2019年4月26日 ビジネス

経済活性化の鍵である「ハレとケ」

ファッション業界の人達からは服が売れないという話を最近よく聞きます。ユニクロやZARAなどのファストファッションの台頭で低価格志向が定着したことと、メルカリなどの二次流通が拡大したため、従来のファッション性の高い高額な新品の服が売れなくなってきているという説はよく聞きますし、確かにその影響も大きいと思います。
 
 
しかし、もう一つの大きな要素として「わざわざ服を買ってまでお洒落をして出かけていく場と機会の減少」ということも大きいのではと思います。夏のクールビズの浸透もあり、オフィスの服装カジュアル化もここ数年で急速に進みました。会社に行く時もカジュアルで、真面目に仕事中心で会社と家を往復している人達は、特に服にお金をかけなくて良くなりました。

さらにたまの女子会も気を遣わなくてよい仲間同士だとお洒落をする必要がありません。恋愛に関する興味も若者から急速に失われていると言います。かつては合コンやデートのために服を買うという需要もありましたが、いまや友達の結婚式の時ぐらいしかお洒落をする機会が無くなってきているのかもしれません。
 
 
実はこの問題は、アパレル業界だけの話ではありません。我々の生活から「非日常」が失われつつあるのではないでしょうか?

例えば、前述した通り『恋愛』というものは典型的な非日常でありますが、恋愛そのものが減少している上に、背伸びしない気楽なつき合いを求める傾向が増えているようです。かつては、レストランも車も旅行も映画もカップルを重要なターゲットにしてきました。しかし、非日常消費のトリガーである恋愛が減ることはちょっとした見栄も贅沢気分も喪失し、市場の縮小に繋がるのです。さらに高齢化社会になると一部の高齢者恋愛市場を除くと、全般的には恋愛など変化を望まない保守的な生活になるので、ますますその傾向に拍車をかけます。社会から非日常がどんどん消えていき、穏やかな日常だけを望むようになります。そのため保育園の子供達の声ですら日常を妨げる悪に成っていきます。
 

 
かつてはお祭りに代表される地域コミュニティの大事な『ハレ』がいくつも存在していました。収穫祭などは大変だった『ケ』としての農作業の成功を祝うため、日常では考えられないような危険に挑戦したり、浴びるように酒を飲んだりする伝統が今でも見られます。それでも当然テンションが普段と異なるぐらい高まるため、恋愛のきっかけも多数生まれます。

このように『ハレ』と『ケ』のバランスを取ることはストレス発散や出会いのきっかけなど社会の知恵でもあったのです。まだまだ非日常は求められています。音楽でもフェスのようなイベントにはたくさんの人が非日常を求めて集まります。ここ数年のハロウィンの異常な盛り上がり方もやはり若者が非日常を求めていることの現れでしょう。消費行動を考えれば非日常感は消費行動にも非日常感が表れるため、金銭感覚にも大きな変化が期待でき、消費を増やす方向に行くことは間違いありません。企業達からしても非日常感を体感できるようなスポットやイベントへの投資を積極的に行うことがとても大事になタイミングだと思います。
 
 
このままほっておけば少子高齢化で成熟していく日本社会は穏やかな日常こそが素晴らしいという「穏やか日常主義」の価値観に支配されてしまうかもしれません。我々の生活そのものを『ハレ』と『ケ』のバランスのとれた非日常感を楽しむことが人生を楽しむことだという価値観に戻していくことがとても重要な時期に来ていると思います。

インバウンド観光客の増加も良いきっかけです。旅行者は基本的に非日常感を求めています。祭りを含めた素晴らしい日本文化を体感してもらうためにも、非日常イベントをもっと増やして行くことが必要です。もちろん警備や事故や犯罪などついついリスクに感じてしまう真面目な「穏やかな日常主義」者達はしかめた顔をするででしょう。しかし、それらのリスクを越えた『ハレ』の世界を奨励していきましょう。リスクはテクノロジーにより、防いで行きましょう。『ハレとケ』が常にバランスされた世界。それこそが経済活性化にも必ず繋がるはずと考えます。
 
 

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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