”未来インフラ”の開発者が語る、過去の歩みがイノベーションに変わった瞬間

in-Pocket 編集部がサービス開発に取り組む様々な企業にお邪魔し、プロダクト誕生の裏側 と成功のヒントに迫るこの企画。
今回は、屋内位置情報サービス『TAGCAST』の開発元である株式会社タグキャストさんへ。これまでGPSでは把握の難しかった屋内や地下街エリアでの位置情報を提供出来る同サービスによって、未来の暮らしにどんな変化が起きるのか?帝人株式会社との協力開発でも話題を集める同社代表、鳥居暁さんにお話を伺いました。

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株式会社タグキャスト
代表取締役社長
鳥居暁さん


生活者の暮らしを大きく変える、
屋内位置情報サービス

—— Beacon技術をはじめ位置情報分野は今後伸びしろの大きな分野と思いますが、『TAGCAST』をひと言で表すとどんなサービスなんでしょうか?
例えばショッピングモールなどの屋内にいても、いま自分がどこにいるか分かるサービスです。施設内に置かれたBeaconが、近くにあるスマホに反応して位置情報を届けてくれます。『TAGCAST』はオープンプラットフォームの考えがベースにあるので、この位置情報を自由に使って、ユーザーと密なコミュニケーションを可能にしました。例えば、お店側は位置情報と併せてスマホを所有している顧客の購入履歴やプロフィール情報を参照することで、その人に最適なクーポンや情報を届けられるようになります。一度きりの購入で終わってしまうはずの顧客に対し、一人ひとりの志向や過去の行動に合わせたきめ細やかなプロモーションが可能に。結果、ロイヤルカスタマーへの引き上げもしやすくなると思います。

——オープンプラットフォームという発想だからこそ、その情報を使って様々なサービス開発が出来るわけですね。※


※『TAGCAST』が提供する位置情報を使えば、暮らしの様々な場面がもっと便利で豊かに。その活用範囲は、店舗でのユーザー認証やクーポン発行だけに留まらず、代金の支払いや高齢者の見守りなど、様々な生活シーンにおける利便性向上の可能性を秘めている。
2014年には、「Beaconが発信する識別情報と電波強度により、アプリを制御する位置情報サービス」として特許を取得。業界の先行者が持つ市場優位性を持つことで、大手企業からのオファーが増加。よりスケール感を持った事業へと成長しつつある。

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次世代ITインフラへ。
実証・実践のための技術支援に注力

——オープンプラットフォームによって、将来は街中のBeacon情報を利用した様々なサービスが登場してきそうですね。
そうですね。『TAGCAST』が提供する位置情報は、次世代のインフラになる、と手ごたえを感じています。現在は、行政や他の企業と協力して試験導入している段階ですが、今後様々なサービスが登場することで、さらなる便利さを実感頂けると思います。
まずは、インフラとして『TAGCAST』を多くの企業に使ってもらえるようにすることが第一。今は、Beacon対応のアプリケーションを開発するためのツールを自由に利用してもらい、魅力的なサービス開発をしてもらえるよう技術支援に注力しています。

最近では、アメリカのPutmenu, Inc .と共同で10言語の飲食店メニューを表示、注文出来るアプリを開発。帝人さんと共同で開発したペーパータイプの『PaperBeacon』と組み合わせることで、自分のスマホを使って自由にメニュー注文が出来るようになりました。一般的なBeaconは、空間に電波が広がるため、場所を細かく特定することは出来ませんが、『PaperBeacon』は表面数cm上に強い電波を出します。これをテーブルに敷いてスマホと連携することで、注文テーブルを特定出来るようになりました。

仕事で結果を残し続けることが、
未来の仕事の突破口になる

——次世代インフラ!そんな大規模スケールのプロジェクトだと、ご苦労されることも多いのでは?
もちろん屋内の位置情報という新しい市場を拓いていく苦労は多分にありますが、前例がない課題をクリアするためには、自分自身のこれまでの経験が活きてくると思います。
当社のBeaconは注文があってから組み立てますが、以前、ソフトバンクグループでYahoo!BBの拡販を担当していた時に培ってきた経験を活かし、ロジスティクス分野まで同時に視野に入れて考えられています。拡販業務を行っていた時に、全体の流れを学ぶことが出来たおかげですね。お申し込みから、モデムの発送と開通作業など、お客様にスムーズに使って頂くまでトータルに経験出来たことは非常に大きかったと思います。

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——これまで、ビジネスの大きな流れを掴んでいたことがアドバンテージになったわけですね。鳥居さんにとって、新製品開発を成功させるポイントはどこにあるんでしょう?
とにかくプロダクトの完成後をしっかりイメージすること、でしょうか。
アイディアの種はいくらでもありますが、それが社会にとってなぜ必要かを考え尽くすことが大切だと思います。そしてそのイメージが固まったらすぐに形にすること。完成までには、課題も出てきますが、最初に確固たるイメージがあれば、ブレずにゴールまで最短距離で進むことが出来ます。
あとは日ごろの積み重ね、が大切に。ソフトバンクグループでの経験、またその前に在籍していた富士通での大規模プロジェクト経験があるおかげで、自分の中で固めたイメージを形にする際に必要な工数や予算の概算もきちんと把握することが出来ました。目の前にある仕事で常に結果を出し続けること。ここにこだわり続けてきた結果、今があると思っています。

「経営者意識」の浸透で効率化徹底。
自己資金経営ならではの面白さと可能性

——最後に、このプロジェクトを通じて描かれるビジョンを教えてください。
なにぶん自己資金だけで経営しているベンチャーなのでお金があまりありません。最小限のコストで、最大限のパフォーマンスを出さないといけない状況です。社内で開発した管理システムを使って、エンジニアやデザイナーでも日報を出してもらい、詳細な工数・予算管理をしています。一人ひとりが経営者の視点に立ってコストや時間を意識することが、無駄のない最大限のパフォーマンスにつながるはず。そういった取組みは欠かせませんね。
一方で、自己資金で行うことのメリットは、自分たちのイメージ通りの丁寧な開発が出来ること。特にインフラは便利な暮らしを根底から支えるものですから、少しずつ社会的な信用を得ながら丁寧に市場を拡大していきたいと思っています。

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株式会社タグキャスト
http://tagcast.jp
Beaconに関する特許技術とクラウドを利用した屋内位置情報サービスを展開。2017年までに、50兆円規模になると予測※されているO2O市場にあって、CEATEC JAPAN 2014のソーシャル・イノベーション部門でのグランプリ受賞やアジア最大規模のオープンイノベーションサミット(ILS2015)への位置情報技術提供など、国内外から大きな注目を集めている。近い将来、この『TAGCAST』が、まさに社会を支えるITインフラとなって、生活者の暮らし方を大きく変える日が来るかもしれない。※野村総合研究所の分析による

in-Pocket編集部

i3DESIGN

Techベンチャーのi3DESIGNが本メディアのために結成した編集チーム。広告代理店出身の元ライターはじめデザイナーやエンジニア、リサーチャーなど様々な面子が各自の個性と世界観と諸事情をぶつけ合う。感性全開の文系肌とバリバリの理系志向が織り成す、コンテンツの妙をお楽しみください。

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