2017年8月18日

UI/UXデザイン

フェイクニュースに試される現代社会

D4DR 代表取締役社長

フェイクニュースの蔓延が課題になっている。ソーシャルメディアなどに流れてくる膨大な記事のどれが真実なのかを検証することが不可能になりつつある今、どの情報を信じるべきか、我々の判断能力が問われている。
 
一口にフェイクニュースと言っても様々なものがある。私も大好きな『虚構新聞』のようなパロディは、嘘だとわかった上で楽しむ極上のブラックジョークだ。それでもたまに虚構新聞の記事を本気に受け取り、「大変だ!」と言いながらシェアする方々もいる。インターネット上での情報に対する、判断の難しさを感じる。
 
そして今大きく問題になっているのは、フェイクニュースで稼ぐ人々だ。例えば、米国で大統領選挙の時など、トランプ支持者向けに嘘のニュースが作成され、そこで人々が注目や反応をしてしまい、その「フェイクニュース」へのPV数が上がった。そのPV数から、広告費を稼げる人達がたくさん出現したのである。現在も、さまざまなPV数稼ぎが目的のフェイクニュースサイトが立ち上がっている。
 
支持者がフェイクニュースの餌食になってしまったトランプが、その後同じ「フェイクニュース!」という言葉で非難したことがある。その対象は、フェイクニュースサイトではなく、反政権的な立場で報道する大手メディアを指して言ったものだった。
 
嘘のニュースで稼ぐ人達がいる一方、果たして大手メディアの信用はどうか。もし大手メディアが偏向報道となれば、私たちは何を信じるべきか、ということになる。メディアも人間が運営しているわけで、様々な立場で主義主張をすることは、もちろん悪いことではない。しかし以前よりも、ネットなどで瞬間的に反応されるようになってきたことがメディアを変化させてはいないか。より反応が出やすい、いわゆる「バズりやすい」安易な記事やタイトルをつける方向に、大手メディアもシフトしてきているのではないだろうか。
 
今後問題になりそうなのが、人工知能(AI)による情報発信だ。すでに日経新聞などでも、簡単な記事は人工知能が書き始めている。このようにAIが肯定的な扱われ方をしている一方で、例えば、先日話題になったNHKスペシャルのAI番組では、相関分析の結果をAIが示したということが放送されたが、その相関は本当に因果関係があるのか明確でないまま放送したのではと、一部で物議をかもした。
 
情報というのは同じ情報でも取り上げ方ひとつで意味が変わる。私のようなコンサルティング会社の人間も、考察を書く際は、お客様が気に入るように表現を変えることがある。だからこそ、事実と考察を分けなければいけない。38%の人が買いたいという事実の商品があるとしよう。これに対して、「38%も買いたい人がいる!」と書くこと、そして「38%しか買いたい人がいない」と書くことは、それぞれまるで違う考察となる。当然、読者の受け止め方も大きく異なることになる。
 
個々人への、情報についてのリテラシーの教育はますます重要となっていくだろう。人間は、自分が望む「心地よい情報」を求めがちだ。例えば、太平洋戦争前夜には戦争しなければいけない理由の情報が求められ広がっていった結果、開戦に繋がっていった側面もあるのではないだろうか。だとしたら、今回とりあげたフェイクニュースの問題もとても重要な問題をはらんでいる。心地よい情報や、注目してしまう情報は、もしかするとフェイクなのかもしれないと疑うことが重要なのではないだろうか。われわれ一人一人の情報収集に対する、判断能力の向上が求められている。感情に左右されずに物事を判断することは、とても大事なスキルであると認識しよう。今日もどこかでフェイクニュースを書いた人々が、騙されるわれわれを嘲笑しているかもしれないのだから。
 
 

Kentaro Fujimoto

D4DR 代表取締役社長

1991年電気通信大学を卒業。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。 2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。広くITによるイノベーション,事業戦略再構築,マーケティング戦略などの分野で調査研究,コンサルティングを展開しており,様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画し,イノベーションの実践を推進している。現在、日経MJでコラム「奔流eビジネス」,日経BIzgateで「CMO戦略企画室」を連載中。

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