2018年1月23日 ビジネス

つい購入したくなるスマート洗濯機のあり方を、UXの観点から考える

スマート洗濯機を買ってみた

10年くらい使っていた我が家の洗濯機が壊れたので買い換えてみました。IoTビジネスに関わる者としてはせっかくのタイミングなので、パナソニックのスマート家電対応の洗濯機を購入してみたのです。

早速アプリをダウンロードして設定をしてみます。洗濯機でWi-Fiの設定をするのは新鮮です。例えば、「WPSを使って接続して下さい」という表示が出てきますが、WPS(Wi-Fi Protected Setup)が何かを知っている一般ユーザーは、普段から詳しくない限り、ほとんどいないのではないでしょうか。私はあえてWPSを選ばないでやってみましたが、一端洗濯機をWi-Fiの基地局にし、そこから設定するというしびれるものでした。
UX的にIoT家電の欠点のひとつは、やはりWi-Fi設定などの通信環境まわりだとあらためて感じる作業でした。
 

アプリからできること

さて無事に接続された後はアプリで何ができるか見てみましょう。

まず、私の購入したパナソニックの新型洗濯機は家の外からでも運転や予約ができる機能がついており、洗剤も自動投入できます。しかしどうでしょう。洗濯の場合は、外にいながらにしてあえて起動させるシーンは、あまり想い浮かびません。例えばエアコンやお風呂は、家に帰った瞬間、部屋がもう暖かい!お風呂が湧いている!というように、事前に予約するニーズがあると思います。しかし、洗濯の場合は家に帰ってからすぐに干したい!というニーズなのでしょうか?私には、あまり必要性は感じませんでした。
 
そしてもう一つ、ステータス通知の機能もありました。洗濯が終わったことを教えてくれる、あれば便利な機能です。2世帯・3世帯同居やシェアハウスのような、順番かつ効率的に洗濯したい場所では重宝する機能だと思います。ただ普通のひとつの家族の家ではよほど巨大な家で無ければニーズはそれほどないかなとも思うのです。また洗剤や柔軟剤の量が少なくなるとお知らせしてくれる機能もありますが、これはAmazonダッシュボタンとぜひ連動して欲しいと思っています。洗剤や柔軟剤が足りなくなったら、そのままAmazonに自動発注できれば便利ではないでしょうか。
 

どうしたらより「スマート」になるのか?

結論としては、「スマート洗濯機」の現在の機能は、特に必要性を感じるものではありませんでした。アプリで指示できる洗濯機だから購入しよう!という人はほとんどいないのではないでしょうか。それでは、洗濯機を売る側はどうしたら良いのでしょうか?
 
やはりIoTビジネスの基本的な考え方ではありますが、どんなデータを活用すれば顧客のUX(体験)として課題が解決し、あるいは便利なのか?というところから考えるべきでしょう。洗濯機の場合のよく感じる課題は以下のものです。

  • この服どうやって洗えばいいのかな?
  • 色落ちする服と他の服を一緒に洗いたくない!
  • この服、よれてきたけど何回洗ったのかな?
  • パパの服と私の服で別々に洗いたいし、設定も変えたい!
  • この汚れ、どうやって落とすのかな?

こうした課題を解決するには、服側のデータも必要です。一番簡単に服側のデータ収集を実現するには洗い方表示の書いてある服のタグを画像認識で読み込むことです。そして、そのタグが付いている服と同時に洗って良い服がわかると便利でしょう。あらかじめ購入段階でも、その情報はわかるはずです。例えば、ZOZOTOWNやユニクロで購入すると、自動的に洗い方データも購入履歴データベースと紐づけてくれると洗濯の時便利かもしれません。
 
さらに次のレベルに行くためには服にICタグがついていることが必要です。そうすればスマホで読み取るだけでなく、洗濯機に投入する時に自動的に適した洗い方を選んでくれるでしょう。例えばパナソニックがモンクレールと組んで「自宅でモンクレールが洗える洗濯機!」として売り出せば、モンクレールユーザーが望んで選択してくれる洗濯機になるはずです。モンクレールのダウンについたICタグを洗濯機側で読み込んで、モードを自動設定できればよいのです。
そして前にいつ洗ったのか。何回洗ったのかのデータも大事です。買い換えタイミングもわかり、メーカーもそのデータはどのように服を使っているかの貴重なデータになるのです。
 

洗濯の根本のニーズは汚れをしっかり落とすこと。どうしたらこの汚れを落とせるのでしょうか?顧客のニーズを叶えるなら、スマホで汚れを画像データで読み込んで画像解析し、洗濯前の下準備の指示も出すべきでしょう。シミ落としが必要であれば、そのままアプリから購入してすぐ届けてくれることがUX的には一番です。さらに素人では無理なレベルであれば、プロにまかせましょうとの表示の上、クリーニング屋さんと連動し、自宅まで預かりに来てくれるサービスになっていれば完璧です。本当に顧客視点のUXでサービスを組み立てれば、家電はこうしたサービスのハブになりえます。顧客の行動利用データを司ることで、最大のビジネス価値が生まれるのです。 
 
ぜひ次の洗濯機の買い換えの頃には、さらにスマートな洗濯機になっていることを期待したいですね。
 
 
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Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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