2016年2月25日

ビジネスストラテジー

僅か1年で3億を10倍に?  ”Made by Japan”で世界に挑む、テラモーターズ流組織戦術とは

in-Pocket編集部が新サービス開発に取り組む様々な企業にお邪魔し、プロダクト誕生の裏側と成功のヒントに迫るこの企画。
今回はアジアを主戦場に電動バイク・電動三輪の開発・販売を展開するテラモーターズへ。同社売上は前年売上3億円から一気に30億円へ到達する勢いとのこと。前年対比1000%超えにせまる驚愕の躍進、その秘密はどこにあるのか?

■in-Pocketの「視点」
ジャパンクオリティを象徴する同社製品そのものにどうしても目が行きがちになる。しかし、取材に応じて頂いたのは、20代にして事業開発と広報を任されているという河越氏、正木氏のお二人。若くして責任あるポジションを担う両名を前に、in-Pocket編集部はあえて製品の魅力ではなく、「人材」そして「マネジメント」にクローズアップ。その躍進の立役者となる組織はどのように構成され、機能しているのか?同社の強さの秘密を人材面から追った。

 

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テラモーターズ株式会社

事業開発担当
河越 賛さん

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広報担当
正木 遥子さん

 

設立当初から、「世界が主戦場」
現地法人として成功するために不可欠な要素とは

――設立当初より海外、とりわけアジアに焦点を定めた展開を前提として展開されてきたと伺いました。まずは海外展開の現状について教えて頂けますか?
河越:従業員の9割以上が日本国籍以外のメンバーで構成されていて、フィリピン、ベトナム、カンボジア、インド、バングラデシュの5カ国がメインの事業国。国内外の事業割合でいうと実に95%が海外での展開になります。
その中でも最大規模の販売台数を誇るのがバングラデシュで、電動三輪のシェアは50万台以上となっています。現地の競合他社と価格帯をあわせているため、日本円にして20万円程度の販売価格に対して、台あたりの利益は2,000円程度。熾烈な競争が続くなか、現地でのシェアを懸命に取りに行っているところです。

――現地スタッフとのコミュニケーションはどのように行っていますか?
河越:現地では主に英語でコミュニケーションをとっています。設計を日本で行い、現地で製造を行うという、“Made by Japan”仕様でプロジェクトを進めている性質上、現場マネジメントは日本人スタッフが行っています。日本人1に対して現地人9という状況のなか、実感としては言語の壁よりも「感覚の違い」の方が大きく影響していると思います。

例えば日本の感覚では不良率1%というと相当な割合ですが、海外では「問題ない水準だ」との感覚が強いため、このような品質面に直結する感覚のズレは日本感覚に寄せていく必要がありますね。この部分のケアは特に力をいれています。

――具体的にはどんなケアをされているんでしょう?
河越:代表の徳重自ら実際に現地へ赴き、顧客に直接ヒアリングを行っています。顧客においてキーマンは誰であるかを明確にする目的もあるのですが、その顧客が求める品質基準を的確に把握し、相手とそれを握るためのヒアリングでもあります。基本スタンスは”Made by Japan”であるものの、必ずしも日本の高い品質基準がすべての顧客ニーズを満たすわけではありませんから。

また、これとあわせて「意思決定の現地化」も推し進めています。時差もあるため、全ての物事を日本で判断しようとすると、どうしてもスピード感が出ず、まとまる話もまとまらなかったりします。その一方で、現地に任せっぱなしになってしまっては、クオリティコントロールもままならない状態に陥りかねないのですが、当社の場合、徳重がヒアリングのため頻繁に現地へ足を運んでいることもあり、現地で意思決定する場面も必然的に増えています。

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現地でコミュニケーションを重ねる徳重氏

――まさにスピード&クオリティ両軸を保つやり方ですね。
河越:そうですね。他にも例えば時間にルーズな面など、国柄・風土によるものは、逆に日本人が現地の感覚に寄せていくようにしています。現地の感覚に寄せることによって生産性が下がったかというと、実はそんなことはなく、むしろ日本人スタッフの働く姿・背中を見て、自然と日本ナイズされた働き方をしてくれるようになっています。

時間にルーズでゆるやかな働き方が特徴のバングラデシュ人スタッフが、半年も経たないうちに移動時間の最中でも時間を惜しみPCで黙々と作業する姿を見た時は本当に衝撃的でしたね。どこまで現地の感覚に歩み寄るか?という点において難しいバランス感覚が要求されますが、大事なのは、何でもかんでも日本のスタイルに矯正しすぎないこと。拒絶感なく自然と日本のワークスタイルを受け入れてもらえるように接するのがポイントかもしれません。


現在の従業員数はおよそ300名。うち約9割を現地スタッフが占めることを考えると、1カ国あたり数名程度の日本人スタッフがマネジメントしている計算だ。しかもその中には20代の若手、さらにはインターンの学生も含まれるとのこと。少数精鋭であるが故に当然、若手やインターンにも相応の責任が発生することは想像に難くない。
同社によれば、この体制を機能させるための人材採用および活用には特に注力しているという。例えば技術面では、HONDA、SUZUKI、Panasonic、財務・会計では、ボストン・コンサルティンググループ、アクセンチュアなど、各方面の名だたる企業出身の人材が創業期より集結している。ボードメンバーの選定をはじめ、採用には並々ならぬ想いが込められているに違いない。そこで次は、テラモーターズ流採用戦略にもフォーカスをあててみた。


 

