2017年12月26日 テクノロジー

P2Pが生み出す新しい社会アーキテクチャとして考える「仮想通貨」

仮想通貨の市場が熱くなっている。代表的な仮想通貨ビットコインの急騰に続き、多くの仮想通貨が値段を上げる中、TVでも仮想通貨取引所のCMが次々と放映され、FXなどを運用していた個人の一般投資家が乗り遅れるなとばかりに大量に流入している。すでに一部ではバブルではないかという懸念の声も多く上がるなか、価格は乱高下を繰り返している。さらにはシカゴでは2017年12月18日からビットコインの先物の取引が始まった。オプション取引やヘッジファンドにもどんどん組み込まれ始めている。
 
こうした流れは仮想通貨の金融商品化と言えるだろう。ようやく仮想通貨も市民権を得たと評価する人達も多い。その一方で忘れてはならないのが、仮想通貨はインターネットという自律分散ネットワークの登場からまもなく、暗号技術が電子通貨を実現できるということが理解され、さらにP2Pの技術とともに新しい価値交換のアーキテクチャとして議論されてきたことだ。P2Pネットワークは、Napstar(ナップスター)などの登場で音楽や映像などのコンテンツ配信を自律分散型で行うという自由な流通と、同時に著作権制度のあり方の議論につながった。結果的には、既存の著作権ビジネスを本質的に破壊することへの抵抗から、現在においても中央管理による課金配信モデルが主流になっている状況だ。
 
音楽ビジネスにおいてはコンテンツそのものの流通の価値の低下が確実に進んでおり、一方でライブなどへの価値シフトが進んでいる。AppleがiTunesでの音楽販売から撤退するのでは、という報道も一部でなされている。
 
かつての音楽におけるP2Pの夢は、アーティストと聴取者が直接繋がり、価値交換することでもあった。そうした次世代の新しいアーキテクチャ構築のためにも、仮想通貨という考え方をもっと議論するタイミングに来ているのではないだろうか。ITは時に既存のパラダイムの高度化にも貢献するからだ。
 
証券取引においては現在高速取引が主流になってきているが、取引形態は既存のままで、ただスピードだけITで速くしている状況だ。仮想通貨は、既存の金融商品のように値上がりを期待するだけで生み出されたテクノロジーではない。
 
「価値交換」という金融機能の本質に立ち返ったときに、ブロックチェーンに書き込まれていくべきは取引の持つ意味である。例えば、ICO(Initial Public Offering)においても投資家一人一人の想いまでが記述されていくべきなのかもしれない。音楽アーティストが自分の音楽の価値をICOで公募した時、それに応ずる人は既存の貨幣の代わりで調達するのではなく、音楽へのリスペクトだとして価値を与えてもよいだろう。音楽配信のP2Pプラットフォームとブロックチェーンが組み合わされば音楽を生み出すための価値交換の仕組みとしてサービスを構築できる。そのような試みを今後は期待したい。ミュージシャンとしての本質的な評価が流通し、「資本主義の中では売れる曲を作らないと生活できない」という工業化社会の呪縛から解き放たれることになる。高く評価してくれる少数のパトロンの価値によって生活が可能になる、オープンで透明でグローバルな中世モデルを可能となるのかもしれない。

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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