブレインパッドが100%出資する子会社で、自律型AIエージェントの開発・提供と、その活用に関するコンサルティングを中心に事業を展開していくとのことです。

ブレインパッドは、2004年の創業以来「データの力で持続可能な社会をつくる」ことを目指してきました。近年の生成AIの進化を受け、同社はAIエージェントの可能性にいち早く注目。「支援型AIエージェント」と「自律型AIエージェント」の両方を視野に入れ、とくに後者を今後の成長の軸と位置づけています。

この取り組みの最終的なゴールは、AIエージェントを活用して「人手不足の解消」や「働き方の効率化」に貢献すること。将来的には、グループ全体で数十億円規模のビジネスに育てることを目指しています。

ブレインパッド、Fairy Devices、およびBrainPad AAAは、マルチモーダルAI分野で業務提携を締結し、協業第一弾として、現場業務のDXを支援する「作業動画解析AIエージェント」を共同開発しました。この新しいソリューションは2025年夏に市場投入される予定だということです。

引用:ブレインパッド、Fairy Devices、BrainPad AAAがマルチモーダルAI分野において業務提携

AIエージェントのメリットと課題

AIエージェントは、業務効率化やサービス向上を目指すさまざまな現場で導入が進んでいます。ここでは、AIエージェントを活用することで得られる主なメリットと、実際に導入・運用する際に考慮すべき課題について整理します。

メリット

  • これまで人間が対応してきた業務を任せることができ、人件費の削減につながる
  • 単純な反復作業などを自動化することで、より価値の高い業務に集中できる
  • 入力ミスなどのヒューマンエラーが削減する
  • ユーザーに合わせたサービス提供が可能になり、顧客満足度が向上する
  • 24時間365日の対応が可能になる

課題

  • 開発には品質の良い大量のデータが必要だが、データの収集や管理には多大なコストと時間がかかる
  • 入力した個人情報が流出するリスクや、不正アクセスによる機密情報の漏洩が懸念される
  • 安全かつ適切にAIエージェントを運用するために、専門的なITスキルを持つ人材が必要

AIエージェントがビジネスに与えるインパクト

1. ホワイトカラー業務にも広がる自動化の波

業務プロセスの自動化や音声による自動応答の導入をきっかけに、ホワイトカラーの業務全体に自動化の流れが急速に広がっています。その影響は単なる利便性の向上にとどまらず、営業や調達といった企業活動の中核領域にまで大きな変革をもたらしています。

AIエージェント普及後のホワイトカラーの働き方の変化や、企業がAIエージェントを導入するためのポイントについてはこちらの記事で詳しくまとめています。
AIエージェント時代の到来 – ビジネスリーダーが今から準備すべきこと

2. AIエージェントが切り拓く新たなビジネス機会

AIエージェントの導入は、業務効率化だけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も秘めています。限界費用が低くなることにより、AIを前提とした新しいビジネスモデルへの転換が加速します。特に、これまで人間にしか対応できなかった相談業務やコーチングなどの分野にも、AIの活用が広がりつつあります。

3. 低コスト化が進む業務特化型AIエージェント

たとえばDeepSeekの登場が象徴するように、軽量かつ低コストなAI技術の進化が急速に進んでおり、特定の業務に特化したAIエージェントの開発は、これまでに比べてはるかに容易になっています。この流れにより、AIの普及が想定よりも早く進む可能性があります。

4. AI導入が企業の競争力を左右する時代へ

将来的には、多くの業界でAIによる自動化が飛躍的な生産性向上をもたらすことが予想されます。AIを積極的に取り入れる企業と、導入に慎重な企業との間では、生産性だけでなく、商品やサービスの開発力においても格差が広がっていくでしょう。たとえば、アパレル企業のSHIENはAIの活用によって毎日数千点もの新商品を市場に投入し、他社を圧倒する競争力を築いています。このようにAIは、業界全体の再構築を促す起爆剤となる可能性があります。

5. 個人レベルでも広がるAI格差の懸念

働く個人に目を向けると、「AIを使いこなす人」と「AIを使わない人」の間で能力の差が広がりつつあります。さらに、低賃金でAIに指示されながら働く人々が増えていく懸念もあります。たとえば、AIにルートを指示される配送員や、AIが生成したコンテンツを確認・修正する作業員などが挙げられます。このような動きが進むことで、社会全体としても経済的な格差が拡大していく可能性があります。

AIエージェントを学ぶ本3選

AIエージェントについてより深く理解したい方に向けて、注目の書籍を3冊ご紹介します。技術的な背景から実践的な活用例まで、それぞれ異なる切り口でAIエージェントの世界をわかりやすく解説しています。

1. 『その仕事、AIエージェントがやっておきました。–ChatGPTの次に来る自律型AI革命』 西見 公宏 著

ChatGPTのようなチャット型AIと比較しながら、自律的に行動するAIエージェントがどのように私たちの働き方を変えていくのかを丁寧に紐解いています。技術的な仕組みについても、専門知識がない読者でも理解できるようやさしく解説されており、「次に来るAIの波」をいち早く感じられる一冊です。

https://amzn.asia/d/6Rx48Np

2. 『ビジュアル AI活用基本スキル96』 野村総合研究所 著/日本経済新聞出版

2025年3月20日~3月26日には丸の内本店の『新書』カテゴリで週間ベストセラー1位を獲得した一冊。AIをビジネスに活用したいと考える社会人に向け、基本用語から活用事例、ツール、資格などをビジュアルで網羅的に解説しており、AIエージェントも項目のひとつとして解説されています。生成AIや機械学習といった言葉は聞いたことがあるけれど、実際にどう使えばいいか分からないという方にもおすすめの入門書です。

https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/030700872

3. 『AIエージェント あなたのタスクをすべてこなす』(NewsPicks Select)

AIエージェントが実際にどのように活用されているのかを、豊富な具体例を交えて紹介しています。難しい技術用語には踏み込まず、スラスラと読み進められる構成となっており、AIに詳しくない方でも安心して読める内容です。バズワード化する「AI」が、現実のビジネスの中でどう機能しているのかを知りたい方にぴったりの一冊です。

https://amzn.asia/d/aXyPc7U

AIエージェント活用が、企業の未来を左右する鍵になる

いずれ、あらゆる業界で多様なAIエージェントが当たり前のように活躍する時代が訪れるでしょう。そうなれば、AI活用に前向きな企業と、慎重な姿勢を崩さない企業との間で、生産性や競争力における差はますます広がっていきます。

たとえばアパレル業界では、SHEINが検索履歴やSNSの行動データをAIで分析し、毎日数千点もの新作を生み出す仕組みを構築。AIによるトレンド予測と商品開発の高速化により、圧倒的な市場優位性を確立しています。

またOpenAIは、ChatGPT Pro(月額200ドル)を超える高機能なAIエージェントの展開を計画しており、月額2000ドルの高所得知識労働者向けモデルや、月額1万ドルのソフトウェア開発者向け、さらには月額2万ドルの研究支援用モデルなどが順次投入されると報じられています(出典:OpenAI Plots Charging $20,000 a Month For PhD-Level Agents — The Information)。

すでに、AIエージェントの進化と自動化は、ビジネスの可能性を広げる新たなステージに突入しているのです。

今後のビジネス環境で一歩リードするためにも、まずは生成AIやAIエージェントを取り入れてAIへの理解を深めつつ、身近な業務から効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。いまのうちに土台を整えておけば、将来的な業界の変化にも柔軟に対応できるはずです。

アイスリーデザインでは、AI導入のコンサルティングからPOC支援、社内教育プログラムの提供まで、企業のAI活用を総合的にサポートしています。ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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