昨年イベントでHONDAジェットを所有している人と対談する機会がありました。彼はプライベートジェットがあると成田から北海道各地の空港を移動しながら一日で北海道を堪能して成田に帰ってくるツアーができるという話をしていました。彼はドローンのビジネス開発を推進しているのですが,ドローンが人を乗せて移動する時代にはこうしたプライベートジェットを持たなければできなかったような新しい移動のライフスタイルを実現できる日が来ると宣言していました。
一方で昨年航空会社のANAが「ANAアバター」を発表しました。何故航空会社がアバターなんでしょうか?アバターの技術であるテレプレゼンスは違う場所にいる人間の視覚や動き,触覚などを通信技術で連携することで,ある意味人間を違う場所に移動させたことと同じ効果が得ることを実現する技術です。VRとロボティクス技術の発展は物理的な移動でなくても移動と同じことを実現することを可能にしようとしています。移動を支えるエアラインからするとこうした未来の新しい移動も事業の範囲になってくるのかもしれません。
しかしやはりすべてVRで済ませてしまうよりは物理的な移動の方が経済的には効果が高そうです。かつて江戸時代にも強制的に移動させられる参勤交代という制度がありました。大名達にとっては経済的に厳しい制度でしたが,この効果で日本中の物流が盛んになり,非常に高い経済波及効果をもたらしました。例えばこれから未来で考えれば以前にこのコラムで取り上げた「多拠点生活」も地方創生のひとつの切り札だと考えます。
目次
〇マルチハビテーション(多拠点生活)の時代
https://www.i3design.jp/in-pocket/7737
多拠点に生活するようになれば必然的に移動が増えます。地方の経済効果も期待できます。しかし,まだまだ問題は移動コストです。人を乗せるドローンが安くなるにはまだまだ時間がかかりそうですし,テレプレゼンスやVRの方が圧倒的に低コストな仮想移動を実現することが見えている中,人々を移動しやすくさせる必要があります。
そこで鍵になるのが一年ほど前にここでもとりあげたMaaSです。
〇MaaSがもたらす「移動」という体験価値の大転換
https://www.i3design.jp/in-pocket/7327
MaaSの最大の注目点が移動料金を定額制にするアプローチです。携帯電話と同じようにコストを意識しなくなることでより移動することの抵抗感が大きく薄れるのではないかと注目されています。先ほどのANAは多拠点生活を進める全国の空き家を定額で住めるサービスADDressと組んで定額移動の実験を始めることも発表し,こちらもとても注目を集めています。
そうした中先日JR東日本の広告代理店であるJR東日本企画の駅消費研究センターが仮説を裏付けるような注目の調査結果を発表しました。
〇生活者からみた都市型MaaSの可能性
https://www.jeki.co.jp/info/detail/?id=760
この調査では「交通費の負担感が少なくなることでお出かけ頻度が増える」と答えている人が70%いました。さらに面白いのは買い物行動です。「少し離れも好きな場所,店・施設に行く」という人も69.5%にのぼり,「外出先での支出額も増える」と答えている人が65.2%でした。ショッピングに行くときに一番重視する要素もアクセスよりも品揃えや店舗数を重視するようになるという結果がでており,定額制になることで買い物行動そのものも大きく変わることが調査結果からも予想されます。
まさに携帯電話のデータ通信料が定額制になったことで我々は動画もゲームも気にせずプレイするようになりました。様々な新しいサービスが移動の定額制で発生するのではないでしょうか?
公共交通からライドシェア,バイクシェアなどを取り込み,パーソナルモビリティや自動運転バス,低速自動走行車などがどんどん増え,やがて人間を乗せて空を飛ぶドローンが普及する移動の世界。まずは近所の移動が気軽になり,日本中の移動がさらに便利になり,仕事はテレプレゼンスやVRで離れた人とMTGしながら行う移動の自由という人類の新しいステージを手に入れた生活がまさにこれから訪れようとしていると言えるでしょう。
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