――そうそうたる顔ぶれが創業期から揃っていますが、採用方針も特徴がありそうですね。
正木:私たち二人とも新卒採用組なのですが、テラモーターズは面談やテストだけでの新卒採用は行っていないんです。期間は人によって異なりますが、3か月~半年という期間で、まずインターンとして勤務した上で、採用面談を行うという流れをとっています。インターンであっても本人が希望すれば海外勤務を経験することができるのも特徴的ですね。

――優秀な人材を集めるための人材獲得策についても伺ってよいでしょうか?
河越:当社の場合、“優秀な人材が認める人材は弊社にとっても優秀である可能性が高い”との考えのもと、紹介による採用に注力しています。優秀な人材を連れて来てもらうんです。もちろん会社としても優秀な人材との機会損失が発生しないよう、積極的にお会いさせて頂くようにしています。新卒採用にも力を入れているのですが、先ほどあった3か月~半年といった期間を設けてのインターン採用は当社ならではですね。経験者の即戦力とは違って、新卒採用においては、数回の面談ではわからないポテンシャルを実際の現場で見極めたいという思いからそのようにしています。

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――若手が活躍する一方、何十年も現場経験をお持ちのシニア層・プロフェッショナル層もいらっしゃいます。その背景にはどんなものがあったんでしょう?
河越:製造業の立場としてまさに肌で感じる部分ですが、専門的な技術を持ったシニア層が「技術を生かしたい」という欲求を満たすことができる機会・場面が少なすぎるように思えます。それではあまりに勿体無いですよね。これまで日本のモノづくりを牽引してきた高い技術力、その象徴であるこの層の人材を適材適所に据える。
当社のケースであれば製造技術の要となる部分で活躍してもらうことが不可欠と考えています。「技術的欲求」が満たされる場を提供する一方で、マネジメントの部分を担うプロフェッショナルとして任せることも少なくなく、技術面だけでなく管理面での体制強化にも奏功しています。

 

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 製品発表会でのひとこま。中央女性がカンボジア・ベトナムエリアを担当

 

肝心なのは、目標達成を考え抜ける組織としての「体質」

――これだけ少数精鋭の組織で、3億から30億まで売上を伸ばすためには各自の責任は相当大きいですよね。組織運営上の工夫・ポイントを教えて頂けますか?
当社の前期の売上はおよそ3億円だったのですが、その数字に縛られることなく、あえて一桁違う目標を掲げました。これが当社ならではのやり方ですね。肝心なのは、「じゃあこの数字をどう実現するか?」それを徹底的に突き詰めて考えられる組織体質の構築です。そこに会社としても社員としても全力を注ぐ。それが、この業績に直結しています。

とはいえ、当然のことながら闇雲にトップダウンで「10倍だ!」と目標を掲げても実現しません。当社では、まず現場サイドが徹底的に目標実現のための具体的施策や組織体制の仕組み化を練ります。そのプロセスを踏んだ上で、徳重が仕組み構築のブラッシュアップをし、しっかりと現場発の仕組みづくりをサポートする。この流れをスムーズに作り出すためにも、現場と経営層の近い距離感が大切になってきます。

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カンボジアで今年2月に販売開始された新製品『Y6』

――ベテランと若手、現場と経営層と、距離が短いからこそシナジー効果にも期待出来そうですね。代表をはじめとする先輩の背中を見て学んだり、刺激を受けたりする場面も少なくないのでは?
正木:そうですね、毎週土曜日に定例会議があるのですが、徳重自ら結果にこだわって動いているので、1週間という期間の中でビックリするくらい話の内容が変わります。判断スピードが速いというのもありますが、徳重は寝る時間以外は常に仕事のことを考えているような人。風通しの良い会社なので、私たちのような若手であっても一緒にランチに行くことも多々あるのですが、大体、業務報告と共有の場になっちゃいますけど(笑)

河越:“2倍の仕事量を半分の時間でこなすことができれば、4倍速で仕事をこなすことができる”この発想から、よく『4倍速』という言葉が社内で使われます。だからスピード感がとにかく速い。しかも、みんな「結果にこだわる主義」。常に結果を出し続けることが求められるから状況に停滞がなく、前週の定例会議から状況が劇変するんでしょうね。とにかく互いに刺激しあえる環境だと思います。

――ありがとうございます。では最後に、御社が掲げる今後の野望をお聞かせください!
正木:非上場ながら、企業価値が10億ドルを突破する有望ベンチャー企業のことを欧米では「ユニコーン」と呼んでいます。
米国や中国、インド、ヨーロッパ各国の企業が上位に名を連ねる一方、日本のベンチャー企業はほとんど食い込めていないのが現状です。だからこそ、まずはテラモーターズが「ユニコーン」企業として世界の上位に食い込む!それが今の目標です。常に企業成長し続け、世界の名だたる企業たちと肩を並べる。その土壌・体質・組織と、条件は十分に備わっているので、後は達成するだけですね。

 


テラモーターズ株式会社
http://www.terra-motors.com/jp/

日本が世界に誇る製造分野で、設立当初からグローバル市場へ挑み続けている。Electric Vehicleという新たな市場を創出し、リーディングカンパニーとして展開。日本発のベンチャー企業が世界でも通用することを証明すべく、右肩上がりの躍進を遂げ続けている。EVでイノベーションを興こす一方、クリーンで持続可能な社会を創造にも寄与。アジア圏でのシェアの拡大には目を見張るものがある。
近日予定されている記者会見では、EV事業の次なる成長戦略として新規事業の発表を控えているとのこと。果敢に攻め続け、常に世の中へインパクトを与えるテラモーターズ。その一挙一動に世界が注目している。

in-Pocket編集部

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