前回の記事では、
顧客エンゲージメント指標としてNPS分析についてご紹介しました。
そこで今回は顧客体験向上のカギとなるNPSの活用法について「カスタマージャーニー」の観点から解説していきたいと思います。
顧客満足(CS)は、「商品・サービス」を顧客エンゲージメント(NPS)は「カスタマージャーニー」を提供する
従来のCSが対象とする提供価値の単位は、「商品・サービス」です。
商品・サービスの単位で管理し、不満があれば、それを改善し、不満を減らしていきます。
それに対して、NPSが対象とする提供価値の単位は一連のカスタマーエクスペリエンスである「カスタマー・ジャーニー」となり、個々の製品・サービスはその一部という位置づけになります。
検討する範囲も、カスタマー・ジャーニーとなり個々の製品・サービスだけにフォーカスせず、カスタマージャーニー全体の価値を高めていくことを目指します。
カスタマージャーニーマップとNPS。それぞれの欠点
出典:WEB担フォーラム
顧客体験をデザインするためのフレームワークである「カスタマージャーニーマップ(CJM)」は、購買プロセスの整理やタッチポイントの洗い出しとしては非常に有効ですが、顧客の感情や商品への関心度については、リサーチャーの想定や主観、インタビューに基づく定性情報を用いるため、偏りが生じる場合も多々あります。
デプスインタビューや、ワークショップを実施することで、プロジェクトメンバーへの気付きや意思形成を図れる側面はとても有益ですが、顧客に対する具体的なアクションを講じるためには、この偏りをいかに排除できるかが課題となっていました。
また、顧客ロイヤリティの測定にNPSが有効である点は、前回の記事でも触れました。しかし、NPS調査だけでは現在の顧客ロイヤリティを測定することはできても、ロイヤリティを向上させる施策を検討するには情報がたりません。なぜなら、顧客体験の何を改善すれば顧客ロイヤリティが向上するか?トータルスコアだけでは特定できないからです。
「カスタマージャーニー」×「NPS」で顧客体験を分析する
優れた顧客経験を提供するための具体的な対策が打てない、この最大の原因は、顧客による一連の体験がつかめていない、つまり顧客がどの部分に満足してどの部分に不満を感じているかが定量的にわからない点にあります。
そこでCJMとNPSの組み合わせが有効になります。
NPSをカスタマージャーニーマップのスコアリングに使うことで、顧客体験のうち推奨度にプラスの影響を与えている体験とマイナスの影響を与えている体験を可視化することができます。
そしてその結果から、推奨度に対する影響が大きいにもかかわらず、推奨度にマイナスの影響を与えているタッチポイント体験を把握することが可能となり、「優先的に改善をすべき課題」、「改善することで推奨度に与えるプラスの影響が大きな課題」が明らかになります。
[Case study :らでぃっしゅぼーや]
有機、低農薬野菜などの会員制宅配事業を行う「らでぃっしゅぼーや」。同社は顧客ロイヤリティ向上を目的にカスタマージャーニーマップを活用したNPS調査を実施。結果、顧客と対面する配達クルーの存在が顧客満足度に影響を与えていることを特定し、クルーの職場環境を整え配送品質の向上を狙ったところ、顧客の満足度向上・定期購入へとつなげています。
https://markezine.jp/article/detail/27429
カスタマージャーニーマップは、どの顧客体験をどの順番で改善していけばよいか、優先順位を明確にしていくためのツールです。
カスタマージャーニーをNPSによって量的に把握することで、合理的な判断の拠り所となるものができるため、個別の取組みの位置づけが明確になり、ブレが生じにくくなります。
また予算の策定や、経営陣への起案など、合理的な意思決定をするための材料としても活用できるのではないでしょうか。