2018年3月28日 UXデザイン

「エンプロイー」ジャーニーをゲームのコントローラーから考える

先日、アメリカの原子力潜水艦コロラドの操縦かんにゲーム機であるXboxのコントローラーが導入される、という記事が配信され話題になりました。
 
原子力潜水艦と言えば私のイメージは映画クリムゾンタイドK19のような、密室の中で緊迫の使命をおびているような、兵器の中でも秘密事項が多いシリアス度が高いもの。そんな原子力潜水艦の操縦をゲームコントローラーでやっていていいのか、というギャップは大きいです。
 
しかし、すでに米軍は多数の無人攻撃機を導入しており、この操縦は戦場から遠く離れた米国内の安全な基地からゲームコントローラーのようなもので操縦され、戦争がまるでゲームのようだと言われて久しいです。今回の導入理由も若い兵士はゲームコントローラーの方が早く操縦に慣れる、そしてコストメリットがあるというところが理由のようです。
 

これまで「軍事用」と「民生用」の間には大きな隔たりがありました。民生用をはるかに凌ぐ耐久性と最高峰のプロ仕様という「軍事用」の言葉の響きも我々世代には独特のものがあります。今でも宇宙飛行士や戦闘機パイロットが使ったとして大々的に宣伝されている時計などもありますね。
 
確かにアナログ技術の時代にはそういう要素も多かったでしょう。しかしデジタル技術全盛になると、アナログ時代に職人の技であったような複雑で繊細な技術のようなものが無くなり、基本はパーツの耐久性だけの問題になります。そして世界中の人に使われているゲームやスマホの耐久性の高さは使っている我々自身がよく理解している(iPhoneのガラスだけはいい加減どうにかして欲しいですが…)。しかも軍事用と比較すると圧倒的に低コスト。さらに壊れたらすぐ取り替えればいいのです。
 
こうした話は軍事の世界に限ったわけではありません。これまでB2Bの世界の専用端末などでも同様のことは起きています。汎用機の時代はコンピュータを個人が使うことはなありませんでした。パソコンとインターネットの普及で、ブラウザの上で動いてくれることが一番便利になり、今ではたくさんの業務ソフトはブラウザ上で動いています。業務システムもWebテクノロジーで組み立てることが一番効率的で低コストになりました。
 
UI/UXについても、かつては調査と研究に莫大なお金をつぎ込める軍事やビジネス用途の方が進んでいたのでしょう。しかし今では、世界中で1000人しか使わないシステムよりも今や全世界何億人が毎日使っているシステムの方が膨大な利用状況のビッグデータを解析した上で改良できますし、コストも膨大にかけることが可能です。
 

セキュリティの問題だけは今でも気になるところではありますが、その部分を除けば今から専用システムを開発するにしても専用スマホ端末やOS・アプリを作るよりはiPhone上でアプリを作った方がはるかに使いやすいシステムを作ることができるでしょう。さらにいえばかつては専用システムなのだから、担当者はそのマニュアルを読み込んで使えるようになることが仕事という部分もありました。
 
しかし、本当に生産性を高めるためには担当する従業員の教育コストだけでなく、使いやすく、ミスを減らす、さらにはモチベーションを持って使いたくなるシステムで無ければいけません。B2B分野のUI/UXはまだまだ後回しで古い生産性のとても低いシステムを使っているケース(例えばいまだに古いバージョンのインターネットエクスプローラーのActiveXで動くシステムなど)は驚くほど多いのです。現在世の中では「働き方改革」と騒がれていますが、それこそ業務効率が悪い理由のひとつが業務システムのUI/UXのひどさに起因することも多数存在するでしょう。「カスタマージャーニー」を作ることも大事ですが、「エンプロイージャーニーマップ」もとても重要であり、今のテクノロジーで考えると劇的なコスト削減につながる金脈が見えてくるのかも知れません。
 

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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