2017年11月24日 ビジネス,海外IT事情

監視社会と信用創造コミュニティ

いよいよ日本でもGoogleHomeやAmazonEchoが発売され,AIスピーカーが盛り上がりを見せている。

筆者も早速GoogleHomeを入手して色々試している。アクティビティデータをチェックすると予想通り,変換されたテキストデータだけでなく,音声データも保存されていた。なるほど、そうすると、クラウドにも利用者の発音データを保存しているようだ。最近、これらAIのスピーカーに、常に音声データを聞かれていることを不気味がる人達も現れている。自宅の中の会話は全て聞かれているかもしれないからだ。
さらにAmazonが先日発表したあるサービスも波紋を広げている。スマートロックを取り付けることでAmazonの配送業者が自宅の中に入り,荷物を届けてくれるサービスである。日本でも問題になっている再配達についての課題は解決するが、そもそも自宅の中に入られることに抵抗があるという意見が、インターネット上で多数出ている。Amazonはカメラを取り付けることで信頼を担保しようとしている。さらにこの鍵を使うことで今後は自宅のクリーニングサービスやペットの散歩サービスなど留守中にでも様々なサービスを提供できるプラットフォームに広げる可能性が言われている。利便性の広がりの中での不安とのトレードオフとなる領域はますます広がろうとしている。

AmazonやGoogleのようなメガプラットフォーマーたちが、スマホ上での利用情報に限らず、自宅の中やリアルの生活領域のあらゆる情報を握る日も遠くは無いだろう。
リスクも増える一方でプラットフォーマー達もこうした行動情報から新しい安心の仕組みを作り出していく可能性も出てきている。

スマホ決済の例を上げよう。中国ではスマホ決済の普及で現金が急速に利用されなくなっている。もはやお店も顧客も現金を持っていない。今後、実店舗に押し入る現金目当ての強盗は、中国では絶滅するかもしれない。国による情報管理が進んでいることも要因のひとつだが、不正等が起きづらいデジタルへの安心感によって、国民も急速にスマホ決済を選択しているのは興味深い。
発展しているスマホ決済のプラットフォーマーは、利用状況も全て信用情報として活用している。不正をした利用者については、信用を低下させる仕組みが構築されている。信頼が低下した人は自転車が借りられない、無人コンビニに入店できないなど日常生活で不便が生じることになる。ネット上で何かを販売する人の信用情報も重視されるようになるだろう。

このようなシステムが流通したとしても、一度でも支払いが滞ったことのある人がその信用を挽回するための仕組みも用意されるべきだろう。システム側がちょっとした冤罪を作り出せば、信用を低下させ生活をめちゃくちゃにできるのは、非常に恐ろしい。
このようなリスクを回避するために、コミュニティ単位で信用を担保する仕組みなども重要な鍵となるだろう。例えばSNSでの友人達からの信用などによる信用レベルを個人の信用に重ねていくような仕組みや、江戸時代に地域の信用を担保していた大家さんに相当するような人の信用を借りる、などがあるとよい。そこで、信用が少し下がってしまった人でも信用回復期間中にサービスを利用できるようにすると安心なのではないだろうか。
国やプラットフォーマー対個人という関係だけでは個人の立場があまりに弱く怖い。コミュニティを介在させるような信用構築が、急速に進むデジタル監視社会でのセーフティネットとして必要になるのではないだろうか。

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

この記事をシェアする