2019年10月7日

テクノロジー UI/UXデザイン

Design Camp in Denmarkに行ってきました

UI designer

9月中旬に弊社代表の芝と私で、CINRA主催のDesign Camp in Denmarkに参加しましたので、その時のことをご紹介したいと思います。

Design Campの内容は以下のようなものです。
・コペンハーゲンのデザイン会社を3社訪問
・Design Mattersというデザインカンファレンスに参加。

CINRAさんのツアーに興味のある方はサイトを見ていただければ、詳細がよく分かるかと思います。
https://www.herenow.city/lp/dcid_ja/

Design Denmark


デンマークと日本の文化の共通・相違点についてデンマーク在住のAyaさんから説明いただきました。
例えば、
・”ミーティング”の場合
デンマークは「効率を上げるため」日本は「人間関係、儀式」

・ “静けさについての感覚”の場合
デンマークは「発言するチャンス」日本は「振り返る時間、考える時間」

といったような感じでちょっとチクっと痛いところ突かれるところもあり、面白かったです。
例えば、日本のウェブサイトの情報量の多さが取り上げられていました。必ずしも日本のデザインが情報過多ばっかりかといえばそうではないですが、他国からはそういう風に映っているのかも。
シンプルなビジュアルの美しさを好むか、情報性を重要視するかと言った優先度の傾向は確かに国によって違ってくるのだと思います。(とはいえ日本人も本来はシンプルに美しさを見出す性質があるはずですが…)

Design Denmark

Kontrapunkt

軽くランチを食べた後は、日本にもオフィスがあり日本企業のクライアントを多く持つKontrapunktにお邪魔しました。


流石、デザインの会社だけあってオフィスもお洒落です!
オフィスで印象的だったのは日本のデザイン書がたくさん置いてあったこと。やはりデザイン思考の基本はリサーチですから、日本のデザインについても理解を深めているんですね。

Kontrapunktには広いダイニングスペースがあり、お昼はそこでみんなでシェフの作ったランチを食べるそう。自然とチームワークが生まれる仕組みが整っていると感じました。デンマークのデザインオフィスは大企業でなくとも、食堂や大きなキッチンスペースがあるようです。
Ayaさん曰くkontrapunktでランチミーティングの予定があると得した気分になるとか。もちろんシェフの作る料理が美味しいってことですね。

また、ウォールームやミーティングスペースが多く取られているのも印象的でした。比率は個人デスクエリアとミーティングスペースの割合が半々くらいでしょうか。リサーチワークで得たたくさんの情報やたくさんのアイデアを一つのロゴに収束していくわけですから、ウォールームのようなスペースが有効なのだと思います。

KontrapunktからはCEOのBo Linnemann さんとクライアントディレクターのLars Larsonさんからお話を伺いました。
Kontrapunktのブランドクリエイティブは、ロゴだけでなくタイプフェイスまで作ることが基本となっているそう。日本企業の事例をいくつか見せていただきました。

ある案件では、最終的な対顧客プレゼンでは3つのシナリオを提案。3案それぞれのロゴに対して”世界観”を表現するCG動画が用意されていました。
企業側の選択した案はKontrapunktが推した案ではなかったそうですが、3案とも洗練されており(いわゆる”捨て案”がない)顧客のブラント転換でどこまでジャンプするか?という所の距離感のバリエーションがあるようなイメージでした。

SPACE10

二日目はSPACE10にお邪魔しました。
SPACE10はIKEAが出資するデザインラボで、人と地球という単位で食生活や住生活などの未来を研究・デザインしている組織です。ラボ内にはIKEA社員の方はおらず、IKEAの影響を受けない形で研究が行われています。
利益を追求しない純粋なデザイン組織であるからこそ出来ることがあると感じました。アイデアを形作り目に見える状態にすることがデザイナーの責務であるとすれば、未来や新しいものに対してのアプローチとしてこうした環境作りはとても有意義なものだと思います。


左) 左がダイニングスペース。右がオフィススペース。
右) 2階にはキッチンスペースがあり、実験的な料理の研究も行われています。


左) シェフがトルティーヤを焼いてくれました。トルティーヤに挟むのはKonbuchaと言われる酵素ドリンクにつけたピクルス。日本のあの「こんぶ茶」とは別物です。
右) 地下はfabスペースになっており、奥に写っているのはクリエイティブテクノロジストの方。

Designit


3社目はDesignitに訪問しました。
Designitは15のオフィスと500人を超えるメンバーを持つ、グローバルな戦略デザインファームです。

Designitでは、なぜデザインが重要視されているのかの背景の説明から、デザイン思考のフレームワークを活用してスカンジナビア航空の機内食をデザインした事例をご紹介いただいたのち、こちらでも社内の様子を見て回りました。

