2019年2月15日 ビジネス

自動配送を実現するために -街全体のデジタル化のための都市OS-

アマゾンがいよいよ歩道を走る配達ロボット「Scout」の試験運用を始めると発表しました。

『Meet Scout』
https://blog.aboutamazon.com/transportation/meet-scout

 
出典:The Amazon blog dayone
 
 
ラストワンマイルの配達という意味では2013年に発表した「PrimeAir」と呼ばれる空中を飛ぶドローンによる自動配達構想がロボット配送の先駆けとして話題になりました。あれから5年、ドローン利用も日常的になりましたが、いまだにドローンによる自動配送は実用化されていません。空中はスピードが速いですが、重たいものを運びにくい、安全面での規制が多いなどやはり色々なリスクもあります。

一方で、地上での自動運転技術はここ数年で劇的な進化を遂げました。すでにエストニアやサンフランシスコではベンチャーによる実用サービスが始まっています。日本でも宅配需要が増える一方で人材不足も重なり、コストアップが続く中、自宅までのラストワンマイルを自動配送する仕組みへの期待は大きいです。

しかし、路上にも様々な障害物があったり、人と接触するリスクなどは当然あります。自動運転車は自らたくさんのセンサーを内蔵して、周辺の環境をAIが判断しながら運転していく仕組みですが、こうしたサービスを実現していくためには街側からも色々な情報を教えてくれる様々なインフラがあることが鍵になります。街の状況を電柱についた監視カメラ、走る自動車のカメラ、個人の自宅のセンサーから学校のセンサーなど様々な主体のセンサーによって把握し、そこから取得したデータを蓄積し、APIからデータをオープンに取得することが可能になれば様々なベンチャーが街中を移動するロボットを活用した様々なサービスを開発することが容易になります。
 
 

出典:Amazon Prime Air
 
 
 
この考え方を「都市OS」と呼びます。これまでは防災システムや交通システム、GPSを活用したナビゲーションなどすべてが別々の垂直統合のシステムでした。まるで過去の汎用機を使った業務アプリケーションのようです。しかしパソコンでWindowsシステムが登場して、様々なアプリケーションが一気に普及したようにレイヤー化できるOSが登場すると都市にたくさんのセンサーを埋め込み、様々なデータを収集、蓄積、共有化することでたくさんのアプリケーションやサービスを低コストで生み出すことが可能になります。これまで行政が多額の税金を使ってきたようなことを民間が低コストで実現することが可能になるかもしれません。実際、海外ではゴミ箱に全部センサーを内蔵させたことで、ゴミ収集車の回収効率があがり、15%もコストを削減するという事例も生まれています。
 
 

都市OSのレイヤー構造


 
 
都市OSが様々な社会リソースの状況を管理できるようになると、空いている空間や施設、乗り物などの管理も容易になり、シェアリングエコノミーのサービスもたくさん生まれるようになるかもしれません。また、市民のIDは民間サービスの会員情報、情報銀行などのID連携することでプライバシーを保護した形での運用も可能になるかもしれません。わかりやすく言えば「今、公園のある場所に居る自分が20歳以上であることを確認した上で、ビールを自動配送ロボットにいますぐ配達させる」ということも簡単に実現できるようになるのです。

映画スターウォーズではデススターの中などで小さなロボットがたくさん動きまわっていました。まさにあのような街中を小さなロボットが走り回る世界はもう少しで実現するのかもしれません。
 
 

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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