印象的だったのは”UXデザイン”というワードはほとんど出なかったこと。リサーチプロセスの中の一つのツールとして扱われている印象でした。


それから、既知の課題に対しては「Redesign」、不確実性の高い課題に取り組む場合は「Rethink」と呼び、案件を位置付けていることが非常に分かり易かったです。

モバイルアプリのプロジェクトでは全体のデザインプロセスを12週間(!)で終えるそう。そのプロセスの中にはカスタマーリサーチや、フレームワークを使った体験の可視化、5日間のアイディエーションスプリントとプロトタイピングなどが含まれています。


左) オフィスの様子。窓がオシャレです。
右) ダイニングスペース。


いくつかのスペースに区切られたウォールーム

Design matters

前半2日間はデザイン会社を回り、後半はDesign Mattersへの参加です。
Design Mattersはコペンハーゲンで2015年から始まり5回目の開催となるデザイナーによるデザイナーのためのデザインカンファレンスです。


左) 入り口はこんな感じ。旧くは鉄道の修理が行われていた建物だとか。
右) Webサイトから一貫した装飾。

左) 食事は全てグルテン・ラクトースフリーのものが用意されていました。
右) DJがお出迎え。ブレークタイムには毎回転換DJが。


左) メインステージにはセンターにステージと2つの巨大スクリーン。1000人ほどのオーディエンスが1人のスピーカーの話に耳を傾けます。
右) iAのオリバーさんのプレゼンの最後は拍手喝采

はじめに企画サイドからの本カンファレンスのテーマについての説明がありました。
Design Matters 19’のテーマは3つ。それぞれデザインと社会のあり方について問題提起するようなテーマです。

- Minimal Tech
スマホ中毒と言われるように、スクリーンを眺める時間が生活の多くを占めるようになりました。人間にとって本当に役立つ製品とはどんなものかを考える。

- Activism + Design
人種や性、障害や政治などの課題について前向きな社会の動きにデザイナーがどのように貢献できるか考えるテーマです。最近ではTheyの単数形としての使用がニュースになるように、UIデザイナーにとって身近なところでは性別のオプションや、イラストの人物の性表現など。

- Collaboration
Figmaなどのデザインツールによって実現される新しいチームワークの形。個人が100%支配するデザインではなく、コラボレーション型のデザインがどのようにワークしていくかを考えるテーマ。

その後のスピーカーはそのテーマに呼応する形で、どのようにテーマが実践されているか、最新のデザインの動向を窺いしれるだけでなく、オーディエンスであるデザイナーがどのように取り入れていくかを考えられるような構成になっていたと思います。
どのスピーカーもユーモアを交えながらの軽快なトークと美しいビジュアルのプレゼンテーションで、非常にレベルが高いと感じました。

一部のプレゼンしか聞けなかったですが、印象的だったところを紹介します。

The Deliberate Practice of Boredom - Jeannie Huang
Boredomは何もしない時間を自分自身に与えること。仕事も遊びも、瞑想さえもしないことだそう。
クリエイティブな仕事をする人には「退屈な時間」が特に必要であり、そのための時間を作ろうという呼びかけが印象的でした。

「あなたがしているのはマルチタスクではなくて本当はサブタスク」という言葉があり、人間のキャパシティではマルチタスクそれぞれを100%のパフォーマンスで発揮できているわけではないこと。

一部のアプリではドーパミンを生み出すような仕組みを作りユーザーを熱中させることがビジネスにとって有効な選択ですが、一方でそういった仕組みが行き過ぎると人生にとって大事な時間や機会を奪ってしまうのかもしれません。
デザインの生み出す危険性というものがあると理解して作り手としての責任を持つため、デザイナーが脳の仕組みなどを理解することが重要なのだと思います。

と、このような問いかけがテーマの実例として伝わってきたことが非常に印象的でした。デザイナーによるデザイナーのためのカンファレンスということもあり、ビジネス面と相反する部分もあるのかもしれませんが必ずしもそうではなくデザインがビジネスにどのように影響出来るかを改めて考えさせられました。デザイナーが考える理想を実現することの難しさを同時に感じましたし、あくまでも考え続けることが重要なのだと思います。

ちなみにですが、メインステージの内容がYoutubeで配信されているようですので、興味のある方はこちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0GUFaNltznbVZryyM9KB4IlSMV9AhpS9

以上、Design Campのレポートでした。

Yuma Sasaki

UI designer

西東京にある美大を卒業後、i3DESIGNに入社。meetsource.comやin-Pocketなど、i3DESIGNでwebサービスやアプリUI、自社プロダクトのデザインをしています。